活動報告

セミナー・レポートサマリー 93

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■第1回定例セミナー・レポート 平成13年8月29日
「東京都環境確保条例について」

講師:
東京都環境局総務部 公害防止制度調整担当課長 西原幹男
 東京都において、平成12年12月に公布され、平成13年から順次施行されている、「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)」について、この条例の制定に検討段階から携わった西原担当課長に、改正の経緯から内容まで、平易に解説していただいた。
 昭和44年に制定された東京都公害防止条例は、国の大気、水、騒音といった項目別の規制を工場・指定作業場といったサイトベースで規制・指導を行うという先進的な取り組みであった。今回、この公害防止条例が「都民の健康確保」と「安全な生活環境の確保」そして「将来世代への良好な環境を継承」することを基本において全面改正された。
 これまでの環境規制は、高濃度、局所的な問題への対応が主体であったが、現在は地球環境問題や化学物質の問題など、広域的かつ低濃度で、また被害者が一方では加害者になるような問題などへの幅広い対応が求められている。これまでは、被害に対して規制で対応することを中心に行ってきたのに対し、これからは「安全」および、より進んで「安心」のために幅広い管理の取り組みが求められているといってもよいであろう。今回の条例は、その点を組み入れた先駆的な取り組みといえる。
 また、企業に改善に向けた計画書を提出させる仕組みは、企業の自主的取り組みを醸成させる面で大きな効果が期待できる。欧米をはじめ、わが国でも「環境」「安全」「健康」を企業理念の中心におく企業が多くなり、企業の自主的取り組みが活発になっている。企業・住民・行政が一体となって安心できる社会を創造していくうえで、今回の条例の仕組みは新たな社会を展望していると考えられる。
 さらに、今回の条例は、区市への権限委譲も組み込んで、地方分権化の流れを取り入れたものとなっていることも大きな特徴であり、この意味でも今後の自治体における同様の条例制定の先導的役割を果たしていくであろうと強く感じた。

(レポーター:(株)富士総合研究所 岩田義康)

■第1回定例セミナー・レポート 平成13年8月29日
「土壌汚染の調査および対策の実際」

講師:
同和鉱業(株)ジオテック事業部 浄化担当部長 白鳥寿一
 本セミナーでは、1) 土壌汚染の特徴、2) 海外の土壌汚染関係法、3) わが国の法規制(地下水・土壌環境基準)、4) ISO14001の導入とのかかわり、5) 汚染調査と浄化対策のポイントなどについて、具体的な事例を交えてわかりやすく解説していただいた。
 土壌・地下水汚染は、私たちの目に触れることのない地下で発生するため、社会問題として広く認識されはじめたのは、ごく最近になってからである。このため、土壌・地下水汚染は、大気・水質汚染(汚濁)などに比べて対策の進んでいない最後の「公害問題」ということができる。
 関連する法規制としては、平成3年8月に「土壌の汚染に係る環境基準」が制定され、平成9年には「地下水の水質汚濁に係る環境基準」、同基準の具体的な調査方法から評価に至る手法を示したガイドライン「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針および運用基準」が平成11年1月に公布されている。この「指針および運用基準」には、調査フローや標準的な手続きが示され、具体的な取り組みのベースラインが設定されている。また、「指針および運用基準」では、事業者の責務として「汚染が判明した場合には速やかに都道府県に報告する」こととし、都道府県は「調査の指導」と「環境基準値を大幅に上回る高濃度汚染の場合には、都道府県が住民に情報を公開すること」が盛り込まれている。
 これらの運用基準をもとに、2年半の取り組みが日本全国で行われてきたが、運用のかなりの部分が「自治体担当部署」の判断によるところが大きいのが、本指針の運用の現状であるとの話もあり、自治体による対応の差異(経験豊富であり、指導内容、指導方針が明確であるかどうか)が大きく影響するものと考えられる。また、調査費用、緊急対策費用、恒久対策費用、直接・間接補償費用などの費用負担債務は、最終的には司法判断、判例などにゆだねられるが、法令上は「汚染発生原因者」にあるとされている。

(レポーター:(株)復建エンジニヤリング 新井昭次)

■海外ワークショップ・レポート 平成13年7月30日〜8月3日
Workshop on Environmental Impact Assessment (EIA)
and Green Productivity (GP), Fiji に参加して


 環境省の紹介で、フィジーで開催されたアジア生産性機構(APO:Asian Productivity Organization)主催の「環境アセスメントと緑の生産性に関するワークショップ」に参加する機会を得た。APOは、政府間協定により設立された国際機関で、加盟18か国・地域が相互協力を基本精神として、アジア太平洋地域における社会経済発展のため、生産性向上に関する諸活動を行っている。その活動の一つに緑の生産性(GP)がある。このGP計画は、1992年のリオ地球環境サミットで提唱された、「開発と環境の持続可能な発展」を具体化するために、総合的な社会経済発展をめざして生産性向上と環境改善活動を両立させるための戦略である。
 今回のワークショップでは、GPに則した環境アセスメント(EIA)についての講義と、参加者によるEIAのケーススタディのグループ討議が5日間(7月30日〜8月3日)にわたって行われた。参加者は、マレーシア、インドネシア、タイ、韓国、台湾、フィジー等のアジア14か国・地域の合計25名。政府の環境担当官、建設企画部門の担当官や環境コンサルタント、建設設計者などさまざまであった。日本からは、私と日本工営(株)神下高弘氏、三井共同建設コンサルタント(株)岡本憲一氏のJEAS会員3名が参加した。
 講義内容は、GPとEIAの概論から始まり、EIAのスコーピング、予測、評価およびモニタリング手法等のほかに、環境コスト、環境リスクの分析方法について、さまざまな具体例を交えながらの講義を受けた。ケーススタディでは、フィジーに建設予定のリゾートホテルについて、具体的計画内容が明示され、4つのグループに分かれて討議した。講義を踏まえて、建設・供用および閉鎖時のそれぞれについて、環境や社会に影響のある項目をあげて、モニタリング手法と事業の改善点について検討した。
 環境の保全を前提として生産施設の維持、改良を行い、持続可能な発展を行うGPの概念とEIAの組み合わせの講義を受講したことにより、新たなコンサルティングの可能性を感じた。

(レポーター:東電環境エンジニアリング(株) 藤山幸作)

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