活動報告

支部報告 119

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■ 九州支部 公開セミナー・レポート 平成20年4月18日
低炭素社会を目指して 〜九州からの発信〜
 京都議定書の第1約束期間が今年から始まり、日本においても温室効果ガスを1990年比で6%削減するために更なる取り組みが必要となっている。今回のセミナーは地球温暖化対策として有効な低炭素社会を目指した事例紹介であり、時宜にかなったものであった。
◆基調講演 「2050年 低炭素都市ビジョン」策定に着手!
北九州市環境局 参事 熊埜御堂澄雄

 環境モデル都市構想への応募に際し、トップランナーとしてのマネージメントのなかで産業振興と環境とのバランス取りに苦慮していることが強調された。
 環境モデル都市の基本理念として「アジアの低炭素社会作りを牽引する環境創造国際都市KITAKYUSYU」を掲げている。その理念の基に設定した「環境でまちを創る」、「低炭素型産業構造を構築する」、「低炭素社会を学ぶ」、「アジアに貢献する」、「環境で豊かに生活する」の5つの基本的な考え方に基づくエリアマネージメント、紫川エコリバー、響灘の緑の回廊等の事例紹介があった。
 また、北九州市はかつて公害が激しかったが、これを克服したという実績を基に、世界に向けて「環境首都」を宣言しており、それに向け邁進していることが示された。
 さらに、「ビジョン不在、産業と環境とのバランス取り」について、持ち時間の大部分を割いて繰り返し強調された点が印象に残った。講師が元産業推進畑だったこともあり、環境を求める一方で、産業界の躊躇、産業誘致の際の障害等、行政ならではの考え方が聞け、有意義であった。


事例1 ストック型街区研究会の取り組み(都市設計)
次世代システム研究会((株)新日本都市開発 常任顧問) 岩科健一

 エリア開発の過程でコンセプトを定めて街を作る事例として、地域レベル、街区レベル、住棟レベルの3つのレベルの事例が紹介された。街区レベルの事例では、戸建てでありながら管理組合を作ってコンセプトの統一を図ることにより、街区単位で町並みが統一されている。私権は一部制限されるが、おおむね好評とのことである。
 本講演ではエコタウンの具体的な実例を知ることができ、非常に興味深かった。
(レポーター:(株)東京久栄 伊賀上孝徳)


事例2 都市ごみリサイクル研究会の取り組み(バイオマス)
環境テクノス(株) 企画部 松田晋太郎

 既存施設同士を結び付けてバイオマスを有効利用するという点で興味深いものであった。具体的には、卸売市場から発生する青果くずを近接する下水処理場の浄化槽でメタン発酵させる取り組みである。既存のバイオマスガス化施設の課題に対しても、(1)生ごみ発生が卸売市場のため安定量確保が容易、(2)生ごみ発生箇所が固定されているため異物混入対策教育がしやすい、(3)排水処理は下水処理場で処理可能、とすることで対応していた。また、メタンガスについてもフォークリフトの軽油代替燃料として利用することで卸売市場内の環境改善につなげていくことを狙っており、今後の実証活動に注目していきたい。


事例3 北九州薄膜太陽電池研究会の取り組み(太陽光発電)
(財)北九州産業学術推進機構事業推進部 担当部長 野田松平

 今年の2月に設置された北九州薄膜太陽電池研究会の取り組みに関する報告であった。太陽光発電は再生可能エネルギーの一種であり、温室効果ガスの排出量削減に貢献するエネルギーとして以前から注目を浴びていた。総合資源エネルギー調査会需給部会からは、2030年に国内の全電力の10%を太陽光発電で担う計画も出されている。また、太陽電池産業は年率40%の成長が続いているうえ、九州地域には太陽光発電設備生産工場が集積し、その多くが薄膜系太陽電池を生産している。このように、高成長する太陽電池産業活力をさらに北部九州に取り込み、新たな太陽電池産業を創成・発展させるため、薄膜シリコン太陽電池および次世代薄膜太陽電池を研究対象とし、産官学共同でのセミナー開催等による情報の提供および共有化、委託調査の実施、個別研究テーマ創出等に取り組んでいくことを研究会の柱としており、今後の活動が注目される。
(レポーター:(株)九州テクノリサーチ 中野 敦



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