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■第6回技術交流会・レポート 平成21年12月3日 |
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2009年JEAS技術交流会「口頭発表」及び「展示発表」 |
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師走の北風が身にしみるころ平成21年12月3日(木)、ルポール麹町にて第6回技術交流会が教育研修委員会及びセミナー委員会協賛で開催された。口頭発表及び展示発表において75名の参加者(会員外参加者6名)があり、熱心に発表や質問のやりとりが行われた。 山本教育研修委員長から「発表者からもっとも話題性のある内容を発表されるので、会員は自分自身のためになるよう活発な議論をしてほしい。」との挨拶があった。 ●口頭発表 口頭発表は、生活環境分野で4件、自然環境分野で4件、合計8件の発表があった。発表者は25分間の制限時間内で、パワーポイントを駆使して要領よく分かりやすく説明し、聴講者は熱心に耳を傾け、先端技術を習得していた。 コメンテーターとして、広松委員(生活環境系)及び安田副委員長(自然環境系)により各発表内容に対する評価を行うなど活発な質疑が図られ、理解が深められた。 参加者のアンケート結果からは、技術レベル、発表時間や件数はおおむね適当とする意見が多かったが、天井が低くパワーポイントの映像が見にくいという一部の意見もあった。また、今後聞きたいテーマとして、地上デジタル放送の電波障害調査・予測手法や生態系定量評価手法など調査・予測・評価の最新技術、住民とのコミュニケーションツールなどを取り上げてほしいといった意見があった。 ![]() 【口頭発表会社・団体】ムラタ計測器サービス(株)、(株)環境総合テクノス、いであ(株)、アジア航測(株)、八千代エンジニヤリング(株)、(株)オオバ、NPO地域づくり工房、(株)地域環境計画の7社1団体であった。(※うち会員外から1団体が参加) ●展示発表 会場には7つのブースが設けられ、展示内容は、測定・分析技術、予測解析技術、コンピューターシミュレーション技術、GIS等の技術、コミュニケーション技術など多岐にわたっていた。参加者の多くが展示発表時間を利用して各ブースに立ち寄り、熱心に説明を聞き、質問していた。 参加者のアンケート結果からは、展示内容、分野、時間は適当であるという意見が多かった反面、展示件数が少ないという意見が半数に及んだ。 ![]() 【展示発表会社・団体】ムラタ計測器サービス(株)、(株)環境総合テクノス、(社)日本環境測定分析協会、NPO地域づくり工房、(株)建設技術研究所、(社)日本環境アセスメント協会の3社3団体であった。(※うち会員外から1団体が参加) ●閉会挨拶 高山研修部会長から、「発表内容はお互いのスキルアップ、新しいビジネスの場づくり、ならびに環境アセスメント制度への貢献に資するものであった。今日の成果を今後の業務に活用されたい。」との挨拶があった。 ●成果及び今後に向けて 技術交流会は、会員が有する技術を互いに発表して内外に技術力をPRし、また人的交流を通じて、環境アセスメントにかかわる技術力の向上と業務範囲の拡大を図ることを目的に実施されたものである。今回は、昨年度同様、口頭発表のコメンテーターを定めて内容に対する評価を行ったこと等により、アンケート結果でも今後の参加を望む意見が大部分であったことなど、所定の成果が得られたと考えている。ただし、会員の希望する発表テーマへの対応、展示発表方式の再考、展示発表件数の増加、他協会との共催、行政・民間事業者との交流など、議論の活発化を図るためのいくつかの課題も残されている。 次回は、今年度の反省を踏まえ、さらに充実した技術交流会となるようにしていきたい。 |
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(教育研修委員:平賀則幸) |
■第1回セミナー・レポート 平成21年12月15日 |
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生物多様性に関する千葉県の取り組み
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平成20年6月に施行された生物多様性基本法において、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関し、施策の策定及び実施に対する地方自治体の責務が明記されている。千葉県では、すでに平成20年3月に「生物多様性ちば県戦略」を策定し、生物多様性へのさまざまな取り組みが行われている。本講演は生物多様性に対し先進的な取り組みを行っている千葉県らしく、生物多様性の基本的知識から千葉県の施策、企業による生物多様性の取り組みや環境アセスメント手法の活用に至る幅広いものであった。 | ||
(レポーター:清水建設(株) 米山佳伸) |
里山の自然と文化の保全
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里に近い森林とその周りの田畑などの生活空間を含めた広義の「里山」についてのご講演をいただいた。 広義の里山の特徴としてあげられた以下の4点は、生活空間の一部としての里山の特徴を整理したものとして、理解しやすいものであった。 ・自然を適切に利用する知識・経験がある ・持続可能な生活社会である ・自然を利用するが制約がある 7生物多様性 また、他国と日本の里山の比較においては、里山の形状の違いが地形・歴史・文化の違いに起因しているとの内容は、興味深いものであった。日本の里山はアジア的であり、生活の一部としての水田の存在が大きく、水辺とそれを取り囲むさまざまなタイプの森林で構成されているため多様性に富んでいる。これに対し、英国などの里山は単調で樹種が少なく、日本の里山の多様性がいかに貴重なものかが紹介された。 一方、米国と日本との生物多様性の場に対する認識の違いを農業のあり方から紹介されたものも理解しやすいものであった。米国では機械化された単一作物の大農園型農業が行われているため、農地では生物多様性は見られず、広大な自然公園の原生自然において生物多様性の場を求めている。これに対し、日本では個人による小さな農地が混在することにより、狭い地域内にさまざまな生物の生活環境が保たれている。このように、文化の違いにより生物多様性の場に対する考え方も異なり、日本の生物多様性の保全を進めるうえで、農村を含む里山の維持の必要性について説明がなされた。 講師のケビン・ショート氏は、長年里山の近くに住み、日々里山に触れた生活を送っているとのことで、全体的に里山への親しみを感じられる講演であった。 | ||
(レポーター:アジア航測(株) 塚本吉雄) |
第3回公開セミナー・レポート 平成22年1月18日 |
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生態適応シンポジウム2010 |
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◆田中章氏「代償ミティゲーションから生物多様性オフセットへ:日本の視点」 アメリカでの事例、代償ミティゲーション、生物多様性オフセットバンキング、HEP等の解説及び生物多様性保全推進に必要な考え方が示された。制度的、生態学的な誤解を解き、HEPを活用して科学的・定量的な評価をする必要性や日本独自の里山などの二次的自然を対象とするバンキングの可能性について言及された。 ◆M. Herbert氏「ドイツ環境アセスメント法を含むEU各国における生物多様性オフセット制度」 ドイツでは1976年の連邦自然環境保全法で規定されている環境影響緩和条例によって、事業のインパクトは各段階でチェックされ、適切な回避または代償が行われることにより事業が許可される。代償する自然の機能の補償は自然の力によること、事業評価は言語による記述をベースにすることが原則としてあげられた。新しい流れとしては、ハビタットバンキングやバッファーゾーンの事前準備などが紹介された。 ◆M. Crowe氏「オーストラリアの生物多様性オフセットと新しい国際的な枠組みBBOP」 オーストラリアのビクトリア州では、1989年から自然植生の改変に許可が必要になったが、2002年からはオフセット政策を導入し、本格的に生育地の保護やノーネットロスの原則が導入された。オフセットの実施主体は事業者であったり、事業者から金銭を支払われた州当局であったりしたが、2006年からはオフセット市場のプログラムが導入された。オフセット市場においてはブッシュブローカーという仲介者が存在し、規模は小さいものの、現在では経済的にも自立している。新しい流れとしては、貴重種のオフセット、ハビタットモデル、自然植生のクレジット登録制度、ブッシュブローカーと事業者や土地所有者間のネットワーク構築等があげられた。最後に国際的な枠組みであるBBOPが紹介された。 ◆M. Candish氏「生物多様性オフセットは生態学的に効果的でありえるか?:マレーシア、サバ州での取り組み」 New Forest Asiaという企業でのオフセットの取り組みについての経験談があった。オフセットの取り組みで大企業化によるスケールメリットについて言及された。マレーシアで設置したアジア初のバイオバンクでは、自然が貨幣価値をもつと評価されると、住民の意識が変化し、密猟を監視し、進んで地域の生態系を保全するように変化した。多様性評価には特定種の多少ではなく、生態系全体での評価が望ましく、環境保全のコストについては、保全をしない場合のコストで議論すべきという意見であった。 ◆中静透氏「生物多様性オフセット:応用の可能性と考慮すべき生態学的問題点」 生物多様性の保全のための手順及び技術は正確に運用されるべきで、より有効なアセスメントが必要であるとされた。回避→最小化→代償のための意思決定プロセスやオフセット技術における順応的管理の重要性も指摘された。これまでアセスメントで蓄積されているデータの共有化は、オフセット導入の科学的根拠として必須であり、日本のアセスメントが事業アセスにとどまっていること、データが非公開であること、事後調査事例が少ないこと等が問題点としてあげられた。 ◆パネルディスカッション バードライフ・インターナショナルの市田氏、当協会の伴氏を加え、生物多様性オフセットのあり方について活発な議論が行われた。 ◆所感 各国におけるオフセットの取り組み状況と日本における現状と課題について、理解を深めることができた。 |
(レポーター:(株)東京久栄 長嶋美香子) |
第4回公開セミナー・レポート 平成22年2月26日 |
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低炭素社会構築に向けた長期シナリオ |
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今回の公開セミナーは、昨年度同様、(社)土木学会環境システム委員会主催のセミナーに当協会が共催して開催され、4名の研究者の方からご講演をいただいた。 1. 長期シナリオ構築の基本的な考え方
豊かで質の高い低炭素社会を実現するため、「脱温暖化2050プロジェクト」において検討された長期シナリオの構築の考え方をご説明いただいた。 シナリオの考え方の基本は「バックキャスティング方式」である。2050年時点での望ましい社会のイメージを描き、目標の実現に向けた道筋を考えるものである。2050年までに1990年に比べてCO2の70%削減は可能である、という結論だけ聞くと驚くが、快適な居住空間と省エネの両立を目指した社会の実現のための方策について、技術革新や必要な制度の具体的検討内容を解説いただくことで、その流れが理解できた。また、シナリオに沿った施策を順序と時間を考えて実施していくことが必要だと感じた。 2. エネルギーシステムの視点からの長期展望
CO2の削減を考えた場合、まず思い浮かぶのが化石燃料の使用制限であるが、エネルギー需要への対応も必要である。本講演では、エネルギーシステムの視点から低炭素社会の実現の可能性についてご説明いただいた。 シナリオに基づく費用、効率等の検討の結果、望ましいエネルギーシステム像としては、建物断熱化等の省エネ、再生可能エネルギーの利用に加え、副生水素の利用、バイオ系燃料の利用などを、大都市圏中心部あるいは人口非集中域に応じて使い分けていくことが考えられている。 これらは、個別にCO2削減技術、エネルギー効率化の技術であるが、その特性に応じて配置することにより、低炭素社会実現の方策として効果的であることが理解された。
3. 都市システムの視点からの長期展望
本講演では、都市システムの視点からみた低炭素社会の実現の可能性についてご説明いただいた。 都市や地域の規模や特性に応じた戦略が必要であり、大都市では機能の高効率化、中規模都市ではコンパクト化、農林後背地を持つ小規模市町村ではバイオマス活用都市との方向性が示された。 4. 交通システムの視点からの長期展望
本講演では、交通システムの視点からみた低炭素社会の実現の可能性についてご説明いただいた。 今後の方向性として、@ハイブリッド乗用車の普及拡大、A小型電動パーソナルモビリティの開発、B公共交通の公的整備・支援、C土地利用と交通の統合計画、D課税によるインセンティブ(税制優遇)が示された。 低炭素社会の構築は、ここ数年で、もっとも熱いトピックであると感じてはいるが、対象を視覚化することが困難なこと、削減目標が長期的であることから、具体的な行動を連想することが難しく、削減目標だけがひとり歩きしていると感じていた。しかしながら、講演後の質疑応答で、講師の先生方が、「削減目標は現実的な事柄の積み重ねであり、十分に達成可能である」と回答されて、長期シナリオに基づいて行動することが大切であると同時に、削減目標は現実的なものであると認識した。 さて、低炭素社会の構築に向けて、環境アセスメントは何ができるのだろうか? 講演を聴きながら思い浮かんだキーワードは、戦略的環境アセスメントであった。長期シナリオを実行していく際、複数案の検討が不可欠であり、これこそ戦略的環境アセスメントの活躍の場ではないだろうか。 | |||||
(レポーター:日本工営(株) 片柳貴文) |
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