活動報告

支部報告 95

■技術士第二次試験受験講習会(関西支部) 平成14年4月9日
関西支部主催「技術士第二次試験受験講習会」の概要

 技術士法および同施行規則等の一部が改正され、平成13年度から新しい制度による技術士第二次試験が行われている。関西支部では、4月9日大阪科学技術センターで受験講習会を開催し、43名が参加した。題目は、これまで多くの技術士を育ててこられた新津誠先生(国土環境(株))による、例年どおりの「受験申し込みと受験準備・技術士論文の書き方」について、また、初めて新制度下の試験問題で受験した平成13年度 合格者3名による「答案作成の要領・合格体験記」であった。
 建設環境合格の正田孝明さん(三洋テクノマリン(株))からは、過去、筆記試験に合格後、面接試験で落ちた経験のくやしさをバネにして挑戦した今回の体験談。受験対策を中心に、建設環境にとどまらず広く建設分野全般に関しての見識と、自らの意識、表現力を向上させることが合格の必要条件とのお話を熱っぽく語っていただいた。
 環境測定合格の川西正子さん(国土環境(株))からは、勤め先が同じご主人と幼稚園に通うお子さまを持つ、共働きの主婦が、技術士受験に挑戦した体験談を聞かせていただいた。13年度試験から始まった15問の5択問題の詳細な分析と対策のお話では、鳥類調査が専門のご主人との会話から仕入れた知識が役に立ったこと、幼稚園の保母さんとの連絡日記を使って、毎日、時間と字数を決めて、起承転結のある文章を鉛筆で書く練習をしたことなど、環境に関する広い知識を得る努力、時間を有効に使う努力をなさったことに感心させられた。
 総合技術監理部門(建設環境)の合格体験については、筆者が担当した。この部門は13年度新設されたため過去の問題もなく、準備期間中、そもそもこの部門で求められる能力とは何かを暗中模索し続けたことや、筆記試験では会社の事務所で日常実施しているISO9001、ISO14001、労働安全衛生の活動に関する経験と知識が役立ったこと、また、面接試験では業務トラブルの顧客緊急対応の経験がおおいに役立ったことを話した。
 今年度は、一次試験に合格していなくても受験可能な、経過措置で受験できる最後の二次試験なので、最後まであきらめずにがんばってください。全員の合格を祈念します。


■表−1 平成13年度技術士第二次試験結果(一部)
技術部門
受験者数(人)
合格者数(人)
対受験者合格率(%)
建  設
16,483
3,060
18.56
水  道
1,679
236
14.06
衛生工学
877
126
14.37
農  業
1,071
236
22.04
林  業
324
23
7.10
水  産
150
16
10.67
情報工学
630
52
8.25
応用理学
1,151
87
7.56
環  境
800
79
9.88
総合技術監理
7,944
2,267
28.54

(レポーター:東レエンジニアリング(株)石瀬壽一)

■関西支部/植生学会/兵庫県立人と自然の博物館 共催シンポジウム・レポート 平成14年5月25日
「植生データのデータベース化とその有効利用」

基調講演
  環境省自然環境局生物多様性センター長 笹岡達男
  神戸大学発達科学部 助教授 武田義明
  独立行政法人森林総合研究所 植物生態研究領域チーム長 田中信行
  鳥取大学農学部 助教授 日置佳之
  兵庫県立人と自然の博物館 流域生態研究グループ研究員 三橋弘宗

パネリスト
  基調講演講師5名
  岡山理科大学総合情報学部 教授 波田善夫
  環境設計(株)システム開発室 室長 永野正弘
  (株)関西総合環境センター環境共生部 課長 中西收

 植物社会学的方法(Braun-Blanquet 1964)による植生データは、地域の自然環境保全や生物多様性保全、さらには各種生態学研究の基礎資料として重要な情報を提供してきた。
 本シンポジウムは、情報化社会の発展に伴い、国内外に膨大に蓄積されているこの植生データのデータベース化とその有効利用が、今後の植生学の発展、自然環境保全にとって重要な課題であることに鑑み、データベース化に向けての課題と問題点の整理、応用分野での有効利用の可能性の探求を主旨として開催された。
 奥田氏(植生学会企画委員長)を座長とする基調講演は、次の5題で行われた。
 笹岡講師による「自然環境保全基礎調査における植生データ整備の経緯と現状」では、環境省が1973年以来実施してきた「自然環境保全基礎調査」の中でも「植生調査」に最も調査努力が投入され、現存植生図は第1回調査の1/20万、第2〜5回調査の1/5万の作成・部分修正を経て、アセス法制定後の第6回調査では1/2.5万への全面改訂とともに、植生凡例の大、中、小3区分による利用目的に応じた整理・再編の容易化、全国的精度管理の充実、現地調査データのデータベース化による共有・活用の促進が図られつつあること等が紹介された。
 武田講師による「兵庫県における植生データベースの構築とその活用」では、兵庫県においては鈴木博士他の先生方による1950年代からの数多くの植生データの活用のため、神戸大学と兵庫県立人と自然の博物館によりデータベース化が図られていることとデータベース管理上の問題点や活用方法に関する講演があった。
 田中講師による「植生データベースを用いた地球温暖化の影響予測研究」では、森林総合研究所が実施した異なる2つの植生データベース(環境省の三次メッシュ植生データベース、各種資料をもとに独自に構築した植物社会学データベース)を用いたIPCCの将来予測に基づく温暖化影響予測研究の紹介とそれぞれのデータベースの特徴や問題点に関する講演があった。
 日置講師による「植生調査データを用いた動物の生息環境評価」では、1/2.5万植生図(環境省の1/5万植生図をもとに空中写真と現地踏査で作成)と1/2千植生図(空中写真と現地踏査で作成)を用いてそれぞれ鳥類の生息適地図を作成した研究の紹介及びまとめ・課題の講演があった。
 三橋講師による「博物館の自然環境情報を活用すると何が出来るのか?」では、環境アセスメントにおける自然環境情報データベースの必要性とこれに対し地域の自然史博物館のデータバンク機能が果たすべき役割や生物分布情報と各種環境情報図の重ね合わせによるポテンシャルハビタット図等の解析事例紹介の後、このような各種評価図は今後戦略的環境アセスメントや合意形成への活用・貢献が期待されるとの講演があった。
 パネルディスカッションは、永野氏による「滋賀県植生分布資料のデータベース化」の紹介、中西氏及び波田氏による植生データベース化に関する意見、課題等の提示があった後、座長の星野氏(東京農工大学農学部 助教授)の進行のもとに行われた。
 当シンポジウムでは植生データベース化に関する問題・課題等として、(1) データの信頼性の確保(種名(同定含む)、調査方法、随伴データの完全性)、入力情報の範囲及びフォーマットの統一、(2) データベース化ソフトの選定、(3) 公開における未発表データの位置付け、貴重種データの公開と保全の関係、調査地所有者との関係、(4) データベースの管理及び継承は誰がどこで行うか等多くが提示された。
 環境アセスメントに携わる者としては、これらの課題が解決され、事業候補地からの適地の選定、生態系の予測・評価、自然環境保全対策検討他で活用が期待される評価図を、植生を含む自然環境情報の公開されたデータベースを用いて容易に作成できる日が早期に訪れることを願いたい。
(レポーター:(株)関西総合環境センター 三郎丸隆)




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