活動報告


支部報告 93

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■中部支部 第2回技術セミナー・レポート 平成13年10月2日
「巨大地震に関する最新情報と地震対策について」

講師:富士常葉大学環境防災学部長 井野盛夫
「静岡空港建設計画について」

講師:静岡空港建設事務所長 永田司良
 中部支部は平成13年10月2日、第2回技術セミナーを浜名湖ロイヤルホテルにおいて、多数の参加を得て開催した。
 井野講師からは、東海地震予知研究の経緯、地震のメカニズム等に関する最新の知見および地震対策の現状について講義していただいた。
 静岡県近海では東側のプレートの下に西側のプレートが沈み込んでいる。この2つのプレートが地下で固着した部分(固着域)が外れて東側が跳ね上がると東海地震が起こるとされている。従来の地震予知は、数日前から現れるという固着域の破壊の前兆が対象であったが、現在は予知ができたとしても地震開始の数分前が限界であるという学説が主流になっているという。この短時間に、どこまで対策を打つことが可能か、ということが被害の規模を決定づけるという話は、たいへん興味深いものであった。
 さらに、静岡県による地震発生のシナリオおよび被害想定、応急対応、復旧への考え方についても紹介された。シナリオ型想定は、県では今回初めて採用されたということで、各種の被害およびそれに対する対策を時系列的に関連づけ、阪神大震災の知見なども加味して作成されたものである。われわれにとっても、普段忘れがちである地震への備えについて考える良い機会となった。
 永田講師からは、2006年に開港が予定されている静岡空港の建設計画について、現場で実際に建設にあたっている空港建設事務所長の立場から、建設計画および進捗状況についてご紹介いただいた。
 空港建設にあたり、環境保全に関しては、専門家、地元関係者および事業者で、オオタカをはじめとする自然環境を保全するためのシステムが構築されている。その他、空港の必要性、利用客および収支の見通し、将来的な可能性や事業を進めるうえで現在直面している問題についてもうかがった。業務上、環境アセスメントにかかわる機会が多い参加者にとって、このような現場の声を直接うかがうことができたことは、たいへん有意義であったと感じている。
(レポーター:アジア航測(株)中山里美)

■中部支部 野外セミナー・レポート 平成13年10月3日
「浜岡発電所、環境創造研究所、静岡空港建設地の見学」

 中部支部は、平成13年度第2回技術セミナーと野外セミナーを10月2・3日の2日間にわたり開催した。野外セミナーは、10月3日に行われ、中部電力(株)浜岡原子力発電所、国土環境(株)環境創造研究所および静岡空港建設予定地を見学した。
 浜岡原子力発電所では、5号機の増設工事が行われており、5号機建設までの経緯や建設残土の公共事業への利用、地震対策等について説明を受けた。その後、米国同時多発テロにともなう厳戒態勢のなか、4号機の制御室、原子炉格納施設の見学を駆け足で行ったが、原子力発電所の徹底した安全管理態勢を体感できた。窓がなく、外とのつながりが遮断されている発電所内には、1か所だけ太陽の光を感じ取ることができる場所があり、そこにあった花に和やかな気分となった。
 環境創造研究所では、ダイオキシンの分析施設、藻場造成実験施設等を見学した。とくにダイオキシン分析施設については、前処理が自動化されており、みんな興味をもって解説に聞き入っていた。
 静岡空港建設地は、お茶の産地として知られている牧ノ原台地から東に伸びる島田市と榛原町にまたがる尾根部に位置している。現地では、前日の技術セミナーで講演をしていただいた静岡県静岡空港建設事務所永田司良所長の案内で見学を行った。現在、造成工事はストップしているとのことであったが、私たちが見学しているとき、観光バス数台で多くの見学者が訪れ、静岡空港建設に対する関心の高さがうかがえた。
(レポーター:国土環境(株)吉村友利)

■九州支部/福岡市 共催シンポジウム・レポート 平成13年9月3日
「戦略的環境アセスメントシンポジウム」

基調講演:
福岡大学法学部 教授 浅野直人
パネリスト:
埼玉県環境防災部環境推進課 主幹 江原洋一
神戸市環境局環境審査室 主査 都倉亮道
横浜市環境保全局調整部環境影響審査課 課長補佐 石丸 潔
環境省総合環境政策局環境影響評価課 課長補佐 小森 繁

 本シンポジウムは、戦略的環境アセスメント(SEA)の第一人者による講演と、すでにこの考え方を導入されている先進的な自治体の方々をパネリストに迎えて開催された。環境省の小森課長補佐は、浅野先生の招請に応じて急遽ご参加くださった。
 講演内容およびパネリストからの貴重な発言を要約して報告する。
◆基調講演
 現行の環境アセスメント(EA)は、事業の許可を受けるために、事業によるインパクトについて、項目別に環境基準の遵守を図ることに重点がおかれていた。しかし、本来のEAは、情報を的確に把握し、それに基づきどのような環境配慮を実施するのか、また、政策・計画等の意思決定をどうするかを予算・技術的範囲で考えるものである。
 この点で、EAの上位施策として平成12年12月に国の環境基本計画が改定され、持続可能な社会を目指すことが明確にされたことを再確認すべきである。このため、EAについても現行の手続き的手法から、あらゆる場面で環境配慮を織り込み、あらゆる政策手段を活用し、あらゆる主体が参加し、あらゆる段階で環境について取り組むものとしていく必要が生じてきた。この社会的要請に応えていくのがSEAであり、すでに国内外で実施されている。
 SEAとは、政策、計画、プログラムを対象とする環境アセスメントであり、2つの意義がある。一点目は、政策や計画等の策定(意思決定)と、環境への配慮を統合する点である。つまり、政策や計画等の策定段階で、環境配慮を組み込むことを意味する。二点目に、従来の事業の実施段階でのEAの限界を補う点がある。たとえば、SEAにより広域的な環境保全対策の策定や当該地域の累積影響を評価することが可能となる。
 SEAの運用にあたり、制度面、手続き面、評価面での原則がある。制度面では、環境面に焦点を絞った独立した手続きで、環境の評価および評価結果による意思決定への反映を行うシステムの確立が必要となる。手続き面では、SEAの実施主体は計画等の策定者であり、情報を広く得るために公衆や専門家の関与は望ましいものの、必ずしも参加が前提ではない。一方、環境部局の審査者による評価は必須となる。これにより評価の妥当性を高めていく必要がある。また、評価面では、立地についての複数案(実行可能でかつ環境保全戦略上で意味ある選択肢)による評価が必要である。SEAでは「ある環境基準を達成できるかどうか」といった単一基準による評価を行うものではないため、複数案での比較を行うことが評価になる。そのため、上位施策である環境基本計画等で環境ビジョンが明らかであることが、SEAの運用上望ましい。
 以上のように、今後に多くの課題を予見させる、示唆に富む有意義な講演であった。
◆パネルディスカッション
・江原/埼玉県では、総合的環境アセスメントと名づけ、平成12年度から検討を進め、同14年度から実施要網等の運用を開始する予定である。
・都倉/神戸市では、環境影響評価等に関する条例制定時に、事前配慮の規定(平成10年7月から適用)を設け、この規定に基づき事前配慮に関する基本構想を策定している。
・石丸/横浜市では、環境基本条例により開発事業等の計画立案段階において、環境面からの配慮について市と計画者が調整を行うことになっている。
・小森/環境省は、勉強会レベルではすでに平成12年8月に成果を出して、理論編は一応終了している。今後は個別分野ごとの方法論等の検討を行い、ガイドラインの策定を目指している。このため、国や地方自治体での実績づくりが急務となる。具体的には、省庁再編により環境省に廃棄物関係の事業部局が組み込まれたため、廃棄物関係の事業等についてSEAを導入できるかについて勉強中である。
(レポーター:(財)九州環境管理協会 平川法義)

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