活動報告

セミナー・レポートサマリー 106

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■ 第3回セミナー・レポート 平成16年11月26日
「オオクチバスの生態、影響、駆除について」

講師:秋田県水産振興センター内水面利用部 部長 杉山秀樹

 杉山秀樹氏は、秋田の代表的な魚であるハタハタの資源管理に取り組まれている。今日、私たちはハタハタを口にできるが、かつてハタハタの資源枯渇が深刻であったとき、杉山氏らが中心となって日本海側で何年か続けた禁漁処置を経て、今日の資源量を回復したと聞く。
 講義では主にブラックバスを中心に外来種の危険性と対策に向けた取り組みを話された。
 外来種(alien species)は今日、陸域、陸水域を問わず、わが国の生態系の中に深く根ざした地位を獲得している。本種は短期間で爆発的に分布を広げ、河川、湖沼の生態系では考慮せざるを得ない存在となっている。
 いくつかの大切な論点があったが、まず、なぜオオクチバスは、短期間にこのような強固な地位を勝ち得たのか。「寿命が長く、成熟が早い。一度の産卵数が多く、多様な環境に適応できる。食性が柔軟(何でも食べる)で、飢餓にも強い。競合種が少ない」という生態的な特性によるという。これでは、在来魚種は圧迫を受けざるを得ない。こういう話は必ず逆もあり、ワカサギのように産卵場、産卵期、生息水域を異にするものは資源が減少しない、競合しないという。
 しかし、大切なことは水域の連続性はあっても、オオクチバスが自分だけで分布を拡大できたわけではなく、多くの場合「人」の関与が認められる点である。スポーツフィッシングや悪意のない「放流」がそれである。つまり今日のオオクチバスによる弊害はある意味人災ということになる。対策はもはや駆除しかなく、そのための横の連携、資金の確保、条例などによる規制が対策の骨子となる。アメリカでは外来種による影響を損失額に換算すると12兆円と聞いた。破壊された生態系を取り戻すには、さらに膨大な資金が必要になるわけで、時遅しの感はあるが、今こそ外来種対策を本格化せねばならぬ時期と感じた。外来生物法がそのための大きな拠りどころとなればと思う。
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(レポーター:アジア航測(株) 塚本吉雄)


■ 第3回セミナー・レポート 平成16年11月26日
「外来樹木の現状と将来展望」

講師:石井樹木医事務所 所長 石井誠治

 今回のセミナーでは、外来生物法が公布され話題となっている外来生物問題のうち外来樹木について、樹木医の石井氏より、1)外来樹木の考え方、2)外来生物を含めた環境アセスに取り組むにあたっての心構えが説かれた。
 樹木について、北半球では、日本と似通った気候であれば、比較的近いグループの樹木が生育していることが多い。これは、昔日本がユーラシア大陸の一部であったことに起因している。同一種が大陸分裂時に生き別れて別々に進化した例や、日本では昔に絶滅した樹木が、中国で生き残り、米国に渡って日本に戻ってきた例もある。これらの樹木が日本に帰化した場合に、外来樹木と言うかどうかは、判断し難いところである。外来樹木は、ほかの外来生物と比べると生態系への影響は問題になりにくい。逆に、外来樹木が緑化や景観形成に役立つことも多くある。外来生物とは、一般に明治以降に新たに日本に導入された生物を指すが、樹木に関しては、外来生物への該当の有無、さらには環境影響を判断する仕組みが必要である。
 セミナーでは、実際に樹木の葉や実を使って、多くの事例が紹介された。一見似たように見える樹木や葉でも、虫眼鏡で見たり、触ったり匂いをかいだりすると、簡単に判別することができることが分かった。また、身近な外来の樹木として、街路樹や建材があげられた。都会の街路樹では、その大半が都会の乾燥にも耐えうる外来樹木が利用されているということである。また、建材には、国内材より外材を利用するケースが増えているそうだ。普段何気なく利用している樹木について、再度全体的な視点に立って見直してみることが重要である。
 さまざまな事例紹介を通して、マクロな視点とミクロな視点の両方から物事を捉え、また、人間の五感を十分に利用することが必要であることを痛感した。外来生物を含めた環境アセスに取り組む際にも、これらの心構えを忘れないようにしたい。
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(レポーター:(株)三菱総合研究所 山崎恵美)


■ 第1回技術交流会・レポート 平成16年12月9日
2004年JEAS技術交流会「口頭発表」および「展示発表」

 師走のあわただしさに追われ始めた平成16年12月9日(木)午後、ルポール麹町(東京都千代田区)において第1回技術交流会が開催された。全国から134名の参加者が集ったが、このなかには都道府県等自治体で、環境行政に携わる関係者など34名の会員外参加者が含まれている。技術交流会は、平成16年度からの新規事業として、会員各社の技術PRを通して、知識の習得と業務能力向上を目指し、会員相互の技術交流を図る目的で企画されたものである。

●はじめに
 冒頭、当協会二宮会長から、「(社)日本環境アセスメント協会は、今日までアセスメント技術の精度の向上と発展のため、各種研究会やセミナー活動を実施してきた。これからは、ほかから学ぶだけでなく自らが情報発信し、技術の向上を目指すことが大切である。今回企画した技術交流会は、当協会を介しての会員各社のPR活動の場、と位置づけているので大いに活用していただきたい。アセスメント業務に従事する技術者のなかには、若手が大勢いらっしゃるので、今回の技術交流会は次の世代の方に、夢と希望をもっていただけるような、新しい協会づくりのためのひとつの事業と考えている」との挨拶があった。

●技術交流会の内容
 本交流会では、会員各社にPR活動の場を提供し、交流を通して技術水準の向上と業務拡大が図れるよう、口頭発表と展示発表のセッションを設けた。また、共用資料コーナーに書籍、関連資料等を陳列し情報提供を行った。口頭発表と展示発表は同時進行で行い、会場間を自由に移動できるよう便宜を図った。

(1)口頭発表
 口頭発表は自然環境分野と生活環境分野に分けて行われ、全体で10社9題の発表があった(自然環境分野:6題、生活環境分野:3題)。会場には常時80名程度の聴講者があり、非常に盛況であった。各社の発表は質疑応答を含めて20分間に限定したが、それぞれパワーポイントを駆使して、簡潔にわかりやすく説明していた。そのなかでPRと質疑応答が活発に行われ、時間が足りなくなる場面もあったが、ほぼ予定どおりの時間で終了することができた。参加者に対するアンケート結果によると、技術レベルおよび発表分野は、ほぼ適当であるが発表件数が少なかった、との意見などがあった。また、発表内容についての詳しい資料の提供を求める声などもあった。これらは今後の検討課題である。

【発表会社・団体】
(株)テクノ中部、(財)九州環境管理協会、東北緑化環境保全(株)、(株)サイエンスアンドテクノロジー、(株)プレック研究所、国土環境(株)、(株)環境総合テクノス、(株)三菱地所設計、(株)風環境リサーチ、ジェイアール東日本コンサルタンツ(株)(発表順)、※は非会員(非会員は会員会社と連名で発表)

口頭発表の要旨は「技術交流会報告」に掲載。

(2)展示発表
 会場には16のブースが設けられ、展示各社あるいは団体がそれぞれ工夫を凝らした展示があった。内容は、測定・分析技術、調査・予測解析技術、環境情報処理技術、GISなどに関する技術、環境保全措置に関する技術など多岐にわたっていたが、参加者の多くが口頭発表の休憩時間を利用して各ブースに立ち寄り、熱心に説明を聞いたり質問をしたりしていた。とくに、近年急速に進歩しているGIS技術による表示手法や自然再生技術に関心が高かった。参加者の多くが各社の実績や技術資料を持ち帰るなど、情報収集活動も活発であった。
 また、参加者に対するアンケートでは、展示内容の充実度は十分であるとの回答が多かったものの、口頭発表と同じように件数を多くして欲しいとの意見もあった。当協会のブースでは、展示パネルの前で記念撮影する光景もみられるなど、活発な意見交換がなされるなかにあって、会場は終始なごやかな雰囲気につつまれ、名刺交換も活発に行われていた。

【展示会社・団体】
日本環境(株)、(財)九州産業衛生協会、アジア航測(株)、(株)地域環境計画、(株)オオバ、(株)建設技術研究所、(株)日建設計、(株)東京久栄、(株)セレス、(株)環境総合テクノス、パシフィックコンサルタンツ(株)、飛島建設(株)、環境アセスメント学会、(社)日本環境アセスメント協会(申込順)
 また、会場内の共同資料コーナーでは、環境アセスメントに関連する書籍類、環境省、国土交通省、農林水産省および愛知県のパンフレットなどの展示を行った。パンフレットは持ち帰り自由であり、ほとんどの参加者が手に取っていた。

●成果
 技術交流会は当協会の新しい試みである。前述のとおり、会員の有する技術を互いに発表し合い、また会員内外への技術のPRを行って、新規技術の習得と環境アセスメント業務領域の拡大を図り、さらに人的ネットワークを形成することを目的として第1回目を実施した。
 参加者数は当初の予想を上回り、また会員外である自治体職員などの参加もあって、口頭発表、展示発表ともに盛会のうちに終了することができた。なによりも若手技術者を中心とする積極的な活動が印象的であった。参加者アンケート結果からは、一部改善、要望事項はあるものの、次回に期待する内容が多くみられ、初年度の目標はおおよそ達成できたものと考えられる。

●おわりに
 技術交流会終了後、多くの若手技術者の参加を得て懇親会が開催され、交流の輪が広がった。第1回技術交流会は好評のうちに終了することができた。
 この結果を受け、次年度も技術交流会を開催する予定である。次回は、今年度の反省を生かして現状にマッチした魅力ある企画を立案し、多くの技術者が集える交流会となるよう工夫していきたいと考えている。
(レポーター:(株)東京久栄 小林 聡)


■ 新春特別講演会レポート 平成17年1月19日
「企業の社会的責任と環境配慮型経営」

講師:国連環境計画 金融イニシアティブ特別顧問 末吉竹二郎

 第二次世界大戦後、企業は経済活動を通して業績を上げ、株価を上げることこそが一流企業の証であるとして、社会的な活動を実践してきた。環境は経済のほんの一部である、という見方のもとで経済一辺倒の活動が継続された。その結果、環境への深刻な影響を抱えたまま今日に至っている。しかし、近年ようやく環境保全の気運が高まり、本年2月には先進国に対し、温室効果ガス排出量の削減を義務づける京都議定書が発効する運びとなった。
 本講演では、環境保全と経済とを統合する、イノベーションが待ったなしで必要とされる時代を迎え、CSR(企業の社会的責任)について多様な事例を交えながら、いろいろなお話しを聞くことができた。
 1992年のリオ地球サミットにおいては、未来世代からのメッセージとして、「大人の皆さん、どうやって直すかわからないものを壊し続けるのはやめてください。お聞きしますが、私たち子供の未来を真剣に考えたことがありますか。その言葉が本当なら、どうか本当だということを行動で示してください」という12歳の少女の意見が紹介された。私が同年代のころ、果たしてそのように思ったことがあるかな、と考えさせられた。
 経済が発展していくにつれ、生活は便利になったが、人類中心の活動がそれと引き換えに、自然環境を破壊し続けてきた。われわれの世代がいいように環境を変える、その先の世代も同じような欲求に駆られる。今こそ、われわれの子供たち、またその子供たちに対し、自然を守る、あるいは環境を保全することの重要性を、単に言葉で教えるだけでなく行動で示すべき時期に来ていることを再認識した。
 昨今、CSRのことが盛んにいわれているが、これは決して新しい概念ではない。企業の社会的責任は“単なる義務”でしかないという捉え方をしがちであるが、CSRへの真剣な取り組みが、競争力を強化するためにも、必要不可欠であるということを強く、認識しなければならない。
 これからの時代、企業は環境保全に積極的に取り組むことで、社会的責任を果たし、それによって経済中心の社会のなかでも高く評価されていく。企業のなかで環境に携わる人間として“CSRとは何か”を改めて考えたい。 予定時間をオーバーする熱弁であった。
(レポーター:(株)大林組 金光健太)


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