活動報告

セミナー・レポートサマリー 125


■第1回公開セミナー・レポート
「埼玉県環境影響評価技術マニュアル(第1版)
      ―温室効果ガス編―」について


講師 埼玉県環境部環境政策課環境影響評価担当主幹 落合通明
期日 平成21年9月2日

 埼玉県は、昭和56年に要綱により環境影響評価制度を導入し、平成6年に条例を制定している。その対象事業の一部については、平成11年の「埼玉県環境影響評価技術指針」で「温室効果ガス等」を予測評価の標準項目として、事業実施前段階から環境配慮を推進してきている。平成21年4月には、これまでの取り組みを踏まえ、今後、ますます重要となる温室効果ガスの環境影響評価に関する具体的な実施方法等を示し、より積極的な取り組みを促すことを目的に技術マニュアルが作成されたが、今回はこのマニュアルについての紹介が行われた。
 マニュアルの構成に沿って、温室効果ガスに係る環境影響評価の基本的事項、環境影響評価の実施方法等について説明があった。環境保全措置において、これまでは定性的な検討が多かったものをできるだけ定量的な検討を行うこと、把握と制御が可能な場合は資材等の調達段階から事業を終了し施設を解体・撤去するまで、また波及的な影響を受ける地域までを対象とすることや、条例対象外の事業種や条例対象規模未満の事業における活用も想定していることなど積極的な考え方が示された。なお、このマニュアルは京都議定書を念頭に作成されたものとされ、「埼玉ナビゲーション2050」において2005年ベースで2020年に温室効果ガス排出量の25%削減の目標が示されているが、環境影響評価においては、ベースラインなどの問題もあり、削減目標量を必ずしもこれに一致させる必要はないとの説明があった。
 会場からは、資料の「環境影響評価における温室効果ガス等の調査・予測・評価事例集」に関連して、工事中の重機等の総稼働台数や燃料使用量、環境保全措置としての植樹本数の把握などについての質問があり、温室効果ガスの排出量や吸収量の予測になお難しい面があることがうかがえた。

(レポーター:八千代エンジニヤリング(株) 安田達行)

■第1回公開セミナー・レポート
「環境影響評価における温室効果ガスに関する研究」について

講師 (社)日本環境アセスメント協会 研究部会新技術研究会
期日 平成21年9月2日

 外部から講師を招いてセミナーを行うことが多い中、今回は自前の研究テーマについての報告発表であり、先立って行われた埼玉県の「環境影響評価技術マニュアル―温室効果ガス編―」の講演と組み合わせもあって、会員のほかに自治体からの参加者も多くみられた。
 本報告は、「JEAS第二創成期ビジョン実施計画」のリーディングプロジェクトの一つとして、温室効果ガスについて体系化された環境影響評価技術の確立を図ることを目的として平成19年度に設置された新技術研究会の研究成果である。この研究では、第一段階として既存の環境影響評価の事例調査を行い、環境影響評価における温室効果ガスの取り扱い方の現状と課題の把握を行った。対象とした分野は、「発電所」「道路」「廃棄物処理施設」「工場及び事業場」「ビル・商業施設等」の5分野で、それぞれについて環境影響評価として温室効果ガスを取り扱うバウンダリ(事業境界・活動境界)と温室効果ガスを評価するベースライン(基準)の問題を抽出し、今後の方向性について検討が行われている。
 バウンダリについては、事業境界を対象事業・施設のみを対象としている事例が比較的多くみられるが、事業区域外、地域全体あるいは会社やグループ団体等全体まで広げての評価や、活動境界も工事中の段階や供用後の関連車両等の間接排出にも取り組むことが望まれるとされた。
また、ベースラインを現状での排出量や削減策を実施しない場合の排出量としている事例が多く、評価の基準となるベースラインの設定の重要さなどが説明された。
 今後においては、LCA的視点に立った考え方や適切なバウンダリの設定、環境保全措置の推進を日本国内での温室効果ガス削減が担保できるような考え方も望まれている。

(レポーター:八千代エンジニヤリング(株) 安田達行)

■第2回公開セミナー・レポート
環境影響評価制度総合研究会報告書の概要について

講師 環境省総合環境政策局環境影響評価課 課長補佐 沼田正樹
期日 平成21年10月20日

 セミナーは、はじめに栗本会長から環境影響評価法制定とそれに対応した資格制度(環境アセスメント士)等演題に関係する当協会の対応、立場からの背景説明、挨拶の後開始された。
 沼田課長補佐からは、資料として、「環境影響評価制度総合研究会報告書」、「同(資料編)」、「環境影響評価制度総合研究会報告書の概要」の3つが配布され、「概要」をもとに逐次解説の形で丁寧に説明が進められた。
 この報告書は、環境影響評価法の定めにより、制定後10年を経過した時点で、施行状況について検討し、必要な措置を講ずるための資料としてまとめられた。
 講演は、19名の委員により議論されてきた内容を、報告書に沿って、環境影響評価制度の変遷及び法制定後の動向、環境影響評価制度の現状、最後に環境影響評価制度の課題という順で説明された。個々のテーマに関しては、研究会で出された主な意見、関連して議論された事項、そして今後の検討課題としてあげられた事項という順で具体的に説明された。よく理解できたのは何事にも見方は一つではなく、公益を重視すべき「環境」ではなおさら深い議論が必要である。研究会で検討されたそれぞれの意見にはいろいろなトレードオフが見え隠れするが、有識者が現状を下敷きに幅広く熱く議論を重ねられた結果が成文化されたことが伝わってきた。
 われわれ実務者は、ともすれば「法」、「条例」を教条的にあるいは事務的に眺め、裏にある「理念」のようなものに想いがいかなくなりがちである。法制定後10年での見直しは、実務者であるわれわれにも柔軟な思考で実務にあたることを問いかけていると考えたい。  注目度の高い話題に対する公開セミナーであったことから、大学教員、土木、建設系関係者など環境コンサルタント以外の参加者も多く、熱気の感じられるセミナーであった。
(レポーター:アジア航測(株) 塚本吉雄)

■第2回公開セミナー・レポート
環境影響評価制度の見直しの課題と今後の方向

講師 福岡大学法学部 教授 浅野直人
期日 平成21年10月20日

 環境省環境影響評価制度総合研究会座長である福岡大学の浅野直人教授から、研究会の経過、現行法制度制定・施行後の状況の変化の認識、現行法の課題・論点について説明があった。

(1) 経過
   2009年7月30日、環境影響評価制度総合研究会は、報告書をとりまとめ公表した。環境影響評価制度総合研究会は現行環境影響評価法付則7条に基づく政府の検討のための素材を提供する目的で環境省総合環境政策局長の私的諮問機関として設置されたものであり、今回の第二次研究会は2008年6月から約1年間にわたり開催された。
(2) 現行法制度後の状況の変化の認識
   現行法制度後の状況の変化では、@地方公共団体の条例の整備、A世界各国の律法の進展、B環境影響評価制度に関する状況の変化がある。
 地方公共団体では現行法制定以降、全都道府県及び14の政令市で条例による環境影響評価制度が設けられ、さらに環境影響評価制度では1993年の環境基本法の制定により環境影響評価制度を支える大きな力となっている。
(3) 現行法の課題・論点
   現行法の課題・論点では、@対象事業、A方法書、B国の関与要件、C地方公共団体の関与、D事業への反映、E手続きの電子化、F住民参加及び情報交換、G影響評価の内容・技術、H影響評価の審査、I戦略的環境アセスメント、Jその他の事項について、報告書へとりまとめる過程、すなわち環境影響評価の基本的な考え方、既往事例における問題点、またどのような議論がなされたかなどを含めた詳しい説明があった。
 委員会における議論、また講師の個人的見解などを事例を紹介しながら詳細に説明され、研究会報告書を読む際に大変参考となると感じた。
(レポーター:(株)静環検査センター 飯島眞治)




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