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北海道支部では、ラムサール条約の登録湿地であり、自然再生事業のモデルケースとして注目されている釧路湿原や、豊かな自然あふれる阿寒国立公園を見学した。平成14年9月5・6日の両日、約30名が参加した。
◆1日目
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第1日目は環境省野生生物保護センターにおいて、釧路湿原の環境保全に熱心に取り組んでおられる(財)北海道環境財団の辻井達一先生に、釧路湿原の変遷や自然再生事業に向けた取り組みなどについてご講演いただいた。
辻井先生は釧路湿原の河川環境保全に関する検討委員会の委員長も務められており、湿原のあるべき姿、具体的な施策について、これまでの議論の経緯にも触れながら大変わかりやすく説明していただいた。釧路湿原では、経済活動の拡大にともない湿原面積が著しく減少し、植生もヨシ−スゲ群落から乾燥に強いハンノキ林に変化しているそうである。これらの環境変化は現在も急速に進んでおり、土地利用が急速に展開する以前の水準に戻すことを目標に、水辺林の整備や地下水制御による湿地の再生など、流域の視点からみた総合的な対策が急務であることを力説しておられた。
講演会場であった野生生物保護センターでは、釧路湿原に関するさまざまな情報が展示されているが、さらに、現在行われている取り組み状況や研究結果などをリアルタイムに公開し、環境教育の場として一層活用してもらいたいと感じた。
次に、国の特別天然記念物「マリモ」で有名な阿寒湖畔にある「前田一歩園財団」(http://www.ippoen.or.jp/)を見学した。当財団は、昭和58年に設立され、自然保護に関する学術調査研究、普及啓発、人材育成などを行っている機関である。
前田一歩園財団の所有地は、阿寒湖を取り囲むように広がる約3,900haにも及び、そのほとんどが森林で占められており、また全域が阿寒国立公園特別地域として指定され、鳥獣保護区と保安林の重複指定を受けている地域でもある。
ここでは、理事長のご好意により園内を案内していただき、樹木の変遷、伐採計画など森林管理の方針について、興味深いお話を聞くことができた。また、動物との共存という観点から、とくにエゾシカが樹皮を食べることによる樹木被害が深刻で、餌付けによる管理もやむを得ないとのことであった。
野生動物への餌付けには賛否両論あると考えられるが、樹木被害防止には相当の効果をあげているそうである。
1日目の予定の視察が終了し、阿寒湖畔のホテルに到着後、懇親会が開催された。日頃会う機会のあまりない、同業の技術者が議論を交わすことのできる貴重な場であった。
懇親会終了後、私は同僚とともに阿寒湖畔の散策に出かけた。湖畔周辺のおみやげ屋では、皆さんご存知のサケをくわえた木彫りのクマのほか、最近はシマフクロウが人気だとか!また、大木をくりぬいた2m以上もあるクマが数百万円で販売されていたが、とても私の家には飾る場所がありません。
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◆2日目
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2日目は湿原内にある雪裡樋門地区を見学した。ここは湛水によって地下水位を上昇させ湿原植生への影響について実験を行っている地区である。スケールの大きい実験地であり、湿原植生の制御手法の確立に大いに貢献するものとして期待される。
当日はあいにくの雨であったが、車中で水質や植物、地質などさまざまな分野を専門とする参加者による議論が白熱し、一層の技術向上につながったものと考える。
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