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基調講演:
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福岡大学法学部 教授 浅野直人
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パネリスト:
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埼玉県環境防災部環境推進課 主幹 江原洋一
神戸市環境局環境審査室 主査 都倉亮道
横浜市環境保全局調整部環境影響審査課 課長補佐 石丸 潔
環境省総合環境政策局環境影響評価課 課長補佐 小森 繁
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本シンポジウムは、戦略的環境アセスメント(SEA)の第一人者による講演と、すでにこの考え方を導入されている先進的な自治体の方々をパネリストに迎えて開催された。環境省の小森課長補佐は、浅野先生の招請に応じて急遽ご参加くださった。
講演内容およびパネリストからの貴重な発言を要約して報告する。
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◆基調講演
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現行の環境アセスメント(EA)は、事業の許可を受けるために、事業によるインパクトについて、項目別に環境基準の遵守を図ることに重点がおかれていた。しかし、本来のEAは、情報を的確に把握し、それに基づきどのような環境配慮を実施するのか、また、政策・計画等の意思決定をどうするかを予算・技術的範囲で考えるものである。
この点で、EAの上位施策として平成12年12月に国の環境基本計画が改定され、持続可能な社会を目指すことが明確にされたことを再確認すべきである。このため、EAについても現行の手続き的手法から、あらゆる場面で環境配慮を織り込み、あらゆる政策手段を活用し、あらゆる主体が参加し、あらゆる段階で環境について取り組むものとしていく必要が生じてきた。この社会的要請に応えていくのがSEAであり、すでに国内外で実施されている。
SEAとは、政策、計画、プログラムを対象とする環境アセスメントであり、2つの意義がある。一点目は、政策や計画等の策定(意思決定)と、環境への配慮を統合する点である。つまり、政策や計画等の策定段階で、環境配慮を組み込むことを意味する。二点目に、従来の事業の実施段階でのEAの限界を補う点がある。たとえば、SEAにより広域的な環境保全対策の策定や当該地域の累積影響を評価することが可能となる。
SEAの運用にあたり、制度面、手続き面、評価面での原則がある。制度面では、環境面に焦点を絞った独立した手続きで、環境の評価および評価結果による意思決定への反映を行うシステムの確立が必要となる。手続き面では、SEAの実施主体は計画等の策定者であり、情報を広く得るために公衆や専門家の関与は望ましいものの、必ずしも参加が前提ではない。一方、環境部局の審査者による評価は必須となる。これにより評価の妥当性を高めていく必要がある。また、評価面では、立地についての複数案(実行可能でかつ環境保全戦略上で意味ある選択肢)による評価が必要である。SEAでは「ある環境基準を達成できるかどうか」といった単一基準による評価を行うものではないため、複数案での比較を行うことが評価になる。そのため、上位施策である環境基本計画等で環境ビジョンが明らかであることが、SEAの運用上望ましい。
以上のように、今後に多くの課題を予見させる、示唆に富む有意義な講演であった。
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◆パネルディスカッション
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・江原/埼玉県では、総合的環境アセスメントと名づけ、平成12年度から検討を進め、同14年度から実施要網等の運用を開始する予定である。
・都倉/神戸市では、環境影響評価等に関する条例制定時に、事前配慮の規定(平成10年7月から適用)を設け、この規定に基づき事前配慮に関する基本構想を策定している。
・石丸/横浜市では、環境基本条例により開発事業等の計画立案段階において、環境面からの配慮について市と計画者が調整を行うことになっている。
・小森/環境省は、勉強会レベルではすでに平成12年8月に成果を出して、理論編は一応終了している。今後は個別分野ごとの方法論等の検討を行い、ガイドラインの策定を目指している。このため、国や地方自治体での実績づくりが急務となる。具体的には、省庁再編により環境省に廃棄物関係の事業部局が組み込まれたため、廃棄物関係の事業等についてSEAを導入できるかについて勉強中である。
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