活動報告

セミナー・レポートサマリー 98

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■第2回定例セミナー・レポート 平成14年11月26日
「環境アセスメントと京都議定書」

講師:
環境省地球環境局地球温暖化対策課
温暖化国際対策推進室 課長補佐 瀧口博明


 もう5年も前になるが、1997年12月京都で行われた気候変動枠組条約会議(COP3)において、京都議定書が採択された。その内容としては、気候変動枠組条約に「森林等の吸収源による二酸化炭素吸収量を算入する」こと、および「国際的に協調して目標を達成するための仕組み(京都メカニズム)の導入」が追加された。この京都議定書では、基準年を1990年(代替フロン等3ガスについては1995年としても可)とし、対象ガスである二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、代替フロン等3ガスを約束期間である2008年〜2012年の間に排出量削減することになっている。数値目標は日本6%、米国7%、EU8%など先進国全体で少なくとも5%削減としている。
 しかしながら、現行対策を前提とした場合の2010年時点の排出量見通しは、基準年総排出量比約7%増。6%削減約束を達成するためには、現行対策から約13%相当分の追加的排出削減が必要といった非常に厳しい状況である。
 京都メカニズムは、共同実施(JI、京都議定書6条)、クリーン開発メカニズム(CDM、京都議定書12条)および排出量取引(京都議定書17条)に分かれている。JIは先進国同士が共同で事業を実施し、その削減分を投資国が自国の目標達成に利用できる制度であり、CDMは、先進国と途上国が共同で事業を実施し、その削減分を投資国(先進国)が自国の目標達成に利用できる制度である。また、排出量取引とは、各国の削減目標達成のため、先進国同士が排出量を売買する制度である。
 今後、環境コンサルタントに求められる役割としては、JIやCDMの制度を正確に理解する、CDMプロジェクト設計書にあるベースラインを適切に設定する、CDMにおける環境影響評価手続きなど各国におけるアセス制度の理解および語学力があげられる。
 京都メカニズムについては、環境省HP「京都メカニズム情報コーナー」にて詳しく掲載されている。
 http://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/index.html
(レポーター:(株)復建エンジニヤリング 渡邉浩三)

■第2回定例セミナー・レポート 平成14年11月26日
「国際協力銀行の環境社会配慮ガイドラインと国際協力」

講師:
国際協力銀行環境審査室 参事役 森 尚樹

 平成14年4月、国際協力銀行による「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」が制定された。この新ガイドラインの目的は、国際協力銀行が融資を行うプロジェクトに対して、適切な環境社会配慮がなされることを確認し、プロジェクト実施主体にその実施を促すことにある。また、汚染対策・自然環境はもちろんのこと、社会環境(非自発的住民移転・先住民等への人権の尊重)への配慮についても重点を置き、さらにはより高い情報公開性を目指したものとなっている。
 具体的には、(1) 環境社会配慮確認の手続き、(2) 判断基準、(3) 融資対象プロジェクトに求められる環境社会配慮、などが示されている。とくに融資対象プロジェクトに求められる環境社会配慮については、事業分野別により具体的な記述がなされている。
 新ガイドラインは、あくまでも環境配慮の主体が、プロジェクト実施国ないし実施主体者であり、国際協力銀行は配慮を確認する立場であるという方針に基づいている。すなわち、現地の基準を遵守することを基本原則としている。しかしながら、現地基準と国際標準との格差がみられる場合、その背景を探り、合理性を見極めたうえで、環境社会配慮について適切な基準を選択することになる。
 環境条件も社会条件も異なった国の環境社会配慮策は、日本とは違った感覚や考え方に基づいていることも多い。そのような場合に、日本の感覚で判断し、相手国に対して審査を行うことは、国内の常識を現地に無理強いすることになるのではないか、という不安が常につきまとう。
 新ガイドラインは、このような不安に対して、前述のような明快な指針を有している。これは、ほんの一端ではあるが、対象国の実情を最大限酌み取り、有効な環境社会配慮を行うために、新ガイドラインが発揮するであろう効果を十分感じさせるものであった。
 http://www.jbic.go.jp/japanese/environ/
(レポーター:三井共同建設コンサルタント(株)岡本憲一)

■第2回技術セミナー・レポート 平成14年12月19日
「計画段階アセスメントおよび戦略的環境アセスメントについて」

講師:
明海大学不動産学部 教授 柳 憲一郎

 2002年7月3日、東京都の環境影響評価条例が改正された。この改正によって、東京都の環境影響評価制度は、事業の計画段階と実施段階とを一体化させて実施されることになった。現在、環境影響評価制度は、計画のより上流段階において戦略的に実施される方向で改革が進められている。
 柳先生の講演を拝聴していて、戦略的環境アセスメント制度(SEA)の発展に向けて、以下のような解決すべき課題があると感じた。
 第一に、信頼性の高いアセスメント手法を確立することである。計画の上流段階でアセスメントを実施するということは、必然的にアセスメント結果の不確実性が大きくなることを意味する。速やかな合意形成を達成するには、信頼性の高いアセスメントの方法論を確立することが急務である。一般に、アセスメントを実施する際には、さまざまな意見を持つ利害関係者が立ち会う。アセスメント結果が、科学的かつ妥当性の高い方法論によって導かれた結果であるかどうかが、合意形成に大きな影響を与えることはいうまでもない。
 第二に、合意形成プロセスをいかにうまく構築していくかという点である。すなわち、立場の異なる利害関係者に、いつ、どのような形で議論に参加してもらうかが問題になる。SEAの検討プロセスを定型化することは難しいが、より効率的かつ実効的なSEA制度を構築するためには、避けては通れない課題であろう。
 柳先生の講演の中で、日本は、OECD諸国の中で最後に環境アセスメントを制度化した国である、との指摘があった。現状では、SEA制度で欧米諸国に遅れを取っているようだが、ここ数年、国内でもSEAに関連した積極的な取り組みがみられる。こうした取り組みからベストプラクティスを抽出し、先進的なSEA制度が日本から発信されることを期待したい。
講演録報告書(会員のみ) >>>
(レポーター:(株)三菱総合研究所 高橋信吾)

■第2回技術セミナー・レポート 平成14年12月19日
「東京都における計画段階環境アセスメント制度の運用について」

講師:
東京都環境局環境評価部総合アセスメント制度 担当課長 大坪安則

 上位の開発計画や政策に対する環境配慮として、諸外国において「戦略的環境アセスメント」の導入に向けた取り組みがなされている。このような国際的動向やわが国の現状を参考にして、環境省では「戦略的環境アセスメント」の導入事例について検討を進めており、地方公共団体においては、東京都や埼玉県で環境影響評価条例などに計画段階のアセスメントの導入が図られている。
 本講演では、東京都環境影響評価条例の改正内容および改正にともない見直された技術指針について解説いただいた。
 東京都環境影響評価条例改正のポイントは、計画段階環境影響評価を導入し、事業段階環境影響評価の見直しを行った点である。この計画段階環境影響評価の導入は、事業による環境影響を早い段階で評価し、より環境に配慮させようとするものである。この段階で採用可能な複数の計画案等を示した環境配慮書を作成・縦覧して都民の意見を聴取し、事業計画に反映させることが可能となる。この計画段階環境影響評価において、ある程度の精度を持った予測・評価を行った場合、事業段階環境影響評価では、その項目について簡略化できる。ただし、適用は東京都の実施する事業に限られている。
 事業段階環境影響評価では、今までの20年間の実績を調査し、都の都市計画局が定めている都心や副都心等の特定の地域においては、高層建築物やマンション事業について調査計画書を省略できるなどの効率化が図られている。また、アセスに要する期間についても過去の実績から目安を示している。
 計画段階の評価結果や都民の意見が事業計画に反映され、より環境に配慮される事業となることを含め、計画段階環境影響評価の結果が事業に適切に反映されているかなど、第1号の審議案件の経過について、期待をもって注目したい。
講演録報告書(会員のみ) >>>
(レポーター:八千代エンジニヤリング(株) 中田泰輔)

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