活動報告

支部報告 121

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■ 九州支部 第1回技術セミナー・レポート 平成20年11月28日
「戦略的環境アセスメント導入ガイドライン」の実務参考
講師:
環境省総合環境政策局環境影響評価課 課長補佐 小岩真之


 今回の技術セミナーは、平成19年4月に環境省より公開された「戦略的環境アセスメント導入ガイドライン」(SEAガイドライン)に基づいて、地方公共団体の環境部局が実務を進めるうえでの各段階における「着目すべき基本的な考え方」について、ご講演をいただいた。この一連のセミナーは、7月30日の東京会場をスタートに、京都、名古屋、仙台、本日の九州会場と5回に及び、そのすべての講師を務められた小岩課長補佐の熱意に敬意を表する。
 セミナーの内容は、すでに各セミナーにおいてレポートされているので、ここでは質疑応答の一例を紹介する。

質問: 着眼点の一つに、道路アセスにおける渋滞緩和の話があるが、環境面の改善効果として渋滞が緩和される反面、トレードオフの関係として、利便性向上により環境面での排ガス、CO2の問題等が起きるのではないか。このような、環境影響面と環境改善効果の側面の兼ね合いについてお聞きしたい。 

回答: ここでは、環境面での改善効果という点についてしか触れていないが、実際にSEAをやるときには環境面だけを独立させるのではなく、環境面以外の社会面、経済面等への影響度、効果を含めて、総合的に住民と一緒にコミュニケーションを図り進めていくことになる。また、国交省の公共工事のガイドラインでは環境面だけを特出して別なプロセスとするのではなく、環境面、社会面、経済面を含め総合的に比較検討しており、そのなかにSEAを含めるというステージになっている。そのなかで、環境には悪いが利便性は向上する案、環境改善効果はあるが治安が悪くなる案等、いろいろなトレードオフの関係が出てくるものと思われる。
 質疑応答は、5事例、30分以上に及び、また小岩課長補佐からはその一つ一つに、丁寧に回答をいただいたことを報告する。
(レポーター:いであ(株) 中尾 彰)


■九州支部 第1回技術セミナー・レポート 平成20年11月28日
戦略的環境アセスメント実務ガイド〜コンサルタントの立場から〜
講師:
SEA推進特別委員会 第1WG 主査 黒崎靖介



 本講演では、当協会がとりまとめた「戦略的環境アセスメント実務ガイド」についての紹介があった。実務ガイドは、当協会が設置した「SEA推進特別委員会」の2つのワーキンググループ(WG)により、平成19年6月から約1年間をかけて検討、とりまとめられたものであり、技術的側面と制度・運用の2つの側面から構成されている。

【技術的側面】

  技術的には、次の5つの事項について説明があった。
1)
複数案の設定:立地が望ましくない区域を示した「ネガティブマップ」や既存の枠にとらわれない広い視点で抽出した多数の案を合理性に基づいて絞り込む「2つの漏斗」方式などによって複数案を設定する。
2)
環境影響評価項目の選定:環境影響評価法の範囲は勿論、必要に応じて歴史や文化など広い範囲で選定する。
3)
評価指標の設定:被影響対象の存在量、被影響対象に対する影響程度、環境負荷量から、評価可能な指標を評価項目と環境影響要因の関係ごとに設定する。
4)
調査・予測・評価の留意点:「調査」は、原則として既存資料、「予測」は必要に応じて幅を持たせ、「評価」は順位や○△×などの記号を用いた表現とする。
5)
個別項目の調査予測評価手法:SEA独自の手法はない。

【制度・運用の側面】

  制度・運用面では、主に次の事項について説明があった。
1)
計画の公表と意見収集:SEAは、各制度の特徴を理解し、柔軟に対応すること、また各種手法を用いた住民等とのコミュニケーションが重要である。
2)
信頼性確保と人材育成:SEAには、意見収集や合意形成に関するコミュニケーション技術が求められる。同技術は、技術習得とともに、経験や社会的視野の広さが必要であり、今後、これらを満たす技術認定の仕組みや研修等による人材育成が重要である。
(レポーター:環境テクノス(株) 岩本 浩


■関西支部 環境技術セミナー・レポート 平成20年12月12日
地球温暖化がもたらしたものともたらすもの
講師:
人間文化研究機構国際日本文化研究センター研究部 教授 安田喜憲
窒素酸化物測定を通してみる環境変動−乾式NOx測定から我々は何を読み取れるのか?
講師:
大阪府立大学大学院工学研究科 教授 坂東 博
環境影響評価法の見直しと今後の環境アセスメントビジネスの展望について
講師:
(社)日本環境アセスメント協会 会長 栗本洋二


 今回の環境技術セミナーは、昨年度に引き続き(社)日本環境測定分析協会関西支部との共催で開催され、両協会が関心を持てるような話題を選定して3テーマの講義が行われた。

◆地球温暖化がもたらしたものともたらすもの

 「従来だとこのような講演料では講演しないのだが、環境の仕事に携わる君たちだから特別に講演をお受けした」という刺激的ながらもユーモラスな言葉から始まった講義は脱線を繰り返しながらも非常に盛り上がり、安田講師ワールドに引きずり込まれた印象であった。
 地球温暖化がわれわれ人類にどのような影響を与えるかについては、地球の平均気温が2℃上昇すると生物多様性が喪失され、5℃上昇するとわれわれ人類が滅亡するという将来に対する話から、年縞に注目し過去の歴史について研究しているという環境考古学に関する話まで多岐にわたり、非常に興味深かった。話の根底には自然を信じることと人間を信じることは表裏一体であり、生きとし生けるものという考えを大切にするべきという考えがあり、安田講師の考え方には深い感銘を受けた。
 地球温暖化対策としては、経済発展だけを考えるのではなく、自然と共生していく意識を一人ひとりが強く持っていくことが大切であると痛感した。

◆窒素酸化物測定を通してみる環境変動‐乾式NOx測定から我々は何を読み取れるのか?

 両協会共催でのテーマにふさわしく、非常に興味深い内容であり、化学の観点から鋭い視点での講義であった。
 最初に自然界における化学反応のメカニズム(化学の基本)を分かりやすく説明され、その後、最新の窒素酸化物計(NOx計)の紹介やNOx計を用いた調査結果の事例を説明された。
 公定法であるザルツマン試薬を用いる吸光光度法およびオゾンを用いる化学発光法には限界があり、発光ダイオードを用いた発光ダイオード誘起蛍光法(LEDミIF法)の開発を行っているという話は非常に興味深かった。
 自然現象を考察するうえにおいて、化学の観点から考察していく重要性を改めて気づかされ、非常に意義のある講義であり、90分間の講演が短く感じられた。

◆環境影響評価法の見直しと今後の環境アセスメントビジネスの展望について

 環境影響評価法施行10年の見直し状況について説明があった。見直しのポイントとしては、(1)方法書手続きの活性化、(2)アセス図書の分かりやすさ、(3)対象事業、(4)審議会、(5)事後調査の見直し、(6)SEA等の積極的活用、(7)環境アセスメントのイメージについてであり、各項目について課題および見直し状況について説明があった。
 また、当協会の現況についても説明があり、講演の最後に、「21世紀は環境の時代である。今後はSEAも含め、環境コンサルタントの役割が一層重要になる」という力強い言葉でしめられた。

◆最後に

 素晴らしい講師による、多種多様な観点から環境について講義を受講できたことに大きな喜びを感じた。当協会、(社)日本環境測定分析協会が合同でセミナーを開催し、情報を共有し、互いの技術を研鑽しあうことは、非常に意義があることであった。
 当協会の栗本会長が力強く宣言された「21世紀は環境の時代である。今後は環境コンサルタントの役割が一層重要になる」という言葉を肝に銘じ、広い視野を持って業務に携わっていきたいという思いを強くしたセミナーであった。
(レポーター:日本工営(株) 大平欽吾)


■九州支部 野外セミナー・レポート 平成21年2月27日
雲仙普賢岳における自然再生等

 14名の参加者が、技術セミナー会場の「ホテル道具屋」から野外セミナーへと出発した。屋号の由来は、先代の藤原貞氏が道具屋を営んでいたからであるが、長崎平和公園の平和祈念像を製作された故北村西望先生は、藤原氏の遠縁に当たるとのことである。
 諫早干拓は江戸時代より始まっているが、国営諫早湾干拓事業は平成元年に着工され、平成19年11月に工事が完工した。現在は長崎県に移管されているが、ギロチンと言われた湾の閉め切り、水門開放を巡る裁判、調整池の水質、営農地の払い下げ等さまざまな問題を提起している。長崎県諫早湾干拓室の許可を得て干拓堤防の水門等を見学し、諫早湾環境モニタリングの資料を見ながら、環境調査の重要性を改めて考えることができた。
 続いて、干拓地を迂回し、雲仙普賢岳へ向かった。平成新山ネイチャーセンターは環境省の施設であり、管理を委託されている(財)自然公園財団の大脇氏の案内を受けた。噴火時の驚異と避難シェルターの説明の後、現在の垂木台地の植生について学び、その後、観察コースに出て、少しずつ再生してゆく自然の様子を実感した。
 昼食は島原名物の姫松屋の具雑煮をいただいた。具雑煮の由来は、島原の乱において、天草四郎の軍勢が原城に籠城した際、農民達に貯えさせたもちと山海の材料により雑煮を炊き、兵糧としたのがはじまりと伝えられ、具雑煮の穏和な味は島原の郷土料理として有名である。
 島原災害復興記念館は、別名「がまだす(方言でがんばるの意)ドーム」とも言われ、全国初の火山体験学習施設である。日本で一番新しい火山「平成新山」隆起のきっかけとなった雲仙普賢岳の噴火による自然の驚異を肌で感じられる工夫が各所になされ、体験しつつ学ぶことができた。自然の猛威から立ち直って行く地元の姿を車窓に見ながら帰路についた。
平成新山.
平成新山.

(レポーター:西部環境調査(株) 松尾孝一)
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