活動報告


支部報告 90


■関西支部 第3回関西研究集会レポート 平成12年12月8日
「地域発・ゼロエミッション」

講師:(株)環境事業計画研究所 所長 吉村元男
 講師の吉村元男氏は、造園設計の仕事で最も早い時期から環境に配慮した活動をされてきた。コンサルに環境という名前を付けたのもおそらく氏が初めてであろう。私は当時、吉村氏と一緒に仕事をしていたが、まだ客先で「環境とは何か」とよく聞かれた時代であった。大阪万国博覧会の緑地基本計画にも共に参画したが、そのパビリオン群が数か月で取りつぶされるのを見て、資源の浪費に驚かされた。
 現在、吉村氏はNPO法人・全国ゼロエミッション会議(準備室)を主宰するなど、環境問題の最先端で活躍されている。本講演の主題である「地域発・ゼロエミッション」について、ゴミの減量化には自治体・企業・住民の地域全体の参加が欠かせないと訴え、北海道から沖縄まで全国で展開されている活動から事例を紹介された。
 代表的な例が屋久島のゼロエミッシヨンで、氏のフィールドワークの一つである。島の唯一の産業である屋久杉の伐り出しに対し、その乱伐に反対した保存活動を進め縄文杉を守ったことが、世界文化遺産の指定につながった。屋久島の二つの村をあげて、島にゴミを持ち込まない、ゴミを出さないというゼロエミッション活動に国連大学とともに取り組み、他の地域のモデルとなっているという。
 氏の同名の著書『地域発・ゼロエミッション』(学芸出版社2,500円+税)には、他の多くの事例が紹介されている。興味があれば一読されたい。開発か保存かの二元論ではなく、経済成長、エネルギー・資源確保、環境保全というトリレンマを前に、人間活動のなかで三つの複雑な絡みをうまく調和させていこうとするのがゼロエミッションである。
 すべての人がゴミを出すと、一部の企業だけでなく全員が加害者になる。工場生産システムでの製品はいずれゴミになる。日本の言葉にある「始末」とは、始めに終わりを考えることである、という氏の言葉が印象的であった。

(レポーター:(株)関西総合環境センター 村田辰雄)




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