活動報告

支部報告 100

<<< BACK
NEXT >>>

■北海道支部 野外セミナー・レポート 平成15年9月19日
「道内最多のトンボ相を誇る西岡水源池探訪」

講師:
(株)野生生物総合研究所 所長 酒井健司

 本年度の野外セミナーは札幌市豊平区の西岡水源地で開催された。当日は、地下鉄真駒内駅に集合し、バスで目的地の西岡水源地に向かった。(株)野生生物総合研究所の酒井健司所長に現地の案内をしていただき、総勢25名で見学した。あいにくの小雨だったが、水源地周辺を2時間程度散策し、終始和やかな雰囲気のなか行われた。
当水源地は、1909年に旧陸軍駐屯地への上水供給を目的に、石狩川水系豊平川支流の月寒川を堰き止めて建設され、第二次世界大戦後は、札幌市・旧豊平町への上水に利用されていた。1974年にその使命を終え、その後、札幌市の都市公園として整備され、現在は一般開放されている。また、池の周囲だけでなく、上流部の湿地内には木道が敷かれ、散策できるようになっている。
酒井氏によると、当水源地では40種のトンボが確認されており、これは北海道内に生息するトンボ(約70種)の6割弱にあたるとのことであった。また、エゾホトケドジョウ、ザリガニ(ニホンザリガニ)、ヘイケボタル、カワシンジュガイなどの、今日では非常に貴重な水生動物が多数生息し、11月になると天然記念物のクマゲラも公園内の林で採餌する姿が見られるという。現地では、流入支沢でカワシンジュガイの観察を行ったが、彼らの生態には驚かされた。30年以上生きるものはざらで、北海道での最長命の記録は67歳とのことである。その反面で成長が遅いため、本種が生息する河川は、長期間撹乱を受けていない河川ということができる。
札幌市近郊にこのような生物相の豊かな環境が残されていることは誠に喜ばしいことである。見学を終えた後、ここには何度でも訪れたいと強く思った。「多様な生物を育むのは多様な環境である」と再認識させられた有意義な一日であった。今後ともこのような環境を維持するために、われわれ技術者の果たす役割はきわめて大きいと感じた。
(レポーター:(株)開発工営社 秋山誠治)

■中部支部 第1回技術セミナー・レポート 平成15年9月19日
「ダイオキシン類汚染土壌対策」

講師:
(株)鴻池組技術部環境エンジニアリンググループ 部長 安福敏明
「土壌・地下水汚染のメカニズムと調査技術」

講師:
関アジア航測(株)環境事業統括部 技術部長 村田正敏

 重金属や化学物質で汚染された土壌の把握や、土壌汚染による健康被害の防止などを目的とする「土壌汚染対策法」が昨年2月に施行された。これまでの「汚染防止」の立場とは異なり、すでに汚染された土地や汚染の可能性のある土地の調査を実施し、汚染が確認されれば、対策を講じようとするものである。
土壌汚染に関する法制度は、大気汚染や水質汚濁に比べ、やや遅れていたのが現状であった。今回の法制度により、指定調査機関の指定もされ、多くの会社が登録されている。そのなかの多くの会社は、ゼネコンや建設コンサルタントおよび地質調査会社であり、建設業界では土壌汚染の調査や対策事業に参画する姿勢がみられた。
今回、発表された二つの事例は、そんな社会情勢のなかで先進的な事例紹介となった。まず、「ダイオキシン類汚染土壌対策」においては、ダイオキシン類に汚染された現状把握から、ダイオキシン類に汚染された土壌の掘削、さらに分別、そして無公害化処理に至る過程が紹介された。掘削・分別に際しては、作業員への暴露防止対策、また飛散する粉じんのモニタリング実施など対策事業が細心の配慮がなされながら行われた事例が紹介された。最終的に、ジオメルト工法による無公害化処理システムにより、土壌対策の結びがなされた。
一方、「土壌・地下水汚染のメカニズム」においては、調査機関として土壌汚染対策法に基づいた調査の進め方について詳細な説明となった。調査を進めるにあたって、汚染物質の特性を踏まえる必要があり、各汚染物質挙動に関する事例紹介がなされ、興味深い講演となった。
(レポーター:(株)創建 橋本寿朗)

■中部支部 第1回技術セミナー・レポート 平成15年9月19日
「揮発性有機化合物汚染土壌・地下水の浄化対策(岐阜市と名古屋市の事例)」

講師:
大成建設(株)エコロジー本部土壌環境事業部 シニアエンジニア 篠原直規
「土壌汚染調査等における調査会社のリスクマネージメントの必要性」

講師:
日本総研(株) 代表取締役 大石一成

 浄化手法の選定では、土地の利用状況、委託者の経済力などが大きな制約因子となり、汚染濃度を環境基準レベルにまで浄化する「完全浄化」を目標とするか、汚染物質を激減させ、リスクを画期的に軽減させる「リスク軽減」を目標とするかが決まる。
 今回紹介された事例は、行政の代理執行による浄化対策であり、土地利用の状況等の制約で「リスク軽減」を目標に浄化が行われたものであった。
 岐阜市の事例では、使用中のビル1階での対策という制約のなかで、目標の95%浄化に対し99%浄化の結果が得られた。また、名古屋市の事例では、使用中の公道という制約のなか、汚染物質トリクロロエチレンを浄化し、分解生成物であるシス−1,2−ジクロロエチレンについて10年後には環境基準以下にすることを目標に浄化が行われている。
 これらの事例にみられるように、調査会社は汚染状況を的確に判断するとともに、限られた条件のなかで手法を選定することで手腕を問われることとなる。土壌汚染対策法にかかわる調査は、土地取引や土地開発に直接かかわる調査であるため、調査結果に起因する事象についてのリスクマネージメントは、調査会社にとって今後重要課題となる。
 調査結果の如何で資産であるべき土地が負債ともなり、調査会社が訴訟の対象ともなり得る危機をはらんでいる。しかし、今回の対策法による基金は、開発途上で調査結果に反して汚染物質が発見された場合に、プロジェクト中断から工事再開にかかる費用を補償対象としていない。調査会社に賠償責任が発生した場合は、全額自己負担となるのが現実だが、存亡の危機から会社を守る対策につては、ISO/IEC17025の契約に関する項目が参考となる。
(レポーター:(株)テクノ中部 伊藤泉美)


■中部支部 第2回技術セミナー・レポート 平成15年10月22日
「2005年日本国際博覧会における環境配慮について」

講師:
(財)2005年日本国際博覧会協会会場整備本部 環境グループ長 黒瀬永治
「2005年日本国際博覧会における会場整備について」

講師:
(財)2005年日本国際博覧会協会会場整備本部 会場整備グループ長 町田 誠

 中部支部の第2回技術セミナーは、平成15年10月22日56名が参加して開催された。最初に、二宮会長から日本アセスメント協会設立後25年の日本環境アセスメント協会のさらなる発展を目指した今後の活動についてお話しがあった。
次に黒瀬講師から、愛知万博における環境配慮についてお話しいただいた。
 愛知万博は、(1)環境影響評価書に示した保全措置の実施、(2)自然環境に配慮した会場計画の策定、(3)循環型社会の先進的な技術の導入、(4)3Rの導入、(5)環境負荷の少ない交通手段の利用促進、(6)楽しみながら学ぶ機会の提供、(7)関係者の環境配慮に関する取り組みの促進、の七つの基本方針を定めて、準備が進められている。講義では、それぞれの例をあげた解説により、細部にわたって環境に対する配慮がなされていることがよく理解できた。
 町田講師からは、実際に会場整備を行うにあたり、掲げられた環境配慮を実践するための具体例をお話しいただいた。重機を大型化し車の走行回数を減らす、コンクリート破砕物のリサイクル、土地改変を最小にするために空中に回廊を設けたグローバルループ、壁面緑化など。また、どうすれば既存の樹木を傷つけずに移植できるか、伐採した樹木から作った大量のチップをどうやって利用するかなど、現場の苦労話もうかがうことができ、たいへん興味深く拝聴させていただいた。
 今回のセミナーに参加して、愛知万博がいかに環境に配慮したものであるかをあらためて認識させられた。
(レポーター:(株)環境科学研究所 大久保樹孝)

<<< BACK
NEXT >>>



TOPに戻る