活動報告

支部報告 105

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■九州支部 技術セミナー・レポート 平成16年8月9日
環境セミナー「環境騒音の予測と保全」

「環境騒音問題」
「道路交通騒音予測法 ASJ RTN-Model 2003の概要」
「沿道騒音の面的評価」
 講師:九州大学工学部建築学科 教授 藤本一壽
「環境騒音の評価−環境アセスメントと大店法−」
 講師:大分大学工学部福祉環境工学科 教授 大鶴 徹

 環境影響評価法が施行されて早や5年余り、昨今では環境といえば、さも自然環境がすべてであるかのごとくもてはやされ、大気質、水質、騒音・振動といった環境の最もベーシックな生活環境項目にスポットを当てた学習の機会が非常に少なくなっている。しかし、クライアントから要求される物件で最も多いのは騒音などのベーシックに関するものであることから、今回は「環境騒音の予測と保全」をテーマに、標記の4つの演目に区切ってセミナーが開催された。
 セミナーの主旨は、約5年のスパンで変更されている等価騒音レベル計算式のうち、2003年4月より施行されたASJ2003モデルの紹介である。これをもとに、従来の計算式であるASJ1998モデルでは、あまり考慮されてこなかった高架の構造や遮音壁の形状にまで着目したパラメーターを計算式上に反映するといった試みが紹介された。
 今回のセミナーは、実業務の即戦力になるといった意味でも、従来の自然系、生物系とはひと味もふた味も違った内容で、会場の聴講者も最後まで熱心に聞き入っていた。今後の展開に期待を持てるセミナーであった。
(レポーター:環境テクノス(株) 小野原一)


■九州支部/佐賀県相知町共催 シンポジウム&野外セミナー・レポート 平成16年10月7日/10月8日
シンポジウム「更に積極的な自然再生事業の推進を目指して」

■基調講演とパネリスト
「アザメの瀬事業とは」

 講師:九州大学 教授 島谷幸宏
「アザメの瀬事業について行政側の取り組み」
 講師:国土交通省九州地方整備局武雄河川事務所 建設専門官 泊 耕一
「アザメの瀬事業と地元との関わり」
 相知町長 大草秀幸
「自然再生事業による生物相復元効果の指標開発」
 講師:和歌山大学助 教授 中島敦司

 過去に損なわれた生態系やそのほかの自然環境を取り戻すための法律「自然再生推進法」が、平成15年1月1日から施行された。この法律は、新生物多様性国家戦略の施策の一つである「自然再生」を受けたもので、生物多様性の保全にとって重要な役割を担うものとして期待されている。
 今回開催された佐賀県相知町との共催シンポジウムは、全国レベルでの先駆的な取り組みである「松浦川・アザメの瀬自然再生事業」を紹介しながら、この新しい法律が、今後の環境ビジネスに、どのような可能性をもたらすかを明らかにしようとするものである。
 松浦川中流部のアザメの瀬地区は、年に1回は洪水被害を受けており、治水対策が検討されてきたが、地元との協議の結果、氾濫を許容し下流域の洪水流量の低減も図れる方策で自然再生事業を実施することになった。水田として利用されていた土地を掘り下げて湿地の機能再生を図る計画である。この事業はただ自然を再生するのではなく、自然と共生した暮らしを考えており、徹底した地域住民との対話に基づく計画立案・実施をすることになっている。また、学識者をアドバイザーとして、河川工学、魚類、保全生態学などの分野の最新知識を取り入れる仕組みになっているのが特徴である。
 シンポジウムは、当事業を立ち上げられた九州大学の島谷教授、武雄河川事務所の泊専門官、相知町の大草町長、和歌山大学の中島助教授の講演に続き、後半は講演者のほかに東京大学農学生命科学研究科の渡辺敦子氏もパネリストに加わり、NPO団体の代表や武雄河川事務所の若手技師の本音トークによるディスカッションが行われた。
(レポーター:環境テクノス(株) 小野原一)


■関西支部 第2回技術セミナー・レポート 平成16年9月22日
「JT生命誌研究館」「あくあぴあ芥川」の見学

 関西支部第2回セミナーが大阪府高槻市において開催された。見学場所は生命の進化について先端的な研究を行っている「JT(日本たばこ産業)生命誌研究館」と、付近にある芥川緑地内の施設「あくあぴあ芥川(芥川緑地資料館)」の2個所である。
 JT生命誌研究館では中村桂子館長に講演していただき、その後館内見学を行った。中村館長からは、環境アセスメント分野に期待することとして、個々の生物が生きているという事実の背景には、限りない生命の歴史があることを忘れないでほしい、との言葉をいただいた。館内では生物の多様性、そしてDNAに代表される生物の共通性について、多面的に解説展示されていた。ともすれば顕微鏡の中だけに完結してしまいがちな分野を、世の中に広く親しんでもらえるものにしたい、との想いが強く感じられた。
 あくあぴあ芥川では、若杉みちよ学芸員の説明を受けつつ館内およびビオトープ施設の見学を行った。館内では芥川に生息する、あるいはかつて生息していた淡水魚の展示スペースや自然工作教室などを見学した。ビオトープ施設では、キク科外来種ミズヒマワリの繁茂が問題となっていた。夏にはホタルがみられるという小水路についても、地元の方の手厚い管理と幼虫の飼育・放流によって維持されているのが現状とのことであった。先刻聞いたばかりである生命誌の話を思い出しつつ眺めると、その場所に本来生育し、歴史を紡いでいた動植物にとって、適した場となっていないことが少し寂しく感じられた。外来種の問題は、全国のビオトープや都市河川などにおける大きな問題であるが、その対策は容易ではない。地域らしい自然を創出・復元する場が、管理なしでは保つことができない状況になっているのが現実である。
 生物たちが、少しでもありのままに近い状態で生きていける場の保全や創出について、今後の業務や日々の生活の中で考え続けていきたい。
(レポーター:パシフィックコンサルタンツ(株) 松井理恵)

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