活動報告

セミナー・レポートサマリー 127


■第1回公開セミナー・レポート 平成22年5月20日
「新JICA環境社会配慮ガイドライン」について

講師:
(独)国際協力機構審査部環境社会配慮審査第二課長 河添靖宏

 平成20年10月1日に、旧JBICの業務及び外務省の無償資金協力業務の一部がJICAに継承され、新JICAが誕生した。これにともない、今年4月に策定された「新JICA環境社会配慮ガイドライン」について、独立行政法人国際協力機構の河添靖宏氏より説明が行われた。

■環境社会配慮の基本方針
環境社会配慮の基本方針の重要項目は以下の7点である。

(1)
環境及び社会面の幅広い影響を対象とする
(2) 早期段階からモニタリング段階まで環境社会配慮を実施
(3) 協力事業の実施において、説明責任と透明性を確保
(4) ステークホルダーの参加を求める
(5) 情報公開を積極的に行う
(6) JICAの実施体制の強化
(7) 迅速性に配慮する


■環境社会配慮のプロセス及び手続きについて
 環境社会配慮では、事業のセクター、規模、特性、地域によって4つのカテゴリーに分類され、分類ごとに必要な手続きを行う。新JICAガイドラインでは、現行JBICガイドラインにはなかった「先住民族への影響」を考慮する項目が追加されている。また、戦略的環境アセスメント(SEA)の適用が求められている。

■対象プロジェクトに求められる条件
 対象プロジェクトに対しては、「プロジェクトによる影響を回避・最小化するような代替案や緩和策の検討」、「定量的な評価も加えた分析」、「環境社会配慮の検討結果の文書化」、「専門家等からなる委員会の設置」が求められている。生態系・生物相への配慮とともに、先住民の移転問題等に十分配慮することが必要とされている。
 旧ガイドラインとの比較により、変更点が分かりやすく示され、理解することができた。今後は手続きの変更点等に注意したいと考える。
(レポーター:(株)パスコ 大勝桃子)

■第1回セミナー・レポート 平成22年5月20日
「新JICA環境社会配慮ガイドライン」事例紹介等

講師:
(独)国際協力機構審査部環境社会配慮審査第一課長 杉本 聡

 事例紹介では、これまでのガイドラインを適用する中で生じた問題点や今後の方向についてお話しいただいた。

■火力発電所建設事業の事例
 審査する立場からは、大気質、水質・温排水などの国内の環境基準を満たすとともに、今後は世界銀行の基準もクリアしていくことが求められていく。実際、この環境基準を満足する事業内容についてコスト面から実施することが難しい場合も多いが、コンサルタントは確実な環境保全を目指して対応してほしい。

■都市環境改善事業(排水・下水及び廃棄物処理)の事例
 排水・下水システムの整備は住民との合意形成が重要であり、害虫の発生や生ゴミによる排水処理の問題などいろいろな措置を組み合わせて、可能な限り影響を小さくしていくよう検討が求められる。またこの事業が行われる都市部では、さまざまな職業の人が居住しており、各々の事情に応じて補償や生計回復を考える必要がある。

■都市・港湾改善事業の事例
 相手国が実施した環境アセスメントには、生態系調査が十分に行われていないなどの問題もある。工事中に絶滅危惧種などが確認されるような場合などについては環境管理計画を立案し、その中で対処の方針を示している。また、事業の付加価値を上げる点から「環境教育の場」を設置するなどプラス効果となることを積極的に検討してほしい。

■新ガイドラインにおける戦略的環境アセスメントの適用
 新JICA環境社会配慮ガイドラインの所々に、「マスタープラン等に戦略的環境アセスメントを適用すること」が明記されている。事業の進捗過程において柔軟に環境面も含めて計画を検討していくことが今後求められていく。
 以上、アジア地域における環境審査の実際の悩ましい問題を聞くことができ、海外事業における環境コンサルタントの役割を再認識した。

(レポーター:国際航業(株) 荒川 仁)



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