活動報告

セミナー・レポートサマリー 122

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■第6回公開セミナー・レポート 平成20年11月21日
「戦略的環境アセスメント導入ガイドライン」の実務参考
講師:
環境省総合環境政策局環境影響評価課 課長補佐 小岩真之



 今回のセミナーは、東北地方での実績はまだないが、SEAについて自治体担当者を対象とした講演であった。JEAS会員にとっても、行政がどのような視点でSEAを行おうとしているかを知ることができる内容であった。
 また、配布された資料はSEAの評価方法が項目別にまとめてあり、ポイントが分かりやすく示されていた。
 セミナー参加者は、国土交通省、農林水産省、自治体関係者、電力会社等を含め約60名であり、地元コンサルタントの参加者も目立つなど、東北環境アセスメント協会との連携によりスムーズな運営が行われた。
 講演の概要は、以下のとおりであった。

SEAの実施例は全国的にみてもまだ少ない。しかし、これに近い形で、構想の段階において住民に説明し、複数地点を検討することで地元の合意が得られた産廃最終処分場の事例が全国にいくつかある。

SEAは、基本的には既存資料から得られた情報により評価を行うものである。

自治体は、関係地域の環境情報の提供や評価文書案に対する環境保全の見地からの意見を提出する必要がある。

複数地点で評価を行わない場合は、その合理的な理由を記載する必要がある。

事業により環境が改善される場合でも評価を行う。

事業を行わない案を含める。

参考資料として、具体的な記載事項、予測手法、地域環境情報の整理表等を示された。
 参加者から、「SEAで産廃最終処分場を対象にするのは難しいのではないか」、「複数の事業による環境影響評価が行えるとのことだが、環境省は上位計画段階でのSEAについてどのように取り組む予定であるか」、「SEAが終了し、EIAに進んだ段階で膨大なボリュームになってしまう心配はないのか」等の活発な質疑が行われた。
(レポーター:東北緑化環境保全(株) 笹川健一)

■第6回公開セミナー・レポート 平成20年11月21日
戦略的環境アセスメント実務ガイド 〜コンサルタントの立場から〜
講師:
SEA推進特別委員会 第2WG 主査 滝口善博



 当協会ではこれまで、戦略的環境アセスメント(SEA)にかかわる各種フォーラムや研究活動を行ってきた。この研究活動の一環として設置されたのが「SEA推進特別委員会」である。SEAの実施において参考となる手法、事例、制度等を研究し、「戦略的環境アセスメント実務ガイド」として発表した。委員会内に2つのワーキンググループ(WG)を設置し、第1WGでは技術的側面を、第2WGでは制度、人材、信頼性確保等を担当した。講演では、これら2つのWGにおける検討結果について報告がなされた。
 第1WGでは、各自治体の制度、実施事例がともに少ないという現状の報告、技術手法としての複数案の設定とその絞り込み、原則として存在および供用時を対象とした項目選定、指標設定による評価手法等についての説明がなされた。必要に応じて事業アセスとの対比を用いるなど、現場サイドとしても理解しやすいものであった。
 第2WGでは、計画の公表と意見収集について、国土交通省の「公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドライン」等をもとにした説明、信頼性確保や人材育成におけるコミュニケーション技術や環境影響評価技術の必要性、また今後の課題として、技術手法、制度運用等について説明がなされた。
 これら2つの側面について、種々の問題点を踏まえながら説明を受けたが、「分からないこと、不確実なことが多いからとネガティブになるのではなく、ある程度割り切って、まずは実施して行こう」とする姿勢には大いに共感を覚えた。
 現在、各地でSEAの必要性が認められているものの、実際には、制度、実施事例等がまだまだ少ないのが現状である。今後、社会においてはSEAのニーズが高まり実施事例も増えることと思われるが、それにあたり今回発表された実務ガイドが大きな指針となることを期待する。
(レポーター:レポーター:パシフィックコンサルタンツ(株) 麻田昌克/田中菜摘)

■第5回技術交流会・レポート 平成20年12月3日
2008年JEAS技術交流会「口頭発表」および「展示発表」



 師走に入り一段と寒くなった平成20年12月3日(水)、ルポール麹町にて第5回技術交流会が教育研修委員会およびセミナー委員会の共催で開催された。口頭発表および展示発表において75名の参加者(会員外参加者14名)があり、熱心に発表や質問のやりとりが行われた。
 山本教育研修委員長から、「出席された皆さんは口頭発表、展示発表を聞き、多くの質問をし、活発な活動の場としてほしい。」との挨拶があった。

●開催概要

 口頭発表は13:20〜15:00、15:40〜16:55で7件、展示発表は15:00〜15:40、17:05〜17:40で6件が行われた。

●口頭発表

 口頭発表は、自然環境分野で4件、生活環境分野で3件、合計7件の発表があった。発表者は25分間の制限時間内で、パワーポイントを駆使して要領よく分かりやすく説明し、聴講者は熱心に耳を傾け、先端技術を習得していた。
 コメンテーターとして、安田セミナー委員会副委員長(自然環境系)および綾木教育研修委員会副委員長(生活環境系)により各発表内容に対する評価を行うなど活発な質疑がなされた。
 参加者のアンケート結果からは、技術レベル、発表時間や件数はおおむね適当とする意見が多かったが、会場内の議論がもう少し活発になるようにすればもっと良いという意見もあった。また、今後聞きたいテーマとして、SEAの実例、GIS活用具体例、生物の保全対策など具体的な実例を取り上げてほしいといった意見等があった。。
 【口頭発表会社】(株)ダイミック、ESRIジャパン(株)、清水建設(株)、(株)セルコ、(株)オオバ、(株)数理計画、(株)環境総合テクノスの7社であった。

●展示発表

 会場には6つのブースが設けられ、展示内容は、測定・分析技術、調査・予測解析技術、コンピュータシミュレーション技術、環境情報の処理技術、GIS等の技術、環境保全措置の技術など多岐にわたっていた。参加者の多くが展示発表時間を利用して各ブースに立ち寄り、熱心に説明を聞き、質問していた。
 アンケート結果からは、展示内容は適当で、現実にすぐ業務に使える内容が多かったという意見があったが、展示件数はもう少し多い方が良いとの意見もあった。
 【展示発表会社・団体】(株)環境総合テクノス、日本工営(株)、東電環境エンジニアリング(株)、清水建設(株)、(株)大林組、(社)日本環境アセスメント協会の5社1団体であった。

●閉会挨拶

 閉会にあたり、池田セミナー委員長から、「発表内容は調査から環境保全措置まで幅広く、どれも実際に活用できるものばかりであり、有意義であった。今後も活発な参加を期待している。」との挨拶があった。

●成果および今後に向けて

 技術交流会は、会員が有する技術を互いに発表して内外に技術力をPRし、また人的交流を通じて、環境アセスメントにかかわる技術力の向上と業務範囲の拡大を図ることを目的に実施されたものである。今回は、昨年度同様はじめに展示内容をPRしてもらい、各聴講者が目的の展示発表に参画しやすいよう配慮した。また、口頭発表のコメンテーターを定めて内容に対する評価を行ったり、展示発表時間を10分多くすることにより余裕を持って熱心に質問ができるよう配慮した。
 アンケート結果でも今後の参加を望んでいる意見が多かったことなどから、所期の成果があったと考えられるが、口頭発表における議論の活発化や会員の希望する発表テーマへの対応等いくつかの課題も残っている。
 次回は、今年度の反省を踏まえ、さらに充実した技術交流会となるようにしていきたい。
 
  (レポーター:教育研修委員:平賀則幸)

■第2回野外セミナー・レポート 平成20年11月25日
都心の環境アセスメント研修会


 午前の部では、当協会の環境アセスメント百選にも取りあげられたわが国最長の地下構造自動車専用道である、首都高速道路中央環状線新宿線の東中野換気所を中心とした環境対策の状況について、首都高速道路(株)の板倉氏、菅原氏よりご説明いただいた。現地視察では、地上部で換気塔を、地下部で各種設備等を見学した。換気塔は、周辺に与える影響を考慮して高さを設定しており、排気は地上約100mの高さまで吹き上げ拡散しているとのことであった。また、当該道路でのはじめての試みとして、SPM除去装置、低濃度脱硝装置によって、トンネル内の自動車から排出されるSPMを80%以上、NO2を90%以上除去する設備を導入していた。さらに、換気ファンから発生する騒音を低減するために消音装置を設置するなど、環境への影響を低減する試みを見ることができた。
 午後の部では、公共下水道の整備および東京ドーム新築工事にともない、事業地に隣接する小石川後楽園において15年間にわたって実施されたモニタリングについて、(株)日建設計の長塚氏、(株)緑生研究所の井上氏よりご説明いただいた。モニタリングは、池・地下水の水位、植物群落の年変化、樹木活力度、土壌動物、鳥類、冷却塔の音等の各項目について実施していた。当初想定していなかった影響として、庭園管理上の人為的な植栽管理があげられる。また、別事業の高層建物の日影による植生等への影響も一部見られ、不確定要素ではあるものの複合的な影響要因としてあげられていた。これは、純粋な自然環境とは異なり、人の手によって管理がなされる庭園、かつ逐次再開発が進む都心という立地ならではの長期モニタリングにおける課題であると感じられた。
 今回のセミナーでは、実際に最新の設備を見て、また現場においてモニタリング状況の説明を聞くことができ、都心における環境保全等を考えるうえで、大変有意義なセミナーであった。
東中野換気所
東中野換気所

(レポーター:(株)日本設計 柴田 悠)

■第7回公開セミナー・レポート 平成20年12月22日
「公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドライン」について
講師:
国土交通省大臣官房技術調査課技術開発官 勝又賢人


 国土交通省では、社会資本整備重点計画法に基づき、平成15年6月に「国土交通省所管の公共事業の構想段階における住民参加手続きガイドライン」を策定し、取り組んできたが、ここでは、平成20年4月に策定された公共事業の構想段階における計画策定プロセスに関する標準的な考え方をまとめた本ガイドラインの説明がなされた。
 策定の背景としては、公共事業に対する世論の動向等に対し、計画策定プロセスの透明性、客観性、合理性、公正性向上に向けての標準的な手法の必要性とともに、住民参画促進および技術・専門的検討に対する基本的な考え方の再構築が求められてきた時代の変化が考えられる。
 標準的な計画策定プロセスとしては、複数案や評価項目の設定をはじめ、対象事業の特性に応じた住民参画や委員会関与のもとで行うことを定めている。社会面、経済面、環境面等から総合的に検討し合理的な計画を導き出す手法は、時代の要求に対応したものと考えられる。
 事業の特性等に応じた最適な計画策定プロセスにもそれぞれ違いがあることから、実際の個別事業では、本ガイドラインの趣旨を踏まえつつ、画一的にならぬよう柔軟に対応することも求めている。このことは、住民、利害関係者(団体)、学識経験者、地方公共団体、関係行政機関等さまざまな主体に関与するコンサルにとって、一層の研鑽が求められるところでもあると考えられる。
 一方、平成19年4月、環境省が定めた「戦略的環境アセスメント導入ガイドライン」との関連においては、本ガイドラインが示す構想段階における計画策定プロセスが、戦略的環境アセスメントを内包するものであるとされている。なぜなら前述のようにさまざまな観点から総合的に検討を行い、計画を合理的に導き出す過程を住民参加のもとで進めていくこととしているためだが、この点は今後の具体的展開に待つ部分もあろうかと思われた。
(レポーター:総合科学(株) 小角 浩)

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