活動報告

支部報告 111

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■ 九州支部 環境セミナー・レポート 平成18年3月10日
移入外来種の実態、日本の生態系を守るには


法制定の経緯など

講師:
北九州市いのちのたび博物館館長/九州大学名誉教授 小野勇一

オオクチバスの生態と駆除の実際

講師:
秋田県水産振興センター 内水面利用部長 杉山秀樹

 外来生物法は、外来種による生態系、人命および農林水産業等への被害を防止し、国民生活の安定向上に資することを目的としている。
 講演では、外来生物への対応に関する考え方や法規制の効果を上げるために必要な事項などが説明され、法規制や実務においてどのように対処すればよいか理解が深まった。
 セイヨウオオマルハナバチについては、代替を目的とした在来種の増殖への取り組みも進められているとのことであったが、地域性を無視した生物利用による遺伝子撹乱は、在来種の場合でも同様の問題が生じるとの指摘もあり、「経済と環境の両立」を達成するには、まだまだ多くの課題が山積しているものと思われる。真の生態系保全の第一歩として本法律の理解と運用を進めていく必要があると感じた。

 オオクチバスを含むブラックバスは、多くの特定外来生物のなかでも指定種となるまでに大きな社会的反響を呼んだ生物である。講演では、侵略的外来生物としてのオオクチバスの生態的特徴や秋田県における駆除への取り組み、今後の課題などが説明された。
 講演では、行政として「守るべきこと」を明確に捉え、駆除への取り組みの動機付けが非常に強いことが印象的であった。特に、内水面漁業の盛んな地域では、外来種により生活を脅かされる被害者の存在が背景にあるため、きわめて深刻な問題とされている。そして、オオクチバスによる直接的な被害に加え、釣り人の行動・マナーに起因する問題もあるなど、他の特定外来生物とは異なる、広範かつ根深い問題が存在すると思われる。
 講演の冒頭では、ブラックバス駆除への取り組み姿勢における地域格差にふれられたが、九州地域での研究・調査に携わる者としては、今後「守るべきもの」を明確にして積極的に行動していく覚悟を求められていると感じた。
(レポーター:環境テクノス(株) 田頭正樹)


昆虫にみる外来種の実態

講師:
九州大学 名誉教授 三枝豊平

日本の外来植物の起源と今

講師:
岡山大学資源生物科学研究所 助教授 榎本 敬

 従来の輸入農作物等に混在して広まった種に加え、近年では、ペットとして輸入された種が在来種と交雑している事例の紹介が大変印象的であった。
 現在の「外来生物法」では、ペットとして人気のあるカブトムシ・クワガタ類に関する規制はない。昆虫販売業界には産業としてのニーズがあり、また全面的に取り扱いを禁止した場合には、扱いに苦慮した販売業者や飼い主が外来生物を野外に投棄する恐れがあるなどの危険性が考えられることからも、安易な法規制の制定は難しい。
 しかし、現在のように無責任に取り引きをするのではなく、販売・購入における免許資格制度の義務付けや購入者の年齢制限を設ける等、可能な範囲で何らかの対策を実施すべきであるとの考えを持った。

 帰化植物の定義や、古来帰化植物がどのようなルートで侵入してきたかなどのお話をうかがうことができた。こういった外来植物の駆除は非常に難しく、環境アセスメントにおいても、緑化に用いる種の選定など大きな課題があると感じた。また、榎本先生が実施されている種子画像データベースおよびその運用予定に関するお話も大変興味深いものであった。
 今回の講演をお聞きして、従来の外来生物3原則「入れない、捨てない、拡げない」に加え、なぜその原則を守る必要があるのか、外来生物が日本本来の生態系に対してどのような影響を与えるのか、という正確な情報を社会に伝達することが何より重要であると痛感した。
 しかし、たとえ外来生物であっても、個体自体は命ある生き物であり、現在の外来種対策の主流である駆除という行為が一般的に容認されるのは難しく、外来生物について検討すべき課題は非常に多いと感じた。
(レポーター:日本工営(株) 柾木淳子)


■関西支部 第3回セミナー・レポート 平成18年3月15日
環境行政に関する講演(神戸市)と環境創造型施設の視察(神戸空港)

講師:
神戸市環境局環境審査室長 長屋 滋
案内:
神戸市みなと総局技術本部臨海建設課 主査 長谷川憲孝

 神戸市環境局環境審査室の長屋滋室長による「神戸市における環境保全の取り組み」についての講演と、2月16日に開港した神戸空港の環境創造型護岸および人工海浜の現場視察であった。
 長屋室長からは、神戸市の地勢的な特徴と社会・経済情勢の概況や環境質の現状・推移などについて、分かりやすい図表等をもとに詳しく説明していただいた。さらに、法では規定していない事前配慮や事後調査の手続きを規定している神戸市のアセス制度の特徴や神戸空港事業におけるアセスの経過、今後予定されているフォローアップ等に関し具体的な数値や図面を用いて解説していただいた。私自身は、神戸空港のアセスメント業務に携わったこともあり、大変興味深くお話を聞くことができた。
 長屋室長の講演の後、神戸市みなと総局臨海建設課の長谷川主査から、空港護岸での藻場造成や人工海浜の造成を中心とした環境創造に関する取り組みについての講演があった。その後空港島に移動し、長谷川主査ならびに同局臨海整備事務所池本工事第2係長の案内で現場視察を行った。空港島の北西に設置された人工海浜は、すでに水域や砂浜の部分の工事が終了し、植栽工事等の真最中であった。砂浜部は想像していたよりも広く感じられ、開放感あふれた空間となっていた。隣接する緑地とよくマッチし、レクリエーション性の高い大規模な親水公園を目指して整備が進んでいる。
 神戸空港は、環境影響の軽減という従来型の環境対策にとどまらず、市民に開放された水辺や新たな海の環境を創造する「エコアップエアポート」として計画が進められてきたとのことであり、今回視察した人工海浜がその名にふさわしい市民の新たな憩いの場として活用されることが期待される。
(レポーター:国土環境(株) 泉 伸司)

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