令和3年度 (第17回)
・ 国土交通省:「グリーン社会の実現に向けた最近の動き」(自然共生分野・グリーンインフラ)
(出席者)総合政策局環境政策課 和田課長補佐、大上係長、田畑係員
・ 経済産業省:「中国・インドの環境規制動向と我が国大気環境改善技術の海外展開」「VOC排出削減効果の定量的評価等に関する調査」
(出席者)産業技術環境局環境管理推進室 立松室長補佐、荒木係長
・ 農林水産省:「みどりの食料システム戦略」
(出席者)大臣官房環境バイオマス政策課 窪田課長補佐、大谷係員
・ 環境省:「環境政策を巡る動向」「温対法の改正について」「風力発電事業について」「太陽光発電事業について」「地熱発電事業について」「環境影響評価法に基づく報告書手続きについて」「環境影響評価情報の充実に関する取組」「環境影響評価に係る審査関係者の意見交換会について」「令和4年度予算概算要求について」
(出席者)環境省大臣官房環境影響評価課 會田課長補佐、橋立係員
はじめに
令和3年度の「環境情報交換会」は、第1回目が国土交通省で11月1日に、第2回目が経済産業省/農林水産省で11月25日に、第3回目が環境省で11月30日に開催し、協会からは、梶谷会長をはじめ理事、情報委員会委員、事務局合わせて約20名が出席した。
国土交通省
国土交通省からは、総合政策局環境政策課の和田課長補佐、大上係長、田畑係員にご出席いただき、同省が推進するグリーンインフラの社会実装や自然共生社会実現に向けた取り組みについて話題提供をいただいた。
同省のこれまでの取組としては、グリーンインフラに関する情報発信や多分野融合の場となる「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」の立ち上げ・運営、先導的事業への技術的・財政的支援が行われてきており、その成果として様々な分野でのグリーンインフラの認識・理解が広がりつつある。今後においては、多様な主体の参画・分野横断的な連携により社会インフラや都市空間におけるグリーンインフラ社会実装をより一層推進していく考えであり、技術基準等への位置づけ、評価手法の開発、現場とグリーンインフラ技術のマッチング、ESG投資のとりこみ等に取り組んでいくという説明をいただいた。
また、生物多様性保全に大きくシフトする昨今の社会情勢を受け、国立公園等の自然保護地域以外の場所を生物多様性保全に貢献する場所として認定(OECM認定)し、保護地域とみなすという動きが高まっている。同省としても、この動向を注視し生物多様性保全への貢献の機会としてとらえていきたい考えであるほか、建設コンサルタントにとっては、認定制度の運用がこれまでの環境アセスメントで培ってきた調査・評価技術の活用機会となりうるとのお話しであった。
話題提供後の意見交換では、グリーンインフラの評価や技術基準等への位置づけに関する質問があった。グリーンインフラの評価にあたっては、これまでの環境アセスメント技術の活用が有効と考えられるが、地域の方や投資家の理解や共感を得るためには、より一般に分かり易い評価・見せ方とする必要があり、今後新たな評価の在り方を検討していくとのお話であった。また、技術基準等へのグリーンインフラの位置づけについては、現段階で具体の内容は未定であり、今後各業界からのニーズが整ってきた段階で検討を進めていく方針とのことであった。
経済産業省
経済産業省からは、産業技術環境局環境管理推進室の立松室長補佐と荒木係長にご出席いただき、海外の大気環境分野における環境規制動向と光化学オキシダントに関する調査結果について話題提供をいただいた。
海外の大気環境分野における環境規制動向については、中国及びインドが名目GDP上位国となったこと、環境規制強化の取り組みがなされていること、中国に関しては日本への越境汚染の影響も問題となっていること等の理由から両国を調査対象とし、日本の大気環境改善技術の海外展開の可能性についても検討して情報を整理したとのことであった。中国については、大気環境規制が強化され環境改善が進んでいる状況であること、日本の技術については脱硝触媒・センサ技術、焼却炉の炉材・バーナー、排ガスモニタリング技術等のニーズがあること等の説明があった。インドについては、排出基準の強化に伴い排ガス処理装置の製造・販売を手掛ける日本企業のビジネス機会の拡大につながっていること、今後は中小企業の進出が始まる可能性があること等の説明があった。また、両国については、国策及び首都の情報に加え、地方都市における情報についても整理しているとのことで紹介いただいた。
光化学オキシダントについては、緊急事態宣言下における光化学オキシダントの大気濃度に関する調査結果について紹介いただいた。また、光化学オキシダントの前駆物質であるNOx及びVOCの排出削減効果の定量的評価に関する調査結果や、海外における光化学オキシダント対策等についても紹介いただいた。
話題提供の後、海外で求められる環境配慮や環境影響評価制度の導入状況、カーボンニュートラルに向けた取組等の幅広い事項について、質疑と意見交換が行われた。
また、「再エネ海域利用法」に基づく促進区域では、選定された洋上風力発電事業者は最大30年間の長期にわたって海域を占有するため、地域・漁業との「共存共栄」が不可欠であること、「20年先、30年先の将来」を見据えた対応が事業者及び受け入れる側である地元にも必要であるとの説明をいただき、これまでの漁業関係者の声や、地域が描く洋上風力発電を活用した地域・漁業の将来像の事例について紹介いただいた。これらの地元の意見や将来像は、協議会取りまとめとして明確化し、事業者選定の公募要件のひとつとすることで、具現化を図って行くとのことであった。
また、法定協議会では、景観等の環境配慮に加えて、国内の洋上風力発電の導入事例が少なく、漁業への影響が未知数であることから、洋上風力発電による漁業影響調査の実施が求められるとのことであった。
話題提供の後、主に合意形成の進め方やセントラル方式の検討状況について、質疑と意見交換が行われた。
中国・インドの環境規制動向と我が国大気環境改善技術の海外展開
中国及びインドにおける大気環境規制等に関する動向
VOC排出削減効果の定量的評価等に関する調査
海外における光化学オキシダント対策等に関する動向
緊急事態宣言下における光化学オキシダントの大気濃度に関する調査
農林水産省
農林水産省からは、大臣官房環境バイオマス政策課の窪田課長補佐と大谷係員にご出席いただき、「みどりの食料システム戦略」について話題提供をいただいた。
農林水産業は気候変動の影響を受けやすく、高温による品質低下や降雨の増加等の災害により被害を受けており、気候変動の原因となる温室効果ガスの農林水産分野での排出割合は、世界のCO2排出量の23%、我が国のCO2排出量の3.9%を占めているとのことであった。農林水産分野での温室効果ガスの排出量の内訳としては、トラクター等の燃料消費に伴うCO2や稲作・家畜の消化管内発酵によるメタンの排出が多いことが紹介された。また、農林水産分野の生産者は年々高齢化し、担い手不足や農山漁村の人口減少、里地・里山・里海の管理・利用の低下による生物多様性の損失も続いており、生産基盤の脆弱化、地域コミュニティの衰退も課題とのことであった。こうした状況も踏まえ、温暖化や災害に強く、生産者の減少やポストコロナも見据えた農林水産行政を推進していく必要性から、我が国の食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現するため「みどりの食料システム戦略」が策定された。本戦略の策定にあたっては、「みどりの食料システム戦略本部」を設置し、有識者検討会、生産者・事業者との意見交換会も複数回開催し策定している。本戦略では、調達、生産、加工・流通、消費の各段階で2050年までに目指す姿と取組方向が具体的にまとめられており、温室効果ガスの削減の例としては水田の水管理によるメタン削減、海藻類によるCO2固定化(ブルーカーボン)、地産地消型エネルギーシステムの構築、メタン抑制ウシの活用等の技術革新を進めて行くことが紹介された。
話題提供の後、担い手への農地集積による耕作放棄地対策、技術革新の進め方等の質疑と意見交換が行われた。また、話題提供いただいた事項以外にも、生物多様性、農村景観、農地のインフラとしての活用や地方の活性化といった幅広い議論が行われた。
農水01_治山対策の実施状況等について
用語集
農水02_多面的機能支払交付金
環境省
環境省からは、大臣官房環境影響審査室の木野室長、環境影響評価課の會田課長補佐、橋立係員にご出席いただき、昨今、社会的に注目されている脱炭素社会の実現に向けた動向や、環境影響評価の現状について話題提供を頂いた。
まず、環境政策を巡る動向では、2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップを紹介頂き、2030年度までに100箇所の「脱炭素先行地域」をつくること、全国で重点対策(自家消費型太陽光、省エネ住宅、ゼロカーボンドライブ等)を実施する等、政策を総動員して進めていく方針とのことであった。また、令和3年度における環境影響評価制度に関する主な動向として、地球温暖化対策推進法の改正(令和3年6月公布)、風力発電所に係る規模要件の見直し等について紹介頂いた。改正温対法では、自治体が積極的に再生可能エネルギー活用事業に関与するとともに、住民等への意見聴取や協議会による協議が位置づけられる等、より実効的かつ、従来からの課題のひとつであった地域における合意形成を促すことが狙いとのことであった。風力発電所については、「環境影響評価法施行令の一部を改正する政令(令和3年10月施行)」で、環境影響評価法の対象となる規模要件を引き上げた(第一種事業は5万kW以上、第二種事業は3.75万kW以上5万kW未満に改正。経過措置あり)。これに対応して、風力発電の事業特性を踏まえた効果的・効率的なアセスメント制度の在り方について更に検討していくとのことであった。その他、「太陽電池発電所に係る環境影響評価の合理化に関するガイドライン」の公表(令和3年6月)、「地熱発電所の環境影響評価手続における事前調査等の扱いについて」の通知(令和3年6月)等、事業に応じた様々な取り組みについて紹介頂いた。さらに、環境影響評価に関する情報の充実も重要と位置づけ、環境アセスメントデータベース(EADAS)の情報の拡充や、環境影響評価図書の公開の取り組み(事業者の許諾を得て、縦覧後もウェブサイトで閲覧可能とする等)の説明を頂いた。
話題提供の後、説明頂いた内容を中心に幅広い質疑と意見交換が行われた。同省では、再生可能エネルギー発電を促進するための他省庁との連携も活発であること、国際交流も重要であり、JEAS等団体や民間の活動情報も参考にして、継続していきたいとのことであった。