鉄道騒音は自動車のそれに比べてとても複雑だ、と話には聞いていた。今回の講演によって、鉄道騒音の複雑さとは、なるほどそういうことなのかと、知ることができた。実はこれまでの業務のなかで、鉄道騒音に本格的に出会うことはなかったのである。
よくよく考えてみると(いやいやそんなに考えなくとも…)、鉄道からはいろいろなところから音が出ていることが想像できる。一編成の列車には、いったいいくつの動力源と車輪があるのだろう!
今回の話で驚いたことは、車輪とレールの表面(互いに接触する面)に、規則的な凹凸ができることである。これは、波状摩耗といわれるが、アスファルト面ならいざ知らず、鉄のレールも使用するうちに凸凹になってしまうのである。そのため、定期的にレール削正といってレールを平らになるように削っていくのだという(そのときの騒音が気になるが…)。そのほかにも鉄道の音源は数多く知られており、それらを踏まえた解析法、予測手法の詳細さには驚き入った。
配布資料の冒頭に善田先生がこうお書きになっている。「ひと昔前のSLの音は、多くの人々にノスタルジックな感情を抱かせこそすれ、決して嫌われるものではなかった」。鉄道騒音が問題となったのは新幹線以降であるという。
今から考えると、蒸気機関車は公害をまき散らしながら走っていたようなものだ。当時の人が、今の電車を見たなら、なんと静かでスマートな走りをするのかと驚くだろう。また、それにも増して、この電車の騒音を低減するために、かくも詳しい分析と検討がなされていることには唖然とするに違いない。
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