令和4年度(第18回)

令和4年度 (第18回)

・国土交通省:「グリーンインフラの推進」
(出席者)総合政策局環境政策課 和田課長補佐
・環境省:「地域共生型の再エネ導入の推進に向けた環境省の取組」「地球温暖化対策の推進に関する法律を一部改正する法律施行について」「再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会について」「環境影響評価法の施行状況について」「洋上風力発電の環境影響や立地などの特性を踏まえた最適な在り方の検討について」「環境影響評価情報の充実に関する取組」
(出席者)環境省大臣官房環境影響評価課の大倉課長、會田課長補佐、橋立係員
・経済産業省:「洋上風力発電の導入促進に向けて」
(出席者)資源エネルギー庁新エネルギー課風力政策室の武藤室長補佐、産業技術環境局環境管理推進室の大神室長補佐、荒木係長
・農林水産省:「みどりの食料システム戦略の実現に向けて」
(出席者)大臣官房環境バイオマス政策課の照井課長補佐

はじめに

令和4年度の「環境情報交換会」は、第1回目が国土交通省で11月29日に、第2回目が経済産業省/環境省で12月1日に、第2回目が農林水産省で12月14日に開催し、協会からは、島田会長をはじめ理事、情報委員会委員、事務局合わせて約20名が出席した。

国土交通省

国土交通省からは、総合政策局 環境政策課 和田課長補佐にご出席いただき、同省のグリーンインフラの推進のための取組について話題提供をいただいた。
国土交通省は、令和元年の「グリーンインフラ推進戦略」公表以降、同戦略に基づきグリーンインフラ推進の取組を本格的に進めてきた。これまでの主な取組としては、グリーンインフラに関する情報発信や多分野融合の場となる「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」の設立・運営、グリーンインフラの導入に関連して利用が想定される支援制度集の公表などが行われてきた。今後においても、多様な主体がグリーンインフラに取組むための環境整備・支援を充実させていくとのことで、直近ではグリーンインフラ関連の技術・製品を一堂に展示する「グリーンインフラ産業展」を開催するほか、グリーンインフラの具体的手法をまとめた「グリーンインフラ実践ガイド」(仮称)の作成・公表が予定されていることが説明された。
また、昨今、カーボンニュートラルの実現に向け社会全体が変革する中、新たな社会構造においてもグリーンインフラをしっかりと位置付けていく方針であるとのお話をいただいた。
話題提供後、グリーンインフラの取組を主流化・活発化していくためのアプローチやグリーンインフラの評価等に関して活発な意見交換が行われた。
グリーンインフラの取組を主流化・活発化していくためのアプローチの一つとして、同省は「グリーンインフラとは何か」を示していく必要があると考えており、今後において「グリーンインフラの登録制度」を立ち上げる動きがあるほか、社会からの認知を広めるためのロゴマーク作成などが予定されているとの説明をいただいた。並行して、緑を評価する仕組みづくりも進めていくとのことで、何気ない緑にも価値が見出されることで、特に地方部での取組の活発化が期待できるとのお話であった。さらに、グリーンインフラ推進における多様な場面において、環境アセスメントに携わる技術者の課題解決能力の発揮を期待したいとの意見もいただいた。

国交01_グリーンインフラの推進

環境省

環境省からは、大臣官房環境影響評価課の大倉課長、會田課長補佐、橋立係員にご出席いただき、再エネや環境影響評価に係る以下の6点のテーマについて話題提供をいただいた。
①地域共生型の再エネ導入の推進に向けた環境省の取組
地域共生型の再エネ導入は、「地域における合意形成」、「地域共生型の再エネ」の導入が重要であり、地域において迷惑施設と捉えられるような再エネには厳しく対応していくことが説明された。
②地球温暖化対策の推進に関する法律を一部改正する法律施行について
温対法の再エネ促進区域は、国や都道府県が環境配慮の基準を作成し、市町村が基準に基づき住民や事業者等が参画する協議会を活用して策定する仕組みである。都道府県の基準に基づいて策定された促進区域内における認定事業では、配慮書手続きが不要となり、迅速化・省力化が図れる等の特例があること等を説明いただいた。
③再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会について
カーボンニュートラルの実現に向け、関係省庁(経産省・農水省・国交省・環境省)が共同で検討会を立ち上げ、土地開発前から廃止・廃棄に至るまでの再エネ設備の適正な導入に係る課題等について横断的事項な整理を行っている状況の説明をいただいた。
④環境影響評価法の施行状況について
環境影響評価法に基づく環境大臣意見の提出件数は、令和2年度は特に風力発電が多く、令和4年度も多くなるだろうとのことであった。
⑤洋上風力発電の環境影響や立地などの特性を踏まえた最適な在り方の検討について
洋上風力発電は、陸上風力の適地が減少する中で大規模導入への期待が高いエネルギーであり、2040年には3,000~4,500万kW(年間100万kW(年間3~4海域))の案件形成を目標としている。洋上風力の導入を支える制度として「再エネ海域利用法」があり、環境省としては、促進区域の指定に当たり、情報収集や協議会への意見出し等を行っていることが説明された。また、同一海域で複数の事業者によるアセス手続きが重複して実施されており、地元の合意形成の支障・地域の混乱等も生じるおそれもあることから、「日本版セントラル方式」として、立地や環境影響に応じた最適な在り方等の検討を開始した旨が説明され、今年度に引き続き、来年度も国による環境情報の調査が行われるとの説明をいただいた。今後は、洋上風力発電のアセスガイドラインの策定、鳥類等の継続的な把握手法の実証調査等を実施するとのことであった。
⑥環境影響評価情報の充実に関する取組
アセス情報の充実については、「EADAS」での環境情報の公開状況やアセス図書の公開の取組等についての説明をいただいた。
説明後、促進区域の設定と配慮書手続きとの関係やアセス図書の公開の促進等について意見交換が行われた。

環境01_令和4年度環境省説明資料

経済産業省

経済産業省からは、資源エネルギー庁新エネルギー課風力政策室の武藤室長補佐、産業技術環境局環境管理推進室の大神室長補佐、荒木係長にご出席いただき、『洋上風力発電の導入促進に向けて』と題して話題提供をいただいた。
はじめに、日本の2050年カーボンニュートラルに向けたコミットや、2030年度エネルギーミックスについて説明いただいた。エネルギーミックスでは2030年度の洋上風力発電の導入目標として5.7GWを掲げており、それに向けて年平均1GWのペースで案件形成を進めて行くとのことであった。また、洋上風力発電の導入の意義として、①大量導入、②安価な電力、③大きな経済波及効果を挙げられた。①については、四方が海に囲まれた日本では導入拡大が期待されていること、②については、風況が良い洋上では風車の大型化により効率向上が図られ、コスト低減が見込めること、③については、部品数が多く事業規模も大きいことから関連産業への大きな波及効果が期待できることから、洋上風力発電を再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札として位置付けているとのことであった。

2019年4月に施行された「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(「再エネ海域利用法」)については、洋上風力発電に係るこれまでの課題を踏まえ、一般海域において洋上風力発電事業を実施する促進区域を国が指定し、当該区域を開発する事業者を公募によって選定し、選定した事業者に対し同区域を最大30年間占用する許可を与える仕組みや、区域指定に当たって利害関係者との調整を行う法定協議会の設置、等の仕組みとしているとの説明をいただいた。洋上風力発電に係る産業の健全な発展を図るためには安定的な市場の創出が重要であり、今後も年平均1GWの案件形成を進め、計画的かつ継続的な洋上風力発電の促進を図って行くとのことであった。さらに、「再エネ海域利用法」に基づく区域指定・事業者公募の流れと、次回公募に向けたプロセスの見直しポイントを説明いただいた。
「日本版セントラル方式」については、洋上風力発電の案件形成において、複数の事業者が同一海域で重複した調査を実施し非効率であるほか、それに伴い地元漁業における操業調整等の負担が生じていることから、これらの弊害を解消するための制度設計を進めているとのことであった。
また、「再エネ海域利用法」に基づく促進区域では、選定された洋上風力発電事業者は最大30年間の長期にわたって海域を占有するため、地域・漁業との「共存共栄」が不可欠であること、「20年先、30年先の将来」を見据えた対応が事業者及び受け入れる側である地元にも必要であるとの説明をいただき、これまでの漁業関係者の声や、地域が描く洋上風力発電を活用した地域・漁業の将来像の事例について紹介いただいた。これらの地元の意見や将来像は、協議会取りまとめとして明確化し、事業者選定の公募要件のひとつとすることで、具現化を図って行くとのことであった。
また、法定協議会では、景観等の環境配慮に加えて、国内の洋上風力発電の導入事例が少なく、漁業への影響が未知数であることから、洋上風力発電による漁業影響調査の実施が求められるとのことであった。
話題提供の後、主に合意形成の進め方やセントラル方式の検討状況について、質疑と意見交換が行われた。

経産01_洋上風力発電の導入促進に向けて

農林水産省

農林水産省からは、大臣官房環境バイオマス政策課の照井課長補佐にご出席いただき、『みどりの食料システム戦略の実現に向けて』と題して、2050年をターゲットとして策定された戦略の内容や、その実現に向けた法整備の内容等を中心に話題提供をいただいた。
① みどりの食料システム戦略について
我が国では年平均気温が長期的に上昇している。農林水産業は気候変動の影響を受けやすく、高温や降雨量の増加によって品質の低下を招くことがあるとのことであった。
一方で、国際的には食料システムをめぐる持続性やサプライチェーン(原材料の調達から消費に至るまでの一連の流れ)の脱炭素化に向けた枠組みや交渉が加速しており、我が国としては、COP26等の国際会議において、みどりの食料システム戦略に基づく取組を推進していく旨を世界に発信したこと等を説明いただいた。
②取組の推進に向けた法整備について
みどりの食料システムの実現に向けて、令和4年7月に、「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律」(略称:みどりの食料システム法)が施行されたところである。この法律は、環境と調和のとれた食料システムの確立に関する基本理念を定めるとともに、農林漁業に由来する環境への負荷の低減を図るために行う事業活動等に関する計画の認定制度を設けることにより、農林漁業及び食品産業の持続的な発展、環境への負荷の少ない健全な経済の発展等を図るものである。また、食料システムの関係者だけでは解決し得ない課題に対処するため、研究開発や、技術普及の促進等、特に国が講ずべき施策の方向性が示されている。その取組の身近な例として、米やトマトなどを対象に、二酸化炭素等の削減効果を簡易に算定できるシートを作成し、現場での環境負荷低減の努力・工夫を見える化している事例等について紹介いただいた。
さらに、グリーン購入法に基づく国等の環境物品等の調達に関する基本方針を踏まえ、農林水産省内の食堂の一部で有機農産物を使用したメニューを提供しており、各省庁でも同様の協力を要請しているとのことであった。
話題提供の後、みどりの食料システム戦略と生物多様性保全との関係や、認定制度活用に向けての事業活動実施計画策定段階における当協会の関与の提案等、質疑と意見交換が行われた。

農水01_みどりの食料システム戦略の実現に向けて

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