活動報告

支部報告 122

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■北海道支部 野外セミナー・レポート 平成21年6月23日・24日
札幌定山渓における水源の仕組みと生ごみ堆肥化の現地見学

<第1日目>

 セミナー初日、ワークショップなどをとおして住民参加型の再整備事業を行い、今春リニューアルした札幌市旭山記念公園を経由し、定山渓ダム資料館を訪れた。ここでは、北海道開発局石狩川開発建設部定山渓ダム管理支所長の荒川氏及び管理係長の宮原氏より、定山渓ダムの役割や構造について説明を受け、資料館内でダム工事の経過やダム周辺の自然環境などについて学んだ。
 参加者達は、定山渓ダムのさっぽろ湖を一望できる展望台で昼食をとった後、北海道森林管理局石狩森林管理署流域管理調整官の杉内氏の案内で、定山渓国有林内の植栽地を見学した。この場所に植栽された樹木は、札幌市民が大通公園で「カミネッコン(再生紙ダンボールから作られた育苗ポット)」を用いて作った苗木であり、北海道森林管理局、札幌市、札幌市民などが連携し、豊かな水源の森づくりを行っているとのことであった。
 また、これらの樹林は、画一的な単相林ではなく、植栽地周辺の植生を考慮し、トドマツ、アカエゾマツ、ミズナラ、シラカンバなどの多様な樹種で構成されていることに非常に感銘を受けた。
 その後、昭和51年から導入された豊平峡ダム電気バスに乗車し、豊平峡ダム及び同ミュージアムを見学し、札幌市と豊平川との関わりやダム周辺の自然環境などについて学んだ。続いて、札幌市定山渓自然の村に行き、キャンプ場主査の志賀氏から説明を受けながら施設内を視察した。この村は、四季を通じて家族で自然と触れ合うことができ、小枝や木の実などを使った工作会やネイチャーウォッチングなどの自然体験プログラムが非常に充実している施設であった。
 夜は、ナイトセミナーと称して、宿泊先の定山渓グランドホテルに定山渓観光協会事務局の土館次長をお招きし、定山渓地区の地域振興についてお話していただいた。

定山渓ダムにて
定山渓ダムにて

<第2日目>

 札幌の奥座敷「定山渓温泉」では、ホテル・旅館の事業者に生ごみを分別してもらい、毎日収集し、石狩市の施設で堆肥化をしている。この堆肥を使って定山渓近郊の農家が農産物を作り、ホテル・旅館が食材としてお客さまに提供するという、地域循環型社会を目指した先進的な取り組みを行っている。
 これらの取り組みを確認するため、朝食後宿泊したホテルのごみ収集場所に行き、ごみの分別・収集状況を見た後、生ごみから作った堆肥を実際に使用している定山渓近郊の果樹園を視察した。
 しかし、現在この堆肥を使用している農家の数はきわめて少なく、参加農家の拡大や運搬費などのコスト面が課題とのことであった。
 最後に、札幌市水道記念館に行き、水を浄化する仕組みを展示パネルや簡単な実験で学んだ後、普段なかなか見ることのできない浄水場の内部を見学した。
 今回のセミナーをとおして、水源の森→ダム→浄水場といった水の循環を理解することができたほか、生ごみを循環させる先進的な取り組みも見ることができ、非常に有意義なセミナーであった。
(レポーター:(株)セ・プラン 岡本健太郎)

■北海道支部 技術セミナー・レポート 平成21年7月8日
鳥、ブタそして新型インフルエンザ

講師:
北海道大学大学院獣医学研究科微生物学教室 准教授 迫田義博

 環境調査で野外に出ることの多いわれわれにとって、本テーマのキーワードの一つ、鳥インフルエンザは特に関わりの深い内容である。講演は次の3部から構成された。

 1.インフルエンザウイルスとは
 2.鳥インフルエンザとは
 3.すべてのインフルエンザの先回り対策

 1部では、インフルエンザウイルスの構造、ウイルスの増殖過程、動物ごとのレセプター(受容体)の種類と共通性等の説明とともに、ウイルスと細菌の違い、つまりサイズが異なること(ウイルスがはるかに小さい)、ウイルスは生きているものに寄生するのに対して、細菌は死んだものに寄生するという基本的なことを確認した。
 2部では、鳥インフルエンザについて、WHOの情報等による2003年10月以降の全世界における分布状況が示された。続いて高病原性及び低病原性鳥インフルエンザウイルスの増殖部位と症状の比較がなされ、高病原性では呼吸困難や神経症状等により75%以上が死亡するのに対して、低病原性では弱い呼吸器症状で推移し、死亡に至らないという違いが示された。また、2008年に北海道及び秋田で発見されたオオハクチョウの死体の病理所見や分離されたウイルスの遺伝子系統が紹介された。
 3部では、今後の対策としてのウイルスライブラリーの構築と利用及び対策を誤らせている10の迷信について説明があった(迷信の一つ:高病原性鳥インフルエンザウイルスは殺人ウイルスである)。
 講演を通じて、これまで一部の知識や情報が突出し、科学的な認識が形成されていなかったと感じたが、この点はおそらく多くの参加者に共通していたのではないかと思う。最後に野外調査での心得として、鳥の死体を発見した場合は手袋をしてビニール袋に入れて廃棄することでOK、というアドバイスをいただいた。
(レポーター:(株)ドーコン 三浦和郎)

■北海道支部 技術セミナー・レポート 平成21年7月8日
低炭素社会の構築に向けて

講師:
環境省北海道地方環境事務所環境対策課 課長補佐 大川正人

 今回のセミナーは、ポスト京都の国際動向とわが国の地球温暖化対策についてであり、先日、麻生総理より発表のあった国内の地球温暖化対策としての中期目標ならびに長期目標を達成するための主な施策の概要についてご講演をいただいた。
 2005年2月に発効した「京都議定書」の第一約束期間(2008年から2012年)の最終年度を目前に控え、世界は今、地球温暖化防止に向けた新たな枠組みづくりや、話し合いを始めたところである。わが国においても去る6月10日に2020年の温室効果ガスの削減目標、いわゆる中期目標が決定された。今回の中期目標では、現状2005年より15%削減、90年と比べ8%削減するもので、ほぼ90年並みの水準に戻すという京都議定書の目標よりもはるかに厳しい数値である。またこの目標は、長期目標達成(2050年までに60〜80%削減)につながるものとして設定されたものであるが、温室効果ガスの大幅削減への技術革新が見いだせていない現状から40年後の話であり、長期目標といってもそれほど遠い話ではないと感じた。
 地球温暖化が進む現在の状況下において、目標を緩めることは地球温暖化の根本的な解決策にはなり得ない。わが国が定めた15%削減という数字は、EUの13%(90年比20%)やアメリカの14%(90年比±0%)の削減目標とほぼ同じ水準の削減幅のように思われるが、アメリカもEUも、海外から購入する排出クレジットを含んだ数字であり、それを含まない日本の目標のほうが実質的な削減の深さを持つものである。
 今後、日本政府はこうした日本の立場について、国際的な理解を求めていく必要があると考える。また、コンサルタントの役割としては、関係機関と連携しながら「Think Globally Act Locally」の言葉を肝に銘じ、業務に携わっていきたいという思いを強くした。
(レポーター:北電総合設計(株) 石川志保)

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