活動報告

セミナー・レポートサマリー 101

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■第2回 定例セミナー・レポート 平成15年9月30日
「市民参画型道路計画について」

講師:
国土交通省道路局 道路環境調査室長 桐越 信

 昨年、市民参画型道路計画プロセスのガイドラインが通達された。新しいガイドラインはPI(パブリックインボルブメント)を導入し、都市計画決定するまでを構想段階・計画段階という二つの段階に分け、各段階における論点を絞ることによって、より円滑に議論を進めていくものである。
 これまでの道路計画プロセスは、上位計画時点での内容はオープンにならず、行政内において内部検討が行われていたため、計画の透明性に欠けていた。それに比べ、今回のガイドラインでは計画の早い段階から市民が参加することにより、客観性、公正さが確保される。また、このガイドラインを策定するにあたっては第三者機関が適度の役割を果たしている。第三者機関の委員の構成については慎重に選定すべきであり、実施形式も計画によって変化させなければならないと考えられる。
 本セミナーで最も印象的だったことは、現在は計画的総合評価が求められており、戦略的環境アセスメントはその一部とすべきという考え方である。政策や上位計画の立案段階で環境への影響を評価・把握し、環境に配慮した計画策定を行っていく戦略的環境アセスメントは、環境配慮に関してのみのものであり、総合的な場面で捉えていくためには計画全体に目を向けるべきということである。それによって、計画がより透明性をもつものとなり、この考え方は市民参画型プロセスの根本的な考え方となっていくと思われる。
 今回あげられた直轄国道における事例は、新しいガイドラインによるものではなく、自発的に行われたものであった。共通認識の形成期に行われたものと計画素案の検討期に行われたものがあった。時期によっても計画の捉え方というものが偏ったものとなってしまう可能性があることから、委員会などを開催する時期の選定も難しいと考えられる。
 質の高い計画を推進するために、詳細を検討した市民参画型プロセスの更新を続け、より良い地域が形成されることを強く望んでいる。
(レポーター:(株)復建エンジニヤリング 高田知枝)

■第2回 定例セミナー・レポート 平成15年9月30日
「バイオマス・ニッポン総合戦略の実現に向けて」

講師:
農林水産省大臣官房環境政策課 資源循環室長 藤本 潔

 最近、バイオマスという言葉をテレビ・新聞報道などで見聞きすることが多くなった。しかし“バイオマスとは?”と聞かれて即答できる人はあまりいないのではないか? 私自身も、コンポスト化のようなイメージしかなかった。今回の定例セミナーは、農林水産省でバイオマス・ニッポン総合戦略の実現に取り組んでおられる藤本氏による“バイオマスとは?”に始まり、利用状況、政府の取り組み、今後の展望まで語る内容であった。
 バイオマスとは、生物資源を表す概念で「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」であり、具体的には、農林水産物、稲わら、もみ殻、食品廃棄物、家畜排泄物、木屑など、エネルギーや新素材として利用できるものである。
 バイオマス利用の利点をいくつかあげると、(1)化石燃料と違い適正な管理がされれば、半永久的に枯渇せずに利用できる、(2)地域的に偏在しない、(3)持続的に管理されれば、大気中の二酸化炭素濃度を増加させない、(4)エネルギーや製品を生産、利用できる、など利点の多い資源である。一方、(1)エネルギーレベルが低い、(2)コストが化石燃料より高い、(3)農林水産物起源ならば、供給に季節性が生じる、などの短所もある。要は持続的な適正な管理のもとにいかに上手に利用していくかである。
 わが国のバイオマスの利活用状況は、決して多いとはいえないのが現状である。また、諸外国では、温暖化防止や農業・農村の活性化に向け国家戦略として農業と結びついたバイオマス利活用の取り組みがなされている。日本では利活用促進のためバイオマス・ニッポン総合戦略として関係府省が連携し、具体的行動計画が立てられたところである。
 今後の利活用に向けた技術開発や利用状況の推移を見守りつつ、日々の生活のなかで、自分の利用しているエネルギー、消費している食料、排出しているゴミなどについて、今一度考えて、バイオマスに対する意識を高めようと感じた次第である。
(レポーター:三井共同建設コンサルタント(株) 坂本健太郎)

■第2回 技術セミナー・レポート 平成15年11月10日
「生態系における定量的解析の試案」〜HEPとの対比により解説〜

講師:
京都大学大学院農学研究科 教授 森本幸裕

 正直なところ、私は環境影響評価法に基づく環境アセスを行ったことがない。ただし、事業の結果としての影響を評価するために、水生生物のモニタリングを行っており、生態系に関する定量的な解析手法については、もともと関心がある。そもそも生態系といっても、系を構成する種が多く存在し、その変動要因も多岐にわたり、生態系に対するある事業による影響のみを厳密に評価することは難しい。
 今回の森本先生の講義では、生態系に関する定量的解析の必要性、米国で行われている生態系の評価手法の事例紹介、さらに生物種群に基づく定量的評価手法の試案の紹介をしていただいた。この試案は、現状の土地被覆図および生物種群の情報をもとに、各生物種群ごとのハビタットの価値を考慮し、事業の代替案の評価を行う手法である。この手法は、希少種、普通種を含めた評価が可能であるという利点を有し、一般に行われている指標種(典型性、上位性、希少性)に基づく生態系への影響評価を補完することができるとのことであった。また、紹介された定量的評価の手法はあくまでもポテンシャルの評価であり、個体数などの評価までは行っていないとのことであった。
恥ずかしながら、定量的評価の手法について、私はこれまで不勉強で何の知見もなかった。このため、講義を受けるまでは「定量的評価の手法のみによって、生態系についての評価ができる。それも定性的ではなく定量的な評価が」、と思っていた。しかし、定量的な評価においても、評価の過程においては主観に基づく判断の要素が含まれており、完全な定量化までには至っていないと感じた。このような生態系の評価手法に関する研究がさらに進み、評価がしやすく、かつその結果について納得性のある評価手法になっていくことを期待する。
講演録報告書(会員のみ) >>>
(レポーター:(株)三菱総合研究所 山本圭介)

■第2回 技術セミナー・レポート 平成15年11月10日
「環境アセスメントにおける景観生態学の活用法」

講師:
広島大学総合科学部大学院国際協力研究所 教授 中越信和

 ここ50年における生物学や生態学の分野での研究は大きな進展をみたが、環境アセスメントにおける「生態系」の調査・予測評価手法に関しては発展途上の段階であり、とくに定量的な解析手法については、ほとんど適用例がないのが実情である。
 今回の講演では、国内外における景観生態学の変遷について、中越先生からご説明いただいた後、生物指標による景観の機能評価の事例紹介をもとに、景観生態学の環境アセスメントへの適用性や今後の課題などについて解説していただいた。
 ある地域に生息する鳥類の調査結果と植生図から、森林の構造および連結性との対応関連を把握・解析することにより、鳥類の移動と森林パッチのコリドー機能について評価した事例、オオタカ営巣木を中心とした景観構造の把握・解析により潜在的な営巣適地を抽出した事例などがある。これらの手法により、生態系保全を目的としたゾーニングなどに関する基礎資料の作成が可能となる。また最近では、種子植物の葉の遺伝子分析により種子と花粉の散布および定着の過程を明らかにすることで、植物個体群の維持機構について考察した事例もある。上記のような詳細データを用いずに比較的簡便に予測評価を行った事例として、道路建設による動物個体群の分断の影響を、一般に公表されている植生図、動物分布図などと改変される区域とを重ね合わせることにより評価したものがある。このような手法により得られた知見をもとに、時間的・空間的スケールを考慮して、景観のモデル化・検証を行うことにより、生態系の定量的な評価へとつながっていくと考えられる。
 今までの多くのアセス書において定性的な評価に留まっていた生物、生態系の項目に、定量的な評価を追加することで、住民にとってわかりやすい内容となるだけでなく、結果に対し説得力を加えるものになる。計画段階における住民との合意形成が重要となっている現在、これらの定量的評価手法は、事業を円滑に進めていくうえで非常に有効なツールになると考える。
講演録報告書(会員のみ) >>>
(レポーター:八千代エンジニヤリング(株) 吉原 哲)

■教育研修委員会 平成15年9月25日・26日
「平成15年度環境アセスメント入門研修会」に参加して

 平成15年度の入門研修会(東京会場)が9月25・26日の2日間、東京・千代田区のルポール麹町において開催された。20代〜50代の約60名が参加し、「日本の環境アセスメント制度」の概要から環境影響評価の対象となる各専門分野のアセスメント手法まで、広範囲にわたり学んだ。
講義は、90分7時限という限られた時間ではあったが、各分野の基礎的知識から具体的事例まで、集中的かつ広範囲に学ぶことができた。とくに専門以外の分野では、普段体系的に学ぶことが少なかったため、非常に有意義な時間であった。また、業務として携わっている自分の専門分野では、日々疑問や問題に感じている点を経験豊かな講師陣に直接ぶつけることができ、具体的かつ的確なご意見をいただくことができた。そして、そのなかから「定量的評価手法の確立」など、これからわれわれが向かっていかなければならない技術的な課題も明らかになり、明日への糧となるディスカッションの時間であった。
1日目には懇親会も行われ、30名以上の同世代の仲間が集った。本研修会のもうひとつの成果は、その仲間との交流であったと思う。そこでは、講義の感想から日々の業務の問題点など活発な意見交流が行われ、環境アセスメントに対し同じ思いを抱えている仲間にも出会い、大いに励まされ、また刺激を受けた。ここで出会った仲間との関係を大切にし、今後も交流を続け切磋琢磨していきたいと思う。
環境影響評価法が施行され、おおむね5年が経過した今、事例の蓄積が進むとともに、多くの課題も明らかになったのではないかと思う。講師陣から現場の声を聞き、よりそのことを実感するとともに、今後その課題を解決するために、技術を積み上げていくのは、ほかでもない我々なのだということを再認識させられた2日間であった。
(レポーター:パシフィックコンサルタンツ(株) 福井晶子)


■教育研修委員会 平成15年12月2〜4日
「平成15年度環境アセスメント実務研修会」

 平成15年度の実務研修会が12月2〜4日の3日間、東京都千代田区のルポール麹町で行われた。今回の研修会は、昨年度まで四つの部門コースに分かれて2日間、中堅者研修として行われていた「部門別研修会」を、環境アセスメントの信頼性確保・向上を図るために、協会独自の認定登録制度を視野に入れながら全面的に見直し、実施したものである。また環境アセスメントの実務経験5年以上の、いわゆる中堅以上の方を対象としたものであり、北海道から九州まで全国から84名の参加者があった。
1日目は両分野に共通する国の環境アセスメント制度や手続き、国および地方公共団体における環境アセスメントの実施事例などについて全員で受講。2日目、3日目は大気質などの生活環境分野と動植物などの自然環境分野の2分野に分かれ、それぞれ環境影響評価に必要な全項目を対象に、全部で17コマの講義が行われた。講師は行政、大学・研究機関などで環境影響評価を実際に担当している専門家の方々にお願いした。今回は今までとは違い、事前に講義の目標到達レベル・内容について協会内部で何回も議論し、先生方との議論を踏まえ、信頼性を確保するために必要な各種技術について講義をしていただいたものである。
そのため、また中堅技術者対象ということもあって、講義の内容は事例に基づく話題が多く、具体的かつ専門的な内容が多かった。研修会終了後には、「合意形成・プレゼンテーション技法等について」の講演も行われ、環境アセスメントの中堅技術者にとって、密度の濃い研修会であった。
環境重視の時代、社会が期待する環境影響評価の役割は非常に大きいといえる。今回の研修は見直し後の最初の研修会であり、カリキュラム・テキスト・運営などの面で幾つかの課題が残ったが、今後会を重ねるごとに改善していき、事業者はもちろん、一般住民、行政などから今以上に信頼される環境影響評価技術者の養成を目指していきたい。
(教育研修委員会委員長:高山 登)

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