活動報告

セミナー・レポートサマリー 91


■第4回定例セミナー・レポート 平成13年2月21日
「新環境基本計画について」

講師:
環境省総合環境政策局環境計画課
計画政策第一係長 斎藤 雄一

 著しい公害を第一の環境の危機とすると、現在は、地球温暖化、廃棄物問題等による第二の新たな環境の危機に直面している。生産方式の見直しなどの対症療法によって改善できる第一の危機とは異なり、第二の危機は大量生産、大量消費、大量廃棄という社会のあり方そのものを変えない限り解決できない。このため平成12年12月に改定された「環境基本計画」は、これまでの社会のあり方を見直し、持続可能な社会の構築のために、環境面からの戦略を示し、21世紀初頭における環境政策の基本的な方向と、取り組みの枠組みを明らかにしている。
 新しい環境基本計画は4部構成となっている。第1部は環境の現状と課題、第2部では課題に対する施策展開の基本的な方向を示している。第3部として施策展開の基本的な方向を踏まえて具体的な施策を示し、第4部では示された施策を効果的に実施していくための推進体制や進捗状況の点検方法が示されている。
 環境基本計画の改定にあたり「理念から実行への展開」および「計画の実効性の確保」の二つの特徴があげられる。まず理念から実行への展開として、5〜10年の間に前進をはかる必要性が高い地球温暖化や循環型社会等の11の分野を取り上げている。それぞれについて、現状と課題、施策の基本的方向および重点的取り組み事項について、ストーリー性を持った戦略的プログラムとして、国や地方自治体を含めた各主体の取り組みが示されている。もう一つの特徴である計画の実効性の確保は、各府省が環境配慮方針の策定や環境管理システムの導入により計画の推進を行い、あわせて進捗状況の点検の強化も行うとしている。
 新環境基本計画の策定により、国および地方自治体等において各種関連法令や環境保全計画が整備されはじめている。今後のコンサルティングに生かすためにも、関連情報の収集、整理の必要性について強く感じるところがあった。

(レポーター:東電環境エンジニアリング(株) 藤山幸作)

■第4回定例セミナー・レポート 平成13年2月21日
「循環型社会形成推進基本法に基づく循環型社会への挑戦」

講師:
環境省廃棄物・リサイクル対策部企画課循環型社会推進室
課長補佐 尾川 毅

 本セミナーでは、「循環型社会形成推進基本法」(以下「循環基本法」という)をはじめ、この基本法を核とする一連の廃棄物関連の法律制定の経緯とそのねらいについて、お話しいただいた。
 2000年は循環型社会元年といわれるが、「循環」という考え方は「循環基本法」の制定時にはじまったものではなく、リオの地球サミットを受けて1992年に制定された「環境基本法」および「環境基本法」に基づいて策定された「環境基本計画」のなかで、すでに取り上げられていた視点である。環境基本計画に述べられている循環には二つの意味合いが含まれており、一つは自然界における物質循環であり、もう一つは経済社会システムにおける物質循環であるが、環境基本法で扱う循環は後者にあたる。
 「循環基本法」の特徴としては、1) リデュース→リユース→(マテリアル)リサイクル→サーマルリサイクル→適正処分という処理の「優先順位」を法定化したこと、2) 「排出者責任」「拡大生産者責任」というキーワードで代表されるような、国、地方公共団体、事業者および国民の役割分担を明確化したこと、3) 政府が「循環型社会形成推進基本計画」を策定すること、4) 循環型社会の形成のための国の施策を明示することがあげられる。
 最後に、都道府県向けに環境省が作成した循環型社会に向けてのPRビデオを見て、一人の国民として廃棄物について考えるとき、たんに「捨てる」時期に至ったものを「捨てる」時点の問題として考えるのではなく、「捨てる」ときのことを考えて「買う」というところから、自分自身の生活を考える必要があると感じた。

(レポーター:(株)東京久栄 上田壽和子)

■第3回技術セミナー 平成13年3月6日
「景観生態学に基づく生態系解析」

講師:
東京情報大学経営情報学部情報学科
教授 原 慶太郎

 平成11年に施行された環境影響評価法では、地球環境や生物多様性保全の問題に配慮して、新たに「生態系」の項目が加わり、生態系そのものを対象とした環境影響評価の予測と評価が実施される仕組みとなった。本技術セミナーでは、その生態系評価のツールとして千葉県内陸部を対象にGISを活用し、その生態系の評価を試みた事例が紹介された。 千葉県内陸部を対象とした事例では、分析の単位をエコトープ(生態系のまとまり)、ランドスケープ(エコトープのまとまり)、リージョン(ランドスケープのまとまり)の3段階に区分し、リージョンを評価していた。リージョンあるいはランドスケープの評価にあたって重視すべき点として強調されたのは、隣接する単位との関係であった。一つのエコトープあるいはランドスケープの評価の内容は、個々が立地しているランドスケープあるいはリージョンの位置により異なるということ、具体的には、同等のエコトープであっても、都市内にあるものと、農村内にあるものとでは評価の内容は異なるものであることが強調されていた。GISは、自然資源や土地利用等をオーバーレイ(重ね合わせ)することにより、これをビジュアルに示すことができるツールであり、その可能性を垣間見せてくれた。衛星写真、リモートセンシングデータなどの基礎的情報や、GPS、モバイルGISなどのITを用いた情報の蓄積・加工により、困難とされる生態系評価の新たな展開の可能性を感じさせるセミナーであった。
 また、今後の課題として、GIS等の情報システムを意思決定プロセスにどう活用していくか、自然環境等の基礎的データをどう蓄積していくのかという環境影響評価の仕組み全般に共通する問題の指摘があった。
 最後に、GISはツールとしてとらえがちであるが、セミナーではGeographic Information Scienceという見方もあるとの紹介があったことを特記しておきたい。

講演録報告書(会員のみ) >>>
(レポーター:(株)野村総合研究所 菅沼祐一)

■第3回技術セミナー・レポート 平成13年3月6日
「流域から見た生態系のとらえ方」

講師:
慶応義塾大学経済学部生物学教室
教授 岸 由二

 まず初めに「生態系」の定義についての確認があった。純粋に生物学的な意味での「生態系」、すなわち食物連鎖・エネルギーと物質の動きととらえるのではなく、ここでは「自然」とほとんど同じ意味、つまり生き物がしっかり生息している地べたの基盤ととらえる。「流域とは何か」「その活用は」「いま何が起こっているか」「これから先どう進んでいくのか」。このようにとても大きな課題に対し、鶴見川流域での生物多様性保全モデル地域計画、東京都緑の保全計画、まちだエコプランの三つの事例をもとにわかりやすく解説していただいた。
 「流域」という概念ひとつをとっても、私自身しっかりした定義のもとに使ったことはなく、あいまいさがあったが、「水系に降水が集まる大地の窪み」という、単純で、それでいて的確な言葉で表現できることを知った。また、そういった領域が水の循環を軸としたベーシックな生態系をかたちづくっている。目で見てはっきりわかる、でこぼこした領域がランドスケープの基本単位で、「流域の小さな要素は地べたの細胞のようなもの」という。小流域に分けることによって大地を自然的に区分でき、アセスメントを行うに際しても、その地域の特徴を捉える有力な手がかり、ツールとなることが確認されたように思う。
 「流域」概念を使って、生物多様性の保全・回復が実際に行われている鶴見川流域での事例が紹介された。鶴見川流域全域で生物多様性の保全と回復を推進するには、どういう考え方で、どういう方策を立てたらよいかが、膨大な資料をもとにまとめられている。これは、今後の大きな指標となるであろう。「流域圏」を核にして、河川計画から環境文化育成というような市民活動の領域でも、流域ランドスケープが注目される。誰もが多様に自由に、いろいろな形で展開することが、環境の危機を克服する大きな方途であろうと思われた。
 われわれ一人ひとりが身近な「流域圏」にしっかり足場を築き、河川を、都市を考えることが必要なのではないか。

講演録報告書(会員のみ) >>>
(レポーター:(株)日本海洋生物研究所 大屋二三)

■技術士受験講習会 平成13年5月16日
技術士受験<ここが言いたい>
2年の経過措置の間に合格を!!

 平成13年4月1日から、技術士法の一部が改正された。2年の経過措置の間に、有資格者は合格を目指していただきたい。制度の改正で、試験がやさしくなると考えるのは、幻想にすぎないだろう。技術士全体の人数が増えるとしても、少なくとも建設部門に関する限り、「従来から技術士の多い建設コンサルタント業界の技術士の数が増えるようなことはないであろう」(技術士12.9西野文雄)といわれている。今までよりも若いうちから受験競争に巻き込まれ、より厳しい競争社会が到来することになると思ったほうがよい。
 法改正後も、今までどおり7年の経験で受験するコースが残されるが、1次試験に合格している必要がある。「工学系大学の卒業生全員が第1次試験を受験することが期待されている」(技術士12.1梅田昌郎)ということは、理学系の卒業生が建設部門の第1次試験を受験することが現実には難しいことを意味する。今までの第2次試験ならば、理学系の人が建設環境を受験することができたし、またそのように期待されていたと考えるが、第1次試験を受けるとなれば、そうはいかなくなる。
 今までも「3回の受験で合格を!」と言ってきたが、いよいよ残すところ2回になってしまった。今までの経験を1回の受験と考え、今年が2回目、来年はラスト3回目。背水の陣である。受験に未経験の人は、耳学問で1回目の分を補う必要がある。本番と同じ時間割で、一度書いてみるのがよいだろう。時間が足りない、書く材料が足りない、表現に工夫が足りないなど、自分に足りない点を自覚するのが上達の第一歩と考えていただきたい。原稿用紙を有効に使い、図表を効果的に使って、やさしい文章、読みやすい文章を書く練習をしていただきたい。
 マラソンに勝つには、スピードと持久力がいる。技術士試験も、30分で800 字書けるスピードと、集中力を午前3時間、午後4時間持ち続ける持久力を兼ね備えた人だけが、合格の喜びを手にすることができる。

(レポーター:国土環境(株)新津 誠)




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