活動報告
支部報告 127
<<< BACK


■九州支部 技術セミナー・レポート 平成22年3月13日
(1)「アイランドシティの環境アセスメントについて」
講師:
元福岡市港湾局環境対策部長 馬場崎正博
(2)「アセス法の改正から見えること」
講師:
福岡大学法学部 教授 浅野直人

(3)「対談」

福岡大学法学部 教授 浅野直人
元福岡市港湾局環境対策部長 馬場崎正博
(社)日本環境アセスメント協会 会長 栗本洋二



 はじめに、九州支部長のご挨拶があった。講師の先生方やセミナー参加者へのお礼と本日のセミナーの趣旨についてであった。講演をいただく浅野先生はアセス制度の見直しを検討する「中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度専門委員会」の委員長を務めており、2月に答申が出たばかりとのことで、講演を待ち遠しく感じた。また、対談には当協会の栗本会長も参加され、九州では直接会長の話を聞ける機会が少ないため、楽しみに思えた。

■アイランドシティの環境アセスメントについて

 馬場崎先生は、元福岡市港湾局環境対策部長であり、博多港アイランドシティの昭和53年以前の計画から完成まで一貫して関係しておられた。いわばアセスメントの変遷を凝縮したように感じた。そして、開発の必要性の発信から、計画アセスで島方式(アイランドシティ)になった経緯、アセスメントを進めるなかに、住民要望を取り込み、また特異的な問題点を解決に導いた苦労話の中にアセス技術の大切さとやりがいを感じた。平成6年からの事後調査の実施についての重要性のお話のなかで、事後調査のモニタリングにおいて考慮すべき調査項目や調査手法について聞くことができ、自治体の業務において重要であると思えた。

■アセス法の改正から見えること
 はじめに資料の多さに驚かされた。100ページを超えており、その大部分は法律案の新旧対照条文であった。しかし、講演は法律臭などまったく感じない歯切れの良いお話であった。とりわけ、基本的な考えの大切さを何回もおっしゃられたことから、大事で難しいことほど基本が重要であることを感じた。環境アセスシステム機能は意志決定の支援サブシステムであり、情報把握解析、情報収集調整、情報発信、合意形成、環境負荷低減への規制的機能などの機能があること、環境基本法第20条が現行アセス法の枠組みとなっていること、生物多様性基本法がSEAに重要であること等々の教えを受けた。アセス制度中央環境審議会答申のポイントとしては、(1)日本型SEAの導入と事業種に応じた柔軟な扱い、(2)対象事業についての、法と条例の役割、法的関与要件を踏まえた扱い、(3)方法書手続きの見直し等との教えを受けた。また、導入見送り事項について、風力発電以外の事業種へのアセス導入(→今後の状況により対応)、リプレイスのアセス手続き省略制度(→方法書で対応)、事後調査の全件義務化(→一律の扱い困難)他4項目であることをレクチャーいただいた。

■対談
 浅野先生の促しにより、栗本会長が当協会の活動状況を説明された。環境アセスメント士活用の場の拡大をアピールされたのが印象的であった。九州におけるSEAについて意見交換の後、SEAの課題についてフロアとの活発な意見交換があった。文献調査の限界と現地調査の必要性との兼ね合いについて議論されたが、とても興味深いやり取りだった。植生マップその他の整備について行政データとのマッピングが課題との意見はとても重要に思えた。栗本会長からファシリテーターの必要性が説かれ、浅野先生と栗本会長との意見交換では、アセスメントに携わるものとして、これから、社会貢献と環境創造を視野においたポジティブアセスメントに向けた人材育成の必要性を訴えられて対談の幕が閉じ、本セミナーの意義を充分に感じとることができた。

(レポーター:西部環境調査(株) 松尾孝一)

■九州支部 野外セミナー・レポート 平成22年3月12日
博多湾とアイランドシティを結ぶ海と陸からの視察


 今回の野外セミナーではアイランドシティが浮かぶ博多湾とその周辺を海と陸から12名で視察した。福岡市での野外セミナーは北九州市での開催以来、福岡県では二回目の開催となる。海からの視察では、福岡市港湾局所有の博多港周遊船に乗船し、博多港ポートガイドの吉村一紘氏から博多港の基本的な特徴と港湾設備等の説明を受けながら周遊し、また、福岡市環境局環境調整課環境影響評価係井上係長から、船内のスクリーンを使い、博多湾とエコパークゾーンについて説明を受け、博多湾の海域環境の特徴とエコパークゾーンの環境保全・創造に向けた取り組みについて理解を深めることができた。また、船窓からの実風景として、御島ゾーンの覆砂や作澪、アマモ場づくり、アイランドシティの捨て石式や階段式の護岸整備、和白干潟ゾーンでの生物配慮、下水処理場の放流口変更、市民協働としての和白干潟保全事業、等々について説明をいただいた。湾奥からの帰路では、再び、吉村氏から古地図(鎌倉・室町・戦国時代)を資料として、現在の博多湾との環境比較についてお話をいただき、視点の違う興味深い説明を聞くことができた。博多埠頭に接岸後、香椎パークボートコンテナターミナルに移動し、さらに吉村氏の案内で屋上からの博多港の施設とコンテナターミナルの全貌を見学した。観光バスがアイランドシティに差し掛かった時、事務局の手違いで福岡市環境局の方のガイドが受けられない旨のお詫びがあったが、その時驚いたのは、浅野先生がマイクを握られて「私で良ければ説明をいたしましょう。」とおっしゃって、アイランドシティの計画及び目的等(港湾機能の強化、快適な都市空間の形成、活力あるコミュニティの創造、環境共生モデル都市として環境創造の取り組み、その他)について説明されたことであった。車窓の風景に合わせた先生からのご説明をいただき、参加者一同、言いようもない感謝とともに野外セミナーの終了を迎えた。
(レポーター:西部環境調査(株)  松尾孝一)



TOPに戻る