活動報告

セミナー・レポートサマリー 105



■ 第2回セミナー・レポート 平成16年9月22日
「景観法について」

講師:国土交通省都市・地域整備局都市計画課 企画専門官 神田昌幸

 これまでの景観行政は、各地方公共団体で「景観条例」が制定されてきたが、国民共通の基本理念が未確立であり、自主条例に基づく行為の届出・勧告などのソフトな手法の限界から、各地で景観をめぐる訴訟問題などが発生した(国立市の高層マンション問題など)。また、地方公共団体による自主的取り組みに対する、国としての税・財政上の支援が不十分であった。
 そこで、新たに景観形成の基本理念や景観形成のための制度を位置づけたのが景観法である。景観法の施行にともない二つの法律が設けられた。都市計画法、屋外広告物法などの整備に関する法である「景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」と、従来の都市緑地保全法を都市緑地法とし、都市公園法の上位法に位置づけた緑に関する「都市緑地保全法等の一部を改正する法律」である。これら「景観緑三法」が、平成16年6月18日に公布され、景観形成に関して一体的な効果が図れるようになった。
 あわせて、「景観形成事業推進費」(今年度は200億円)などの予算措置や、景観形成のための税制の特例などの充実が図られた。
 「景観法」は基本理念、国の責務を定め、景観計画の策定、景観計画区域、景観地区における規制、支援を行う。景観計画区域の中で、より積極的に景観形成を図る地区は「景観地区」に指定し、建築物や工作物のデザイン、色彩について規制する。
 川越市など景観をテーマとするNPOなどによるまちづくりや、景観形成に積極的に取り組み、交流人口が拡大している都市の例として、伊勢市、小樽市、近江八幡市が紹介された。景観法では、地方公共団体(景観行政団体)が景観計画の策定や景観地区の指定を行う際に、住民・NPO法人などによる計画の提案が可能であり、今後ますます、景観をテーマとするまちづくり運動が盛んになることが期待される。
(レポーター:(株)パスコ 下條 肇)


■ 第2回セミナー・レポート 平成16年9月22日
「低周波音問題対応の手引書について」

講師:環境省環境管理局大気生活環境室 室長補佐 由衛純一

 本セミナーでは、平成16年6月に環境省より各地方公共団体宛に作成された「低周波問題対応の手引書」(以下、「手引書」)について説明をいただいた。
 冒頭で、手引書における「参考値」は、アセスには使用してほしくない旨の説明があった。本手引書は、苦情発生時にその原因が低周波によるものかどうかを識別するためのものだからである。したがって、事業者および指導側の双方とも、当該参考値の趣旨を十分理解のうえ、これを安易にアセス上の評価基準としないよう、十分な配慮が必要である。
 また、低周波音の野外測定は、風に対してきわめてセンシティブであり、ほぼ無風状態での測定が理想形である。ただし、現場で無風状態が1日中継続することはありえないから、測定者または評価者が、データの選択方法を考える必要があろう。
 ところで、最近の環境アセスメントにおいては、低周波音を騒音とセットで対象項目とするよう行政指導されることが多い。しかし、低周波音に対する苦情発生は、設備設置状況・運転状況などに依存し、きわめて個別的であることから、通常アセスで実施される定常状態の予測で苦情発生防止を担保することは不可能と考える。
 低周波音の苦情件数は、ほかの公害苦情件数に比べると少ないとのことである。また、苦情を申し立てた人が化学物質過敏症であった、などという実例を聞くこともある。このため、低周波問題は「感受性の強い特異な人だけの問題」と切って捨てる向きもあるが、環境分野の業務に携わるものとしては、リスクコミュニケーション的な対応の必要性を認識すべきであろう。
 環境省ではすでに苦情対応事例集を公開しており、今後拡充していくとのこと。(http://www.env.go.jp/air/teishuha/jirei)マスコミから一時「妖怪」のごとく報道され、また環境アセスメントの運用において、いまだ戸惑いがみられるこの問題について、科学的に実態を把握し、事例を公にすることには、大きな意義があると思われる。明るいところには妖怪が出ないものと期待したい。
(レポーター:日本エヌ・ユー・エス(株) 鈴木さとし)







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