活動報告


支部報告 94


■九州支部/沖縄県共催 研修セミナー・レポート 平成13年11月21日
 九州支部は沖縄県との共催で、沖縄県青年会館において、下記の三つのテーマで研修セミナーを開催した。
 沖縄県は、2001年9月に発生した米国における同時多発テロ事件の影響を受けて、「米軍基地を多数抱える沖縄はテロの危険性が高い」と敬遠され、訪れる観光客が激減し、多大な経済的打撃をこうむり、深刻な問題となっている。
 今回のセミナーはこのような状況のなかで、支部会員および本部会員等、約50名の会員が参加し、沖縄県文化環境部長永山政邦氏の「メンソーレ」(沖縄の方言で「ようこそいらっしゃいませ」の意味)の感謝を込めた第一声で開会した。
「沖縄県環境影響評価条例について」

講師:沖縄県環境政策課 大浜浩志
 講演内容のうち、国の環境影響評価法(アセス法)との違いについて、以下のことが紹介された。1)アセス法では、第一種事業および第二種事業があるが、条例では対象事業のみである。2)アセス法で対象事業となっていないゴルフ場、砂防ダム、農道、防波堤、養殖場、ごみ・し尿処理場、下水道終末処理場、畜産施設、スポーツレクリエーション施設、鉱物の掘採、土石・砂利採取、工場等を条例では対象としている。3)条例では事後調査の実施を義務づけとした。4)条例では提出する書類に虚偽の記載等を行ったときは、事業者に対し勧告し、これに従わない場合には公表することができることとした。5)条例では特に環境への配慮が必要な自然公園の特別地域等を「特別配慮地域」として設定し、当該地域にかかわる事業については対象規模を小規模とした。
「沖縄ヤンバルの生き物たち」

講師:琉球大学名誉教授 池原貞雄
 初めに、沖縄に生息する動物相は世界的にみても大変珍しく、貴重種(固有種)の数が卓越して多いとの説明がなされた。また、沖縄を中心とする琉球列島とガラパゴス諸島の動物相との比較を行い、哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・昆虫類のどれをとっても琉球列島がまさっており、いかに琉球列島が動物の宝庫となっているかをわかりやすく説明していただいた。最後に先生から、大学や研究機関に務めている学識者や、われわれのように環境アセスメントにかかわる仕事に従事している者に対し、このように自然豊かな地域をいかに保全・保護して行くかを検討し、それを実践することが大切であるとの提言がなされた。
「世界遺産・琉球王国のグスクおよび関連遺産群」

講師:沖縄県教育センター 我那覇 稔
 講師の我那覇稔氏は、今回の世界遺産登録に際し当初から携わられ、登録のために実際に活動された苦労話を聞くことができた。世界遺産に登録された関連遺産群は首里城跡等9か所ある。わが国では、姫路城や屋久島など10件がすでに世界遺産に登録されており、今回の琉球王国のグスク群は11番目の世界遺産となる。研修セミナーの翌日・翌々日の2日間をかけて、野外セミナーとしてこれらの関連遺産群を見学した。
(レポーター:(株)沖縄環境保全研究所 平良辰二)

■九州支部 野外セミナー・レポート 平成13年11月22日・23日
「琉球王国のグスクおよび関連遺産群」の見学

 九州支部では、九州各県の持ち回りで、それぞれの県の特色を生かした野外セミナーを開催している。今回は、沖縄県の「琉球王国のグスクおよび関連遺産群」がわが国では11番目に世界遺産に登録されたことを受けて、その歴史的背景について触れることを目的に琉球の遺産群を見学した。平成13年11月22日・23日の両日、約30名が参加した。

◆第1日目
 午前8:00 に那覇市内のホテルに全員集合。大型バスに乗り込み、一路北部をめざし出発。初日は、「今帰仁城跡」「座喜味城跡」「勝連城跡」「中城城跡」の北部から中部までの4か所を見学することになっている。
 車中では、ガイド嬢の説明がすばらしく、一同感心するばかりであった。一分一秒たりとも休むことなく、ひたすら言葉を発し解説してくれる。歴史に関する説明も詳しいものであった。なお、当初の予定にはなかった沖縄サミットが開催されたブセナ会場を見学することができて、各国代表になった気分を味わえたのも収穫であった。「勝連城跡」では、眼下に、マスコミで現在注目されている埋め立て反対運動が盛んな中城湾を眺めながら、同湾の環境アセスメントを担当している国土環境(株)西田弘之氏から中城湾港におけるトカゲハゼやクビレミドロ等の保全対策についての説明がなされたことも得るものがあった。
 1日目の予定の遺産群視察が無事終了し、南部のリゾートホテルにて宿泊することとなる。ホテルにチェックイン後、一段落し、懇親会が開催され全員が和やかな雰囲気に包まれてカラオケ大会まで行うなど、参加者の親睦を深めることができた夜であった。
◆第2日目
 午前8:30 にホテルを出発。予定は、「斎場御嶽」「首里城公園」「識名園」の3か所の見学である。最初の見学場所である「斎場御嶽」は(せーふぁうたき)と読み、1477年〜1526年に在位した第3代王尚真の時代に国家的な宗教組織との関係が深かった格式の高い御嶽で、中央集権的な王権を信仰面・精神面から支えた国家的な祭祀の場所として重要な役割を果たしたとされている。
 次に「首里城公園」へと移動し、見事に復元された首里城を見学する。450年間にわたって続いた琉球王国の中心であった首里城は、場内最大規模の首里城正殿をはじめ北殿、久慶門、歓会門、瑞泉門などで構成されている。1429年の琉球王国統一後は、1879年の沖縄県設置に至るまで、琉球王国の居城として王国の政治・外交・文化の中心的役割を果たした場所である。
 最後に「識名園」を見学する。1799年に造営された王家別邸の庭園で、王族の保養の場であるだけでなく、中国皇帝の使者である冊封使を接待する場としても使われ、王府の外交面において重要な役割を果たしていた。
 以上2日間、琉球王朝時代に築き上げられた文化について触れることができるとともに参加者の皆さんと親睦がはかれ、大変有意義な野外セミナーであった。
(レポーター:(株)沖縄環境保全研究所 平良辰二)




TOPに戻る