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講師:和歌山大学システム工学部環境システム学科 教授 平田健正
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本講演は、地下水汚染対策の技術的なアプローチを中心にしたものである。地下水汚染の事例として、静岡県の牧ノ原台地と岐阜県各務原市の、いずれも硝酸性窒素の地下水汚染と対策事例を中心にご紹介いただいた。
硝酸性窒素の汚染原因は、農地への施肥によるものである。事例によれば、1,000kgの窒素を散布すると、約半分の500kgは地下に浸透することが判明した。そして、このケースでは地下水における濃度は50ppmになっている。地下水汚染の被害は、硝酸性窒素の増加による直接の健康被害よりも、pHの低下によって粘土鉱物に含まれるアルミニウムの溶出による影響が大きく、被害は二次的である。牧ノ原台地のため池では、アルミニウム濃度で10ppmを超え、植物プランクトンが生育できない濃度までになっており、生態系への被害は深刻である。各務原の事例では、1980年代に汚染が発見され、硝酸性窒素が10ppmを超えたため、飲料水として制限が行われた。
実際の対策方法は、脱窒菌による脱窒作用を応用するもので、サイトを嫌気的にする必要があり、ここでは還元剤として鉄粉を使用した。設備は、透過性地下水浄化壁を用い、さらに鉄と砂れきを混ぜる方法を用いた。また、微生物活性を高める必要から有機物(生分解プラスチック)を投与した。
汚染の修復技術は、媒体をいかに管理できるかによるが、現在の環境基準だけで汚染をコントロールできるかは疑問であると考える。また、汚染の回復には多くの時間と多額の費用が必要とされており、汚染対策の難しさを改めて実感した。
さらに、地下水汚染は、飲料用水や農業用水のみならず生態系に与える影響も大きく、一度被害が発生すると事態は深刻となる。対症療法的であるが、今後は土壌汚染も含めての汚染の早期発見と未然防止がわれわれに求められる課題であると思う。
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