活動報告

セミナー・レポートサマリー 107

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■ 第2回公開セミナー・レポート 平成17年1月21日
「WebGISによる環境情報の公開と共有−合意形成に向けて−」

講師:東京情報大学総合情報学部環境情報学科 教授 原 慶太郎

 本セミナーでは、WebGISによる環境情報の公開と共有をテーマに、合意形成に至る過程でのWebGISが果たす役割について、東京情報大学原慶太郎教授に講演をお願いした。
 講演のなかで、平成13年度環境白書の「環境コミュニケーションで創造する持続可能な社会」の一節が紹介された。環境基本方針の一文に、「持続可能な社会の構築に向けて個人、行政、企業、民間非営利団体といった各主体間のパートナーシップを確立するため、環境負荷や環境保全行動等に関する情報を一方的に提供するだけでなく、利害関係者の意見を聴き、討議することにより、互いの理解と納得を深めていくこと」とある。
 環境情報は地理情報に基づくものが多く、大部分の情報は地図上に記載することが可能であるため、環境情報のとりまとめにはGISによる整理、解析が適している。GISは、環境負荷や環境保全行動などに関する情報の整理、情報の解析を行う道具であると同時に、その環境情報を提供することで、意思決定の支援を行う情報システムの役割をも果たしているのである。
 現在、GISソフトは、価格、汎用性、操作性などのハードルがあり、広く普及していないのが実情であるが、これらのハードルが低くなるにともない、誰もがGISを用いて環境情報を整理、解析することができるようになると考えられる。そのことからも、GIS化された環境情報をWeb上で公開することは、環境情報の公開と共有に必要となっていくのである。
 環境負荷や環境保全行動などにかかわる各主体が必要とする環境情報が、規制されることなく入手可能になることで、各主体間の合意形成や相互理解に向けた環境コミュニケーションの入り口に到達することができる。
 今後、WebGISによる環境情報の公開と共有を求められる機会が増え、合意形成を支援する情報システムとしてのWebGISの果たす役割に対し、大きな期待がもたれるところである。
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(レポーター:(株)環境指標生物 川村 美岐)


■ 第2回公開セミナー・レポート 平成17年1月21日
「環境影響評価(公共事業)における住民参加について」

講師:早稲田大学理工学部複合領域研究室 教授 村山 武彦

 村山教授には、本講演において、環境影響評価における住民と事業者の合意形成について、公聴会や戦略的環境アセスメントの事例を交えながら説明していただいた。
 ご紹介いただいた事例のなかでも、とくに川崎市の公聴会に関するビデオでは、住民と事業者が相互に数回、意見の公述を行っている姿が映し出されており、住民と事業者との合意形成のうえで、お互いに繰り返し意見を聞くことの重要性が強調されていた。
 村山教授は、2004年度の環境アセスメント学会で『環境影響評価における公聴会の実施内容に関する実証的分析』を発表している。そのなかで、公聴会制度を規定する自治体は47都道府県・13政令指定都市のうち8割あるものの、現実に公聴会を実施したことのある自治体は12団体しかないことを報告している。また、公聴会の開催形式に関する報告では、住民・事業者の双方が参加し演説する形式をとっている自治体はわずか2団体しかなく、単方向的な住民の意見表明のみの演説形式をとっている自治体が75%もあることが報告されている。さらに、公聴会であげられた意見を分析した結果、事業に否定的な意見を持つ公述人が約7割に達するという。
 このように、事業者と住民との合意形成においては、公聴会のような双方向の意見交換があまりなされずに行われていることを知り、十分な意見交換のうえでの合意形成には相当な配慮が必要であると感じた。
 住民参加の意義は、行政の説明責任、住民独自の視点からの情報提供、科学的な評価と住民の主体的な評価のバランスを取る必要性、人と自然との触れ合い活動など住民の意識的行動自体が評価の対象となっていることなどがあるため、事業者と住民との仲介役であるファシリテータは、今後ますますその機能の充実が必要であり、期待されると思う。
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(レポーター:パシフィックコンサルタンツ(株) 佐藤 元紀)


■ 第4回技術セミナー・レポート 平成17年1月26日
「森川海の読み解きと暮らしの再生」

基調講演
 NPO法人サステイナブルコミュニティ総合研究所 理事長 角本孝夫


 基調講演として、NPO法人サステイナブルコミュニティ総合研究所の角本孝夫氏より、「森川海の読み解きと暮らしの再生」と題し、青森県大畑町に位置する大畑川流域の事例についてお話しいただいた。青森県では、「青森県ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する条例」(平成13年12月)が制定されており、その第1号指定地が大畑川流域であった。
 大畑海岸の漁業は、かつてイカの漁獲で全国シェアの半分を占めるほど栄えていたが、地域の発展や漁港の発達とともにイカの漁獲量が少なくなった。漁民達の生活の場であった漁場が変化していくことに対し、地元住民が中心になって専門家集団と相談しながら行政に提案することで、沿岸域の自然再生を図ってきた。
 このお話を通じ、古くから地域で生活している人々の実体験に基づく自然の感じ方・あり方など、人々の持っている情報には非常に重要な示唆が含まれていることを感じた。行政関係においては、河川・港湾・農政などの複数の部署にわたることから、それぞれの持つ情報を効率的に共有・公開し、適切な計画・施行・管理を考えて行くことが重要であることを再認識した。
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(レポーター:(株)建設技術研究所 上原 励)
「パネルディスカッション」

【パネリスト】
NPO法人サステイナブルコミュニティ総合研究所理事長 角本 孝夫 氏
東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学科助手 清野 聡子 氏
(株)環境指標生物代表取締役・日本獣医畜産大学講師 新里 達也 氏
【コーディネータ】
NPO法人まちづくり政策フォーラム理事・日本地域ガバナンス学会理事 古川 隆 氏

1.各パネリスト発言要旨

(1)角本 孝夫 氏
 コンサルタントには大量の事例と技術が蓄積されているため、これらを生かして少ない予算で効率的な地域計画を提案する能力がある。これからは、徹底的な情報開示による地域計画をコーディネートするコンサルタントが必要とされる。
(2)清野 聡子 氏
 大分県中津市の河口部の整備に関して、地域住民、市・県土木事務所、国の地方整備局、港湾整備局などすべての関係者が一同に会して協議会を開催し、徹底的な議論を行った末、協働による河口部の整備が行われた事例を紹介した。協議会では、関係者一同誰もが抜けることなく議論する重要性、コンサルタントが良いデータを収集・とりまとめ、分かりやすい資料作成をすることの重要性を説明した。
(3)新里 達也 氏
 長野県飯島町の水田農地において、環境教育をしながら水田農地の1%をビオトープ化するという事業事例をもとに、コンサルタントには農家との頻繁な対話と農家にも分かりやすく説明する能力が必要であることを説明した。

2.おわりに

 角本氏や清野氏の発言にあった「まず『なぜ、再生するのか?』から関係者全員が徹底的に議論する必要がある」という言葉は、このパネルディスカッションの最も大事なキーワードであった。それぞれ立場や価値観、技術的な知識の違う各関係者の通訳をするという意味において、コンサルタントのコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力には期待されるところが大きく、コンサルタントの将来の可能性とあり方に希望が持てるパネルディスカッションであった。
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(レポーター:日本工営(株) 中島 和也)


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