活動報告

支部報告 98

<<< BACK
NEXT >>>
■関西支部 第2回研究集会レポート 平成14年12月6日
「JEAS研究部会の研究成果報告」と「関西支部会員の研究活動事例発表」

 研究集会のはじめに、JEAS二宮章会長による「今後の協会運営について」の講話をうかがった。
 JEASは平成15年1月に創立25周年を迎える。はじめの10年を創生期、中10年を発展期、そして今を安定期ととらえることができる。これまでは、アセスメントに携わる会員の教育と技術レベルの向上を目指し、アセスメントの発展と定着に寄与してきた。今後を第二の創生期として再度、現状認識をし、アセスメントの信頼性の向上のための研修制度の確立、研究活動など、新しい取り組みをしていきたいとのことであった。
 私は入社まもなく、環境アセスメントの仕事をしていても、目の前の業務で精一杯であって、業界全体を見てはいなかった。今回の講演を聴いて、業界全体の目標や目指す方向が理解できた。また、私たち若い世代に必要なものはアグレッシブな姿勢だと感じた。
 JEAS研究部会の研究成果報告は、JEASニュース95号に詳報されているので、その内容レポートは省略し、関西支部会員の研究活動事例発表を下記に紹介する。

◆「オイカワによる水質汚濁指標について」
 環境科学(株)三島隆伸
 魚類は水生生物の中では大きな移動力を有し、水質との関連性も不明瞭なため、一般的には魚類相からの環境評価は行いにくいが、三島氏はあえて河川環境と魚類相の関係について解明を試みられた。比較的環境概要のとらえやすい大阪府石津川水系を対象として魚類相調査、河川環境調査が実施された。
 石津川水系における魚類相調査から、とくに水系全体の魚類相が貧弱で、遊泳魚、底生魚、水際・障害物・植物を利用する魚のバランスが一部上流を除いて悪く、なかでもオイカワに関しては、分布が上流に偏っていることが明らかとなった。河川環境調査より、落差工が多く、魚類の移動の妨げとなっており、下流域では広範囲にヘドロが堆積していることが明らかとなった。
 三島氏は、一般的に河川中・下流域に広く分布するオイカワが、生態特性に反して上流に偏っていることに注目した。環境面の検討により、汚濁負荷が河床をヘドロ化し、砂礫底で産卵するオイカワの生息域を制限していると推測した。
 一般的には、環境評価の指標となりにくい魚類でも、生態特性や生息環境の検討により指標となり得ることがわかった。今回の事例では遊泳魚であるオイカワを取り上げたが、河床状況と関係の深い底生魚についても同様かそれ以上の因果関係が考えられることから、今後は底生魚についても調査・検討していただきたい。
◆「地中性生物の調査について」
 環境科学(株)森 正人
 これまで環境影響評価の生物調査は、主に地上に生息・生育するものを対象として行われてきており、地中性の生物にはほとんど着目されていない。しかし、環境省レッドリストをはじめ都道府県単位のレッドデータブックでも地中性昆虫が多く選定されており、これらに対する現況調査の必要性がますます高くなると考えられる。
 代表的な地中性生物のチビゴミムシ類は分布域が極限され、研究も十分でないため、あらゆる地域で未記載種が発見される可能性が高い。実際に地中性チビゴミムシの存在が事業に対して問題となった例が各地でみられ、和歌山県のメクラチビゴミムシの例など一部はマスコミでも報じられている。
 チビゴミムシの名前さえ知らなかった私にとって、お見せいただいたスライドの各種チビゴミムシは、皆一緒に見えた。しかし、この小さな地中性昆虫の分野が、今後環境評価において無視できない分野になるであろうと感じた。同時に、扱う研究者や技術者が少なく、これまでの調査事例も数少ないことから、評価が難しいのではないかとも感じた。
(レポーター:国土環境(株) 田中義之)

■関西支部 第3回研究集会レポート 平成15年1月31日
「和歌山県橋本市汚染土壌対策現場見学」

講師:
(株)鴻池組大阪本店土木部工事事務所 所長 高松順一
「汚染土の現地処理における地元住民とのリスクコミュニケーション」

講師:
和歌山県環境生活部環境政策局廃棄物対策課 課長 岩井敏明

 南海電鉄高野線林間田園都市駅から、バスで約15分程度の所に(株)鴻池組橋本恒久対策工事事務所があった。私たちは、工事事務所の2階で、緊急対策時の作業状況ビデオと現状作業内容の説明を受けた後、現場へと案内された。
 ビデオで見た緊急対策時の焼却炉解体工事は、二次汚染を防止するため焼却炉を仮建屋で覆い、その中での作業は密閉型化学防護服とエアーラインマスクを着用しての作業であり、とくに夏場は汗と熱気で大変であったらしい。現在は、1回あたり100トンの汚染土を処理できる電気溶融炉3基を並列に配置して、効率よく作業が実施されている。ISO14001を取得して、周辺環境への影響に対しても、システマティックな環境監視が行われている。
 午後は、橋本市商工会議所へ移動し、岩井課長の講演を受けた。問題の発端から、ダイオキシン類による土壌汚染が発覚するまでの経緯について説明があった。そのなかで、和歌山県は、計画段階から「情報公開と住民参加」を基本に対策を進めてきたことが強調された。浄化方法(電気溶融法)も地元住民が選択した方法(処理施設に煙突がないこと。処理後の廃棄物がガラス固化された状態で安心できる)である。処理対策方法に関して地元住民の理解を得るのに約1年かかったそうである。
 それにしても、心なき産廃処理業者が行った行為に対し、多数の人の貴重な時間と多額の費用が費やされたことには憤りを感じた。
 最後に、岩井課長のご期待に応えられるように、「誠意と熱意」を持って住民のための環境アセスメントを実施していく決意を抱いて橋本市を後にした。
(レポーター:(株)関西総合環境センター 三浦一宏)

■北海道支部 第2回技術セミナー・レポート 平成14年12月13日
「GISのアセスメントへの応用実習」

講師:
酪農学園大学環境システム学部地域環境学科 教授 村野 紀雄
酪農学園大学環境システム学部地域環境学科 助教授 金子 正美


 北海道支部平成14年度第2回技術セミナーは、雪の降りしきるなか、江別市にある酪農学園大学で開かれた。
 セミナーの内容は、酪農学園大学の協力のもと、GISソフトを用いた実習を中心とする初心者向けの講習会で、朝からの金子助教授の講義に始まり、その後、各人ごとに用意されたパソコンを利用しての実習となった。セミナーの参加者は合計で21名、GISのソフトウェアにさわったことがない人から実際に業務でGISを利用している人まで、さまざまであった。
 参加者が多いため、演習テキストをベースとした実習では全体の進行についていけるだろうかと不安に思ったが、一連のソフトウエアの操作はプロジェクターで示されるうえ、講師のほかに4、5人の参加者に対して1人の技術サポートがつくなど、十分な配慮をしていただき、不安を感じることなく受講することができた。
 講習の内容は初心者向けとはいえ、点やポリゴンの入力といった基礎的なものから、最終的にはDEM等のデータを利用して空間解析機能を用いたケースの実習まで含むものだった。北海道を対象としたGap分析を扱った論文や、高解像度の衛星データを紹介していただいたりと、内容の濃い一日を過ごすことができた。
 独学で知識を得ざるをえないことが多いGISの利用とそのソフトウエアの操作について、習熟した方に手伝っていただき、実際にパソコンにさわりながら体系的に知識を得ることができたことには、大きな価値があった。
 今後、今回の参加者などを対象として、解析や事例紹介などを重視し、さらにステップアップした講習会が開催されれば、是非、再参加させていただきたいと思った。
 また、今回は定員を大きく上回る応募があったと聞いたが、参加できなかった人々を対象とした同様の初心者向けの講習会を、今後も続けて開催していただきたい。
(レポーター:(株)ドーコン 畠山拓也)

<<< BACK
NEXT >>>



TOPに戻る