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講師:兵庫県立公害研究所 主任研究員 住友聰一
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国道43号は、1963年以来阪神間の大動脈としての機能を果たしてきた自動車専用道路であり、交通量も年々増加して、1990年には約11万台に達している。当時の当該沿線における騒音レベルは80dBを超え、旧環境基準はもちろん、旧要請限度も超える状況を呈し、沿道住民からは強く環境改善を求められてきた。その対策として、従来から車線制限、緩衝緑地帯の設置、沿道バッファビルの建設などの措置が講じられたが、震災後の復旧工事に関連して、現状では最高水準といわれている排水性舗装、遮音壁等新しい道路構造対策が施工されたとのことである。
並行して1976年には道路公害裁判が起こされ、1995年に最高裁判決として「敷地におけるLAeqが65dB以上であるならば距離の遠近にかかわらず、距離が道路端から20m以内はLAeqが60dBを超えるならば、道路からの騒音が受忍限度を超える」という裁定が下された。その後、国は、道路環境対策を早急に進めるとともに、騒音の評価法(LAeq)についても鋭意検討し、環境基準改正への弾みとなった。
1998年、新環境基準が公布され、測定評価法が改正された。翌99年、新しい道路構造対策が施工されて後、沿道環境の騒音調査が実施されたが、その結果は遮音壁背後での点的評価では新環境基準をクリアできるものの、面的評価では難しいといわれている。
交通騒音対策としては、自動車騒音対策、道路構造対策、交通流対策、沿道環境整備対策等が考えられるが、今日に至るまでこれらの施策が繰り返し実施されてきたことを考えると、今後はよほど思い切った交通量削減などの交通流対策か、沿道環境整備等による土地利用の施策を強力に進めてゆく必要があると考える。
今回の講演「国道43号騒音の歴史と新環境基準」の講師、住友先生は、兵庫県43号騒音対策委員会委員として、活躍されてきた先生であり、お話しされた過去の事例は、私たち環境調査に携わる者にとっては今後の調査業務に非常に役立つものであり、この研修会に参加できたことは有意義であった。
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