活動報告

支部報告 118
<<< BACK
 

■中部支部 技術セミナー・レポート(支部設立10周年記念技術セミナー) 平成19年10月31日
最終処分場の再生について
最終処分場の再生の設計について
講師 中日本建設コンサルタント(株)環境技術本部 部長 宇佐美雅仁

最終処分場の再生事業の施工について
講師 鹿島建設(株)名古屋支店安城榎前工事事務所 工事課長代理 三田一成

最終処分場の再生
講師 福岡大学大学院工学研究科 教授 樋口壮太郎


 設立10年の節目を迎えた中部支部では、10周年記念事業として、技術セミナーを開催した。開催にあたり、栗本洋二会長から中部支部発足10年を絡めながら、計画段階アセス、環境アセスメント士認定資格制度への取り組みなど協会活動の近況が報告された。

 技術セミナーのテーマは、過年度に実施したセミナー等の中から、会員の反響が大きかった「最終処分場の再生」を取り上げた。今回は、愛知県安城市の事例を取り上げ、1)設計、2)施工、3)技術開発(研究)の視点から、講師を招き、参加者の実務、実益に直結するプログラムを企画した。参加総数は、東海3県を中心に約100名であり、うち34名が地方自治体からの参加であった。

愛知県安城市の一般廃棄物最終処分場の概況

 愛知県安城市の一般廃棄物最終処分場(埋立可能容量57,300m3)は、残余容量が8,000m3となった。そこで安城市は、既埋立処分量49,300m3を掘り起こし、選別処分することで残余容量を31,800m3まで回復させ、処分場の延命化を図る事業に着手した。

最終処分場の再生の設計について

 設計者の立場から、基本計画作成時における留意事項として以下の4点を強調された。
試掘調査によるごみ質別埋立量、減容可能量の推計
選別資源の受入施設・受入条件の確認と選別処理方法の比較検討(資源化コスト、処分コスト)
含水量の適確な把握と選別処理方法の検討
メタン、硫化水素などの発生ガス調査と対策検討

最終処分場の再生事業の施工について

 施工者の立場から、工事施工時の留意点として以下の3点を強調された。
混入土砂を効率的に分離するための含水量調整に苦慮
作業環境と作業員の安全と健康を管理、悪臭、粉塵など周辺環境への影響を監視
地域住民の不安を除去するための作業情報を開示(地域住民の雇用、展望室の設置、環境測定結果)

最終処分場の再生

 処分場再生に向けての大学での研究成果を紹介いただきながら、再生事業の現状と展望について講演いただいた。その中で、以下の5点が印象に残った。
既存の最終処分場の再生は、延命化のみならず、地域環境保全上の機能回復、修復後の土地の有効利用、汚染土壌の修復などの効果が大きい。
サイトごとに埋立物の性状が異なるため、再生技術の確立にはより多くの事例収集が必要である。
有害ガス噴出を予見するための高密度電気探査、1m深地温調査、熱源解析などの探査技術の向上、合わせて発生ガス排除技術の向上が必要である。
ダイオキシン、アスベストなど有害物の除去・浄化技術の向上、また埋立物の物理組成、化学組成に基づいた効果的・経済的な汚染拡散防止技術の確立が急務である。
掘り起こしごみの選別技術の向上と選別ごみの資源化ルートの確立が必要である。

感想

 参加者の「最終処分場再生事業」への期待・関心は高く、各講演終了後の質疑応答も活発であった。樋口教授の研究事例と将来展望は、安城市における設計・施工の事例紹介と良くかみ合い、とても有意義なセミナーであった。
(レポーター:大日コンサルタント(株) 渡邉勝弘)


■関西支部 環境技術セミナー((社)日本環境測定分析協会関西支部共催) 平成19年12月7日
環境関連業界の今後の展望について
講師 (社)日本環境アセスメント協会 会長 栗本洋二

ヒトのからだと地球の未来
講師 環境省近畿地方環境事務所環境対策課温暖化対策普及促進専門官 中尾卓嗣

環境測定の今後
講師 愛媛大学農学部教授・環境先端技術センター長 森田昌敏


 今回の(社)日本環境アセスメント協会主催環境技術セミナーは、(社)日本環境測定分析協会との共催で開催され、両協会が関心を持てるような話題を選定して、3テーマの講義が行われた。

環境関連業界の今後の展望について

 日本における主な環境測定をはじめ環境影響評価業務のこれまでの経緯として、1965年の産業公害総合事前調査(大気(SOx、NOx)・水質(COD)中心)開始から1997年の環境影響評価法制定、および2008年の日本環境アセスメント協会創立30周年記念行事に関する説明があった。説明を聞き、「戦略的環境アセスメント(SEA)」が環境関連業界の今後を大きく左右するポイントであり、環境アセスメントのより早い段階での広範囲な視点からの評価が可能となること、環境に配慮した事業を実施することができること、また時代に即した取り組みが可能であることから、国レベルでの早急な制度化の必要性を強く感じた。
 また、SEAの制度化に向け、JEASで認定している環境アセスメント士についても非常に有用な資格であると感じた。

ヒトのからだと地球の未来

和歌山弁のユーモラスな熱い滑り出しの講義は、一気に中尾講師ワールドに引きずりこまれた印象であった。
 地球温暖化対策には各国で取り組んでいるが、現実に日本における2004年時点では、CO26%削減のはずが現状では8%増加していることをより多くの人々に理解させ、行動させるかという課題を「食」という観点で熱弁され、そのきっかけである「ヒトの代謝は自然界の動物と何ら変わらない。自然を無視しては生きられない。地球にやさしい生き方は、自らの健康的な生き方でもある。自然に目を向ける心は人に目を向ける心を育み、人を大切にする心は物を大切にする心を育む。そして、自分を見つめ自分を大切にする心の醸成につながる」という言葉には、深い感銘を受けた。
 地球温暖化対策は、日常生活において、最後に講師が力説された「もったいない」という精神のもとに、一人ひとりが実行することが大切であると痛感した。

環境測定の今後

 現在の分析業界を取り巻く環境から、特に興味深いテーマであり、鋭い観点からの講義であった。
 今後の環境測定を考えるうえで、環境分析の特性として以下の5点があげられた。
1. 分析対象項目は増加傾向にあるが、大波の時となぎの時がある。大ブレークする項目もある。
2. 分析価格(単価)は時とともに低下する。
3. 分析業は規制とともに浮沈する。
4. 規制の背景には、潜在するリスクのほかに情緒的な社会的反応や世界の動向がある。
5. 分析値の品質は価格と関係する。安価で品質の悪い分析が品質の良い分析を駆逐することは少ない。
 大きな問題であるPCBの処理問題について、特に低濃度PCBが約650万件〜1,000万件あり、その処分に莫大な費用が必要であること、焼却による低コストの処分方法もあるが、実用化が難しいことなどを強調された。これらが今後の大きな課題であると感じた。

最後に

素晴らしい講師による、多種多様な観点から環境についての講義を受講できたことに大きな喜びを感じた。今後の業務に際しては、「身近な環境から世界規模での環境へといった、状況に応じた柔軟な考え方」を生かしていきたいと思う。
(レポーター:環境計測(株) 三賀由紀成)


■北海道支部 第2回技術セミナー・レポート 平成19年12月7日
猛禽を守る! 最前線レポート 猛禽類保護の保全 医学的取り組み

講師:
猛禽類医学研究所代表・獣医師 齊藤慶輔

 北海道支部第2回技術セミナーは、札幌コンファレンスホールにおいて公開セミナー形式で開催された。国土交通省職員の方も含め、参加者45名と盛況であった。
 本セミナーでは、医学的視点から希少猛禽類の傷病個体の救護技術の確立、致死性感染症の把握、健全な生息環境の保全を中心に、保全対策を検討、実践していく重要性について、国内外の事例を踏まえ、ご講演いただいた。
 オオワシなどの希少猛禽類は、交通事故、感電、鉛中毒、風車衝突などの事象により保護・収容される場合が多く、これらは人間活動が要因である。これらの事象により保護・収容された個体の情報は、事象発生要因の傾向、個体群の保全を維持していくうえでの問題点の把握、具体的な保全対策を行う根拠となる場合が多い。そのため、保護・収容個体の情報蓄積は、非常に重要である。しかし、保護が進められている希少種でも、有効な情報はまだ少なく、課題も多い状況にある。
 希少猛禽類のみならず、野生動物に対する保全対策は、その種の生態を考慮した視点ばかりに注目していたが、死亡個体の情報を踏まえた保全対策事例の紹介は、根拠が明確で分かりやすかった。また、これらの情報を活用して保全対策を立案していくことが重要であると感じた。
 今後、保護・収容された際に得られた希少種の情報は、集積、整理・解析して活用し、行政機関などと連携して管理を強化していく必要がある。加えて、希少種の生息分布、生態などの基礎情報収集の強化も進めていかなければ、保全対策の効果確認、実施場所の検討、絞り込みなどが把握できず、情報のフィードバックが得られない。また、国内において、希少種に対する医学的視点による保全で得られた情報、技術の蓄積を継続することは非常に重要であり、この分野がさらに広く認識されることを期待したい。
(レポーター:北電総合設計(株) 一北民郎)


■北海道支部 第2回技術セミナー・レポート 平成19年12月7日
GISによる自然環境情報の解析と公開

講師:
酪農学園大学 教授 金子正美

 現在、大学等の研究機関では、環境分野等のさまざまな分野でGISが普及しつつある。GIS技術としてもっともなじみ深いものではカーナビがあげられ、一般に普及している。
 GISとは、地図情報を基本に、地形や土地利用等の基礎情報を総合的に管理・加工することにより、図面化する技術であるが、その利用には基礎情報の整理に大部分の時間と労力がかかる。
 現在、インターネットを介し、無償あるいは有償でGISの基礎情報を取得することが可能となっており、入手できる情報は増えている。しかし、必要とする基礎情報がすべてそろっている状況ではない。これは、既知の情報があるにもかかわらず、1)GIS情報として整理されていない、2)調査されておらず情報がない場合に分類される。
 では、今後GISが普及するためには何が必要なのであろうか。まずは、「誰がGIS情報を管理するのか」という問題が生じると考えられる。講演では、GISの未来を創造していくにあたり1)Being together(一緒にやろう)、2)Sharing(分かち合おう)、3)Learning(学んでいこう)、4)Building Relationship(仲間を作ろう)、5)Having fun(楽しくやろう)の5つの項目が掲げられ、Build locally、Share globally!(地域でつくったものを世界で共有しよう)とまとめられた。確かに、企業や団体等の情報が集約されれば、多くの情報を蓄積することが可能であると考えられる。しかし、情報の公開にあたっては、1)どのような情報があるのかをデータベース化する、2)情報の信憑性の判断、3)公表できる情報かどうかを判断する機関が必要であると考えられる。
 今後のGISの普及には多くの課題があると感じられるが、利用には一定のルールを定め、さらに利用できる情報が整理され多くなれば、利用価値が高まり、普及も促進されるものと考えられる。
(レポーター:北電総合設計(株) 佐藤真人)



TOPに戻る