活動報告

セミナー・レポートサマリー 119

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■第5回公開セミナー・レポート 平成20年2月4日
道路環境影響評価の技術手法(2007年改訂版)の変更の趣旨と概要

講師:
国土交通省国土技術政策総合研究所環境研究部 主任研究官 曽根真理

 道路環境影響評価の技術手法は、法令に基づいて手続きが行われた道路事業すべてで活用されており、環境影響評価作業の省力化に一定の役割を果たしてきた。一方で、道路事業における環境影響評価制度では、自然環境、特に猛禽類を中心とした動植物調査に時間を要すること、大気汚染や騒音対策のため道路構造の変更が必要となり、建設費用が大幅に増加することが課題としてあげられる。
 今回の技術手法の改訂では、(1)省令改正を受けた改訂、(2)技術的進展を反映させる改訂、(3)新法律の制定等にともなう改訂がなされている。たとえば、オオタカとサシバに関する影響評価の進め方の参考資料が追加されたことや自然環境に対する具体的な環境保全措置の実施事例が巻末に追加されるなど、上記課題に対応した改訂も一部なされた。
 実務にあたっては、改訂内容を十分に理解し、成果に反映させる必要がある。なかでも、省令改正を受けた改訂である(1)道路計画の検討過程において環境面で考慮した検討経緯を明確化すること、(2)環境基準を評価基準として用いる場合でもその根拠を明示すること、(3)各専門分野の学識者から助言を受けたことを明記すること等は、分かりやすい準備書を作成するうえで重要な視点になると考える。
 今後は、多くの要望があげられている工事の実施にかかる水質への影響検討手法を追加することや、日本音響学会で現在検討中の建設機械騒音の予測式ASJ CN-Model 2007が近々更新予定であることが紹介された。
 質疑応答では、環境保全措置の捉え方、暫定供用区間で新たな工事を行う場合の騒音予測の考え方、事後調査に対する取り組み状況に関する質問や意見等が出され、講演者が唸る場面も見られる等大変有意義なセミナーとなった。
(レポーター:パシフィックコンサルタンツ(株) 真木伸隆)

■第5回公開セミナー・レポート 平成20年2月4日
建設機械の稼働にともなう種々の環境に関する予測評価の変更点の説明
講師:
独立行政法人土木研究所技術推進本部先端技術チーム 主任研究員 杉谷康弘
動植物・生態系“事例集”の紹介等
講師:
国土交通省国土技術政策総合研究所環境研究部 主任研究官 武田ゆう子


●建設機械の稼働にともなう種々の環境に関する予測評価の変更点の説明
 冒頭に、工事は短期間で実施するものではあるが、予期せぬことも網羅して、事業実施に向けて環境影響評価を行い、うまく情報伝達を行うべきだと述べられた。
 公害苦情は建設業が多く、特に大気質・騒音・振動が多い。これは、住民の環境に対する関心の高まりと都心部における解体作業によるものと説明された。  技術手法の改正については、項目の選定、ユニットの設定方法、予測式にかかるパラメーター、評価手法等について解説があった。特に騒音は、実際の建設機械の音を聴き、騒音の時間変動特性について理解を深めるものであった。

●動植物・生態系“事例集”の紹介等
 希少猛禽類(オオタカ、サシバ)の環境影響評価手法に関しては、行動圏調査に基づく手法(現行の方法)と巣の位置に基づく手法(簡略化した方法)について、工程フローを用いて説明があった。
 また、影響評価手法例として、現存植生図、行動圏解析、計画路線を踏まえたGISによる手法の解説があった。
 さらに、環境保全措置、事後調査の事例については、生息地の分断対策、希少猛禽類の保全対策、動物・植物の移植・移設、動物・植物に対する道路照明設備の配慮などについて個別の種からエコロードの事例まで幅広く説明をいただいた。
 最後に、良い環境保全を行うためには、知見の構築や事例の集約が必要であるとまとめられた。
(レポーター:(株)福山コンサルタント 池澤紀幸)

■ 平成19年度環境省主催 研修・レポート

東京会場:平成20年2月22日
大阪会場:平成20年2月28日

平成19年度環境影響評価研修

今年度の環境影響評価研修は、最新の環境アセスメント技術の情報提供と人材の育成等を目的として、環境影響評価実務者と審査等に携わる地方公共団体の担当者等を対象に、東京と大阪の2会場で開催された。


【東京会場】(東京グリーンパレス)

◆「環境アセスメントにおけるパブリックコンサルテーション」

早稲田大学理工学術院 教授 村山武彦

 コンサルテーションの「必要性」、「求められる機能」や「スタイル」に関する基本的な内容の説明があり、その後、環境影響評価において実施された公聴会の内容について、独自に分析した結果や米国での事例が紹介され、今後の日本の環境アセスメントの動向に関する説明が行われた。
 公聴会の実施内容の分析結果から、生態系に関する意見が他の要素(大気、地盤・土壌等)に比べて多様であることが説明され、生態系に対する市民の関心が強いことが分かった。

◆「戦略的環境アセスメントの動向と地域環境情報」

東京工業大学大学院総合理工学研究科 教授 屋井鉄雄

 日本におけるSEAの動向、環境省、国土交通省によるガイドラインの紹介や国内におけるPIの取り組み事例等について説明された。
 SEA内包型PIの取り組み事例の一つとして、横浜環状西線(道路)のPIが紹介された。PIは計画の全段階においてパンフレットの作成や住民意見のとりまとめの実施が必要であり、非常に重労働になることが確認できた。また、“代替案検討の結果、変更案が採用されたこと”や“オープンハウス方式での住民説明会を実施し、住民と事業者との対話の機会を設けたこと”は興味深かった。

◆「干潟生態系に関する環境影響評価の技術手法について」

東邦大学理学部生命圏環境科学科 教授 風呂田利夫

 干潟生態系における環境影響評価を例として、方法書作成時の留意点を、生物に注目した現地調査結果から検討・把握した例が紹介された。生態系の主要な構成要素である生物相の把握では、着目する干潟生態系の概要を把握するために、まず目視による調査が必要であることが示された。
 実際の観測結果を用いた説明により、調査手法の検討にあたっては、方法書作成段階から綿密に行なうことが必要であることがよく理解できた。

◆「環境アセスメントにおけるコミュニケーションについての意見交換会」

(社)日本環境アセスメント協会新領域研究会 副委員長 吉田俊幸

 環境アセスメントにおけるコミュニケーションの必要性やコミュニケーターの役割に関する説明の後、6〜7人のグループに分かれ、与えられたテーマについて意見交換を行った。
 参加したグループでは「アセスメントにおけるコミュニケーション促進のために求められる制度・仕組み」について意見交換を行い、住民とのコミュニケーションを図り、住民意見を的確に事業に反映させるためには、オープンハウス方式での意見交換会は魅力的であるとの意見が目立った。また、制度化については、何らかの形で住民との意見交換会を制度化することも必要であろう、との意見にまとまった。

◆まとめ

 アセスメント手続きの基礎から公聴会の実施事例の紹介まで、また戦略的環境アセスメント(SEA)に関する日本および海外の最新動向、現地調査の実際や実施結果の解釈等、基本的な部分から実質的な内容まで大変充実した内容であった。特に、グループ方式での意見交換会は、さまざまな立場や専門の人(事業者、専門家、自治体)が意見交換できる場として大変有意義であった。
(レポーター:日本エヌ・ユー・エス(株) 杉浦 琴)

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